若者の酒離れが叫ばれるようになって久しいですが、お酒が飲めない方でも楽しめるノンアルコールバーが六本木のど真ん中に今年オープンしました。店名はそのものズバリの「0%」。午前中から22時までの営業で、こだわりのドリンク、フードが神秘的にも感じるバースペースで楽しめるという、かなり個性的なお店です。
しかし、本当にアルコールがなくても間が持つのでしょうか。さっそく来店し、「酒抜き」ドリンクをいただきながら、同店をプロデュースした山本麻友美さんに話を聞きました。
お酒が苦手な人が抱える、飲み会でのモヤモヤを解消!
ーー日本では前例のないノンアルコールバーの開店、かなり斬新に思いました。
山本麻友美さん(以下、山本) そうですよね(笑)。もともと私自身がお酒に強くなくて、例えば友達と食事に行った際、友達はワインリストとかを見て楽しそうにしていても、自分はジンジャーエールか烏龍茶しか選択肢がなくて寂しさを感じることが多かったんです。
ただ、こうやって何かを飲みながら、1~2時間話をした時間って、すごく貴重だとも感じていまして。前向きな話もできるし、共感することも多いので。だったら、私のようにお酒が弱かったり、飲めない人のために、「完全なノンアルコールドリンクを出し、お客さんにゆっくり時間を過ごしていただけるようなお店ができないものだろうか」と思って企画したのが、この0%だったんです。
ニューヨークやロンドンにはノンアルコール専門のバーがあったり、ノンアルコールのスピリッツが売られていたりするので、そういう場を東京でできたら良いなと思ってオープンしました。
ーー開店したのは、夜はお酒のイメージが特に伴う六本木のど真ん中です。これは何故だったのでしょうか。
山本 お店のあるビル自体にたまたまご縁があったということもあるのですが、「ノンアルコールだからカフェっぽく静かに」という場所だと、来ていただける方が限られちゃう。それよりは「お酒は苦手だけど、本当はバーとかにも行ってみたい」「お酒は苦手だけど、気分が上がる場所で、友達と語り合いたい」という方に向けて、六本木という場所をあえて選びました。周りがお酒だらけの場所ですけど、だから良いとは思っています。
ーー店内も神秘的な雰囲気があって、いわゆるカフェとは違います。やはりバーとかクラブに近い雰囲気というか。
山本 そこもこだわりました。0%は午前中から22時まで営業しているんですけど、夜はあえてダウナーな照明にしています。その理由はアルコールがなくても気まずくなく、相手との距離を身近に感じてもらい、深い話をしていただけるような場所にしたいと思ってのことです。
世界ナンバーワンのバーと共同で考案したノンアルコールドリンク
ーー気になるのはやはりドリンクメニューですね。単にノンアルコールだからと言って、カフェと同じようなドリンク構成ではなく、むしろカクテルのアルコール抜きのようなメニューが並びます。
山本 一部メニューは、 世界のトップ50を決めるThe World’s 50 Best Barsに3店舗がランクインする「SG Group」の後閑信吾氏に考案いただいています。 お酒は入っていないけど、ハーブ、スパイス、発酵などを用いて、
ーー見た目も映える楽しいものばかりですね。
山本 はい。是非試飲してみてください。
「0%」の完全ノンアルコールドリンクの一部を試飲しました!
ーーどれも美味しいですし、ここでしか味わえないものですね。「『バーでノンアルコール』って合うのかな? 間は持つのか?」と思いましたけど、空間の雰囲気と合わせて、つい何杯もいただきたくなりました。
山本 実際、何杯も飲んでいかれるお客さんも多いです。お酒だと「同じものを何杯も飲む」というケースは結構あると思うのですが、ノンアルコールだとそうはいかないので、なのでお客さんが飽きないように、0%では味わいや風味の異なる様々なドリンクをご用意しています。
ーーそしてフードですね。スイーツもありますが、気になるのがヴィーガンのケサディーヤ。結構パンチがありそうですけど。
山本 「罪悪感がないジャンクフード」をテーマにしたメニューで、ヴィーガンでありながら確かにパンチはあります。ドリンクとの相性も良いので、こちらも是非試食してください。
「0%」のケサディーヤを試食しました!
張り詰めた心も「0%」にしたい
ーー今回は平日の午前中にお邪魔させていただいていますけど、この時間帯にしてすでにお客さんが複数いらっしゃいますね。
山本 はい。オープンした際は、自由に来店いただこうと思っていましたけど、新型コロナウイルス感染拡大防止の意味で3密を避けるため、現在は予約制にしています。だから、当初イメージしていたお店の使われ方とはちょっと変わってしまったところもあるんですけど、それでも来店してくださったお客さんは、ゆっくりと時間を過ごしてくださっているようですので、「良かった」と思っています。
ーー現在はどういったお客さんがいらっしゃるのですか?
山本 オープンしたての頃は、当店のノンアルコールドリンクメニューのほうに興味を持っていただいて来店される方が多かったんです。ただ、特に最近は、商談の場として使っていただいたり、リピーターになってくださり、友人を連れて来られ、新しい空間を紹介する感じで楽しまれている方も増えています。ドリンクやフードはもちろんこだわっているのですが、空間全体、お店での時間全体を使っていただきたいと考えていますので本当にありがたいです。0%でポジティブなエネルギーを生み出していっていただけると本当に良いなと思います。
ーーそう考えると、0%ってノンアルコールとしての意味はもちろんですけど、例えば人の心をいったん0%にして、お店で過ごす時間によって、お客さんが何かを足していけるような意味にも繋がりそうですね。
山本 まさにそうなんです。特に現代の人々はマルチタスクに追われていたり、日々情報に引っ張られたりして、心が張り詰めている状態だと思うんですよね。そういう方が0%に来ていただいて、張り詰めた心をいったんリリースして自分自身を見つめ直していただいたり、友人同士で共感しあうきっかけに繋がることがあれば本当に嬉しいなと思っていますので。
よりディープな企画も計画中?
ーー今後、さらに計画されていることはありますか?
山本 サービス面では、ドリンク、フードともに近々デリバリーを対応する予定です。一方、お店全体としては、さっき言ったように「ノンアルコールのみのメニュー展開」というのはまだまだ始まりで、このお店から人の心を癒せるような試みを今後やっていきたいなと思っています。
実はお店の地下も借りているので、スペースをより広く使って、お客さんの心がゼロになるようなことを企画していけたら良いなと計画しています。まだオフィシャルでは言えないこともあるのですが、もしかしたらよりディープなお店になるかもしれません(笑)。是非今後も注目いただき、活用してもらえれば良いなと思っています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、飲食業界全体が落ち込んでいるニュースを連日目にする今ですが、そんな中で、前例のない営業形態で、なおかつポジティブなメッセージを発信する0%は、多くの人を元気にさせる貴重なお店に感じました。もちろん、アルコールがなくても間は持ちますし、それだけでなく、癒しと元気をもらえてしまうかも? アルコール苦手な方はもちろん、お酒大好きな方も一度行かれてみてはいかがでしょうか!
■0%
住所:東京都港区六本木5-2-4
営業時間:10時~22時(Wi-Fi完備、全席コンセントあり)
撮影/我妻慶一
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