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2020/7/22 16:30

革新的な酒造りを続ける菊水酒造の社長が語る――「いい酒」とは「面白い酒」である。

菊水酒造は、“コンビニ最強酒”と名高い生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」をはじめ、個性あふれる商品を送り出す革新的蔵元。伝統を守りながらも常識にとらわれず、挑戦し続ける開拓者精神に迫りました。

 

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菊水酒造 代表取締役社長・髙澤大介さん/菊水酒造の5代目として生まれ、大学卒業後に百貨店勤務を経て1985年に蔵へ戻り入社。2001年に当主となる

 

“面白い酒”には魅力的なコトが満載されている

日本初の缶入り生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」が誕生したのは1972年。同年には杜氏制度を廃止し、チーム制による酒造りと近代化した設備で安定供給を推進。

 

90年代には海外展開もスタート。地酒が活況だった時代から安住を求めず挑戦し続けるのが菊水酒造です。そんな同社が“モノ”造りともに大切にしているのが、暮らしを豊かにする“コト”造り。その理由を髙澤社長に聞いてみました。

 

「いいモノ造りは我々にとって一丁目一番地の使命ですが、それはどこも同じ。結果、良質な酒が次々に生まれ、お客様の選択肢は増えています。ならば、ただいいモノを造っただけでは選ばれません。お客様はどうしたらより愉しく飲めるのか、“コト”も求めているからです」(高澤社長)

 

そのニーズに気が付いたのは、全国的に日本酒が売れなくなっていた90年代後半だといいます。

 

「先代が集めた60年代のクルマのカタログを見つけたんです。当時はクルマを持つことが夢だった時代。性能や出せるスピードなど、モノとしてのクルマの魅力が書かれていました。一方、マイカーが普及した90年代のカタログで強調されていたのは、そのクルマを買うとどのような暮らしを得られるか。つまりコトの提案です。それを見てハッとしましたね。あぁ、日本酒にも言えることだなと」(高澤社長)

 

それ以降菊水酒造では、日本酒文化を伝える酒器や文献を集めた「菊水日本酒文化研究所」を設立したり、スナック貸し切りイベントを開催したり、ボトルデザインを公募したり……愉しい“コト”を生み出し続けています。海外イベントでは、「ふなぐち」の缶を模した着ぐるみを社長自ら着用し、外国人を笑わせたなんてエピソードまで。そんな社長にとって“いい酒”とは。

 

「“面白い酒”ですね。『この酒は面白いね、飲んでいて愉しくなる酒だね』と感じていただくことが私の夢。“面白い酒”には魅力的なコトが満載されていますから」(高澤社長)

 

菊水酒造の名酒をCHECK

3億本以上を出荷! 日本酒界の発明品

菊水酒造

ふなぐち 菊水一しぼり
実売価格318円(200㎖缶)

日本初の缶入り生原酒。精米歩合70%の本醸造で、新潟県産米を100%使用しています。濃醇旨口、フルーティでフレッシュな味わいが支持され、累計出荷数は3億本以上。200㎖缶のほか500㎖缶も用意しています。

 

炭酸入りで香りや甘味がより豊かに!

菊水酒造

ふなぐち菊水一番しぼり  スパークリング
実売価格438円(270㎖)

2019年に登場した、定番「ふなぐち」の発泡タイプ。炭酸を入れたことで特有の香りと甘味がより強く感じられるうえ、きめ細かい泡の爽快感によって飲み口もスムーズに。オンザロックもオススメ。

 

食の楽しみを広げる爽やかな辛口

菊水酒造

無冠帝
実売価格1408円(720㎖)

1983年に誕生し、2018年にリニューアル。「生詰」製法による、フレッシュでジューシーな香りとうまみが特徴だ。冴えたキレとほど良い旨みがどんな食事にも合い、料理のおいしさを引き出してくれる。

 

幻の米を極限まで磨き上げた贅沢酒

菊水酒造

純米大吟醸 蔵光
1万1000円(750㎖)

幻の酒造好適米「菊水」を精米歩合23%まで磨き上げ、華やかな果実味と豊かなボディが際立つ贅沢な一本。「無冠帝」とともに「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」の最高金賞を受賞した。

 

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菊水酒造のこだわり①うまさを追求する「モノ」造り

使う米は自社で育てる「菊水」を筆頭にすべて新潟県産。やわらかな地元の水と寒暖差豊かな気候を生かし、大地の恵みをいかに品質の良いお酒として引き出すかに重きを置き、チームワーク第一で造っています。

「二王子蔵」は大型仕込み用の施設。市販酒の大半はこの蔵で造られます。すべての原料米はどの酒のどのロットにいつ使用されたのか履歴をたどれる体制で管理されています。

 

蔵のすぐそばを流れる加治川。周辺には豊富な地下水脈があり、雪解け水を含む良質な軟水が菊水酒造の酒造りを支えています。

 

小型仕込み用の「節五郎蔵」。米を研ぐところから搾るところまですべて手作業で行い、技術を磨きながら伝統を継承しています。

 

日本酒のなかで最もデリケートで管理の難しい生酒を作っているからこそ、地酒蔵とは思えないレベルで品質・衛生管理を徹底。全商品クリーンルーム内で充填しています。

 

 

菊水酒造のこだわり②一杯を面白くする「コト」造り

菊水日本酒文化研究所は、人と日本酒の関わり方にフォーカスして、それにまつわる資料を3万点以上収蔵・展示しています。古い資料から現代に合う日本酒の愉しみ方を探り、そしてそれを発信する役割を担っているのです。研究所を一般開放しているだけでなくイベントなども主催し、日本酒の面白さ、新しい「コト」をお届けしています。

緑豊かな森を抜けると菊水日本酒文化研究所が現れます。

 

展示コーナーには酒席を愉しくする酒器や日本酒文化を伝える文献が。

 

 

研究所に収蔵されている酒器のなかでも特に人気なのが「うぐいす徳利」。酒を注ぐたびに「ピー」と愛らしい音がなります。外側に鬼、内側にお多福をあしらい「手の内に福を収めて、鬼は外」を意味する「鬼面杯」(下)や「水入らず」という言葉の語源になった説もある器「杯洗」(上)も研究所に展示されています。

 

日本酒関連グッズも並ぶ本社敷地内にある売店。搾りたてのフレッシュな生原酒をサーバーから直接瓶に詰めて販売するサービスも。

 

節五郎蔵の裏手に自社の水田を持ち、酒米である「菊水」を育てています。

 

地域住民とともに手作業で行う田植えは恒例行事です(※:今年は新型コロナウイルスの影響により一般参加なしで行いました)。

 

蔵の敷地内にある菊水庭園も見所のひとつ(見学可)。京都・銀閣寺の出入り庭師としても知られる庭匠・田中泰阿弥が更地から作庭しました。

 

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