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2019/12/25 19:00

「タピオカ・ブーム」は終わるのか? 第3次ブームの第4形態にきた今、その大前提にある違和感

「2019 ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入った「タピる」。そして「ぐるなび」の「今年の一皿」は「タピオカ」となりました。ご存知の通り、世には様々な専門店がオープンし、いまやコンビニでもタピオカ入りのドリンクやフードが並ぶようになりました。

 

日夜フードトレンドを追う筆者としても、今年のヒットであるとは思います。ただ去年あたりから、タピオカブームに対して違和感がありました。それは巷でいわれるヒットの背景、つまり「なぜブームになった?」の答えに“ひとつの重要な視点が抜けている”のでは?と思うからです。本稿では筆者の個人的な観点からヒットの背景を解説するとともに、いま一度このトレンドを総括したいと思います。

 

 

「パクりやすさ」がタピオカブームの原動力のひとつだ

まずは筆者が思う、ヒットを語るに欠かせない“重要な視点”を解説。これはあえて乱暴にいうと、「パクリやすい」からです。もちろん、タピオカのかわいらしいルックスや食感のインパクトの大きさ、味のクオリティも高いからこそ支持されている点に異論はありません。また、台湾という地域や台湾フードはもともと人気が高いという土台にも納得です。

 

ただ、これまでヒットしたフードのなかでも、タピオカは飛び抜けて「パクリやすい」のです。だからこそ、どこでもタピオカが買えるようになり、短期間で郊外にまで新興のタピオカ専門店がオープンするようになったのです。

 

わかりやすいように、韓国ホットドッグを比較対象に挙げましょう。ファン層が若いことや、ルックスと味のインパクトはタピオカに似ている側面といえます。しかし韓国ホットドッグは揚げた食べ物なので、原材料を冷やす冷蔵庫のほかにフライヤーが必要となり、それだけでも初期投資がかかります。また、もしテナントのオーナーが「揚げ物は匂いや油汚れが出る、火災の恐れがある」などの理由でNGを出せば物件を借りられません。タピオカドリンクの場合はその点、ハードルが低いのです。

 

↑「韓国ホットドッグ」「ハットグ」「チーズドッグ」などといわれるワンハンドフード。生地内のチーズはとろとろ、外のポテトはサクサクで、2017~2018年をピークに人気を博しました

 

また、韓国ホットドッグはトッピングやアレンジはあったとしても、「韓国ホットドッグ」や「ハットグ」といった料理の枠を超えられません。一方、タピオカはあの「粒」なので、ドリンクはもちろんスイーツや食事メニューにもなれるのです。業界側からいえば、ドリンク専門メーカーでもスイーツ専門メーカーでも参入が可能。“タピオカを入れさえすれば、トレンド商品として成立する”という汎用性の高さも、タピオカのブームを後押ししたといえるでしょう。

 

ちなみに、タピオカティーの元祖「春水堂」(チュンスイタン)の日本上陸から2年後に台湾から上陸した大人気店に「アイスモンスター」があります。同店名物のかき氷は大行列するほどのおいしさとインパクトがありますが、あのかき氷は社会現象になるほどパクられませんでした。

 

↑「アイスモンスター」の名物のひとつがマンゴーかき氷。氷からして独特な製法から生み出される、ふわふわでいてとろとろの口どけは唯一無二のおいしさ

 

この理由について筆者としては、あの不思議なテクスチャーの絶品かき氷は、技術も味も機器の導入費用でも、簡単にパクれなかったからではないかと推測しています。また冷凍であるため、冷凍庫のコストや冷凍させる時間に対するハードル(大量に提供するには巨大な冷凍庫が必要。小規模では冷凍に時間がかかるので回せない)があるのではないかとも思います。

 

「春水堂」や「ゴンチャ」はタピオカの店ではない

よく世間で言われる「いまはタピオカの第3次ブーム」という意見に対しても、個人的にはやや気になる点があります。間違いではないのですが、より具体的にいうと「タピオカ第3次ブームのフォースウェーブ(第4の波)」もしくは「タピオカ第3次ブームのタピオカ多様化期」ではないかと。

 

これに対してはふたつのポイントがあります。タピオカのヒットが語られる際、よく二大名店の「春水堂」と「ゴンチャ」が挙げられますが、前者の上陸は2013年。後者は2015年。加えてどちらも、いまになって人気が出たわけではなく最初から大人気です。この「4~6年前から大人気ですよ!」というのがひとつめの違和感。

 

↑「春水堂」の日本初上陸店は2013年7月、代官山にオープン

 

確かに、第3次ブームの黎明期を支えた存在としては外せないお店ですが、「春水堂」も「ゴンチャ」もタピオカの店ではありません。これがもうひとつの違和感です。では何の店かというと、ハイクオリティな台湾ティーのカフェ。多様なカスタマイズのひとつがタピオカなのです。上陸当初から行列店として両者を取材してきた筆者にとっては、「春水堂」や「ゴンチャ」がタピオカの店として認知されることに、怖さに似た違和感があるのです。

 

↑「ゴンチャ」の日本1号店は2015年9月、原宿表参道にオープン

 

杞憂かもしれませんが、その“怖さ”とは、真価に気付かれないまま一過性のブームとして扱われてしまうことです。ちょっと待ってください、と。たとえば「春水堂」はタピオカミルクティーの元祖ではありますが、お茶自体のおいしさを知っていますか?と。

 

↑「春水堂」の「阿里山熟香烏龍茶」。見た目は地味ですが、市販の烏龍茶をはるかに凌駕する味で、このベースのお茶がタピオカミルクティーのおいしさになっていることを実感できるはず

 

タピオカのビッグウェーブは2013年から2年おきに来ている

そろそろフォースウェーブに触れたいと思います。まずはサードウェーブまでの各波と、その年に日本上陸した代表店を挙げましょう。個人的に、大きな波は2013年から2年おきに来ていると考えています。

 

1st:2013年「春水堂」

2nd:2015年「ゴンチャ」、「彩茶房」(「ハッピーレモン」日本版)

3rd:2017年「ジ・アレイ ルージャオシャン(通称:ジアレイ)」、「CoCo都可(ココトカ)」

 

↑「ジ・アレイ ルージャオシャン」の盆栽タピオカミルクティー(左)とオーロラドリンク(右)

 

ファーストとセカンドが黎明期を支え、その後大きな起爆剤となったのは2017年上陸の2店。「ジアレイ」は、盆栽タピオカミルクティーやオーロラドリンクなど、より美しいビジュアルの世界観を作り出しました。一方で「CoCo都可」は、“タピオカドリンク専門店”をウリにしたパイオニアです。また、イートインスペースをもたないスタンド型の先駆者としての側面も「CoCo都可」の特徴です。

 

↑「CoCo都可 新宿東口店」。2019年10月1日にグランドオープンしました

 

そしていよいよ2019年のフォースウェーブ。その特徴は、タピオカドリンク販売店の業態多様化です。カフェチェーン(タリーズは2011年から期間限定でやっていましたが)に、ファストフードやファミレス、さらには回転寿司やコンビニなどでも提供されるようになりました。また、タピオカの粒を買えるスーパーにも注目が集まり、タピオカメニューは家で作れる時代に。前半で述べた「タピオカはパクりやすい」にもリンクします。

 

もちろん、2018年にも様々なブランドが上陸。たとえば、ユニークなアレンジをウリにしたり、タピオカの大きさや色で独自性を出したり。ただし、それらはサードウェーブからの流れで、あくまでもフォースウェーブは2019年と個人的には位置づけています。

 

↑自宅などで楽しむためのタピオカの販売も、いまや珍しくありません

 

こうして、もともとは台湾ティーのカスタマイズのひとつだったタピオカが独り立ちをした形となり、“タピオカ多様化期”であるいまに至るのです。とあるトレンド誌のヒット商品ランキングで2018年は「タピオカミルクティー」(22位)だったのが、2019年には「タピオカ」で2位にランクインしたという点からも明らかでしょう。

 

一方では加熱しすぎたために「タピオカブームは曲がり角」などとささやかれていますが、筆者も淘汰の時期を迎えると思います。タピオカが飽きられてしまった場合、それに代わる魅力をもつブランドであれば生き残るでしょうし、2020年以降はタピオカ以外のカスタマイズやフレーバーを展開している台湾ティーに注目です。

 

↑2019年12月19日、新宿に日本3号店がオープンした「CHA NUNG」(チャノン)。とろみのあるタロイモをブレンドした「タロ芋ミルクティー」(左)や、自家製プリンを入れた「プリッチ黒糖ラテ」(右)、黒糖ではなくハチミツで漬け込んだ白生タピオカが入った「黒ゴマチャコールラテ with 白タピオカ」(TOPの画像)などが特徴です

 

タピオカ以外。それは茶葉の品質だったり、チーズだったり、プリンだったり、ミルクだったり。そもそも台湾ティーはカスタマイズの楽しさが真骨頂。次の波であるフィフスウェーブの特徴はどうなるのか、今後もトレンドをチェックしていきたいと思います。

 

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