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お酒
2016/7/25 16:00

コレが未来の焼鳥屋! “劇場型”の三鷹「山もと」は酒の品揃えにも哲学あり!!

大衆居酒屋から専門の高級店まで全国各地、また屋台にコンビニと様々なお店で売られていることからも、国民食といえる焼鳥。「ミシュランガイド」ではいちジャンルを築き、最近では“日本一予約が取れない焼鳥店”として有名な目黒の「鳥しき」が「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介されるなど、匠の技が注目される料理でもあります。今回は、あくまでも正統派(豚や牛はなし)の焼鳥店でありながら、お酒のラインナップが焼鳥店の域を超えている注目の一軒を紹介しましょう。2015年の9月、三鷹にオープンした「焼鳥 山もと」というお店です。

 

燗酒が日本酒の本来あるべき姿だ!

お酒で特に珍しいのは日本酒。普通の居酒屋ではあまり見慣れない「熟成日本酒」が用意されており、客席の奥には1000本以上を有する酒の熟成棚が設えられています。熟成は基本的に常温で行われ、古いもので8BY(平成8年酒造のBrewery Year)と、20年間熟成させた一本「満寿泉20年熟成」(富山・桝田酒造店/半合1058円)も。

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また、日本酒はリストに載っているものだけで約40種類ですが、その内の75%は燗で飲むことを推奨しています。普通の居酒屋の定番である冷酒を薦めているものは、夏であっても10種程度しかありません。この理由を、店主の山本 洪太さんに聞いてみました。

↑福岡・井上合名会社の「美田 豊醸8年~熟成」(950円)。山廃の純米酒で、オススメは熱燗。紹興酒やシェリー酒のようなオリエンタルな香りがあり、褐色なのも特徴です
↑福岡・井上合名会社の「美田 豊醸8年~熟成」(950円)。山廃の純米酒で、オススメは熱燗。紹興酒やシェリー酒のようなオリエンタルな香りがあり、褐色なのも特徴です

 

「冷酒は冷蔵技術とともに生まれたものなので、本来の日本酒は常温や燗があるべき姿だと思うんです。ワインやウイスキーも寝かせるのが常識なお酒ですし。日本酒は一時期に端麗辛口の冷や酒ブームが起こり、いまだに信奉する方も多いですが、日本酒の魅力ってもっと広くて深いはず。熟成で旨味が増したり、燗によって香りが開く酒はたくさんあります。焼鳥とのペアリングという点においても、僕は燗酒や熟成酒を追求していきたいですね」(山本さん)

↑店内はカウンターのみで15席。「すべてお客様の前で焼きたいんです。目と手の届く範囲を考えたらこの空間になりました」(山本さん)
↑店内はカウンターのみで15席。「すべてお客様の前で焼きたいんです。目と手の届く範囲を考えたらこの空間になりました」(山本さん)

 

山本さんは、学生時代のアルバイトから焼鳥店のキャリアをスタートして今年で13年目。ワインやクラフトビールと一緒に焼鳥を楽しむ店などを経てソムリエの資格を取るなど、お酒の造詣を深めていったそうです。そんな中、当時働いていた店でお世話になっていた、純米酒と本格焼酎専門店「藤沢とちぎや」さんから日本酒のいろはを学んでハマっていったとか。

↑この一冊にも大きな影響を受けたそう。“酒は純米、燗ならなおよし”という名言をもつ、故・上原浩先生のベストセラーです
↑この一冊にも大きな影響を受けたそう。“酒は純米、燗ならなおよし”という名言をもつ、故・上原浩先生のベストセラーです

 

多くの経験を積み重ねてオープンさせた山もとは、山本さんの集大成といえるでしょう。ビールはすべて樽で仕入れ、6タップの内の5つはクラフトビールを随時入れ替えて用意。ワインも一定の方向性を持たせられるようイタリア産を中心に集め、渋みが少なめでエレガントかつ好バランスなものをそろえているようです。

↑湘南ビールの「ヴァイツェンボック」(842円)。通常の倍の時間をかけて熟成される、フルーティなアロマと複雑な味わいが特徴です
↑湘南ビールの「ヴァイツェンボック」(842円)。通常の倍の時間をかけて熟成される、フルーティなアロマと複雑な味わいが特徴です

 

ライブ感あふれる“劇場型”が焼鳥を最高においしく味わうスタイルだ!

ここまでお酒の話が中心でしたが、「あくまでも僕の理想は世界一おいしい焼鳥を提供すること」と山本さん。冒頭で触れた鳥しきをはじめ、時間をつくっては一流と崇められる名店を食べ歩き、日々研鑽を重ねています。焼鳥についての話を聞くなかでわかったことは、部位の大きさ、串の打ち方、焼き方などで味が変わるという奥の深さ。

↑左から「さび」、「せせり」、「丸はつ」、「首皮」。すべてひと串226円で、オススメの7本コースは1382円、9本コースは1706円です
↑左から「さび」、「せせり」、「丸はつ」、「首皮」。すべてひと串226円で、オススメの7本コースは1382円、9本コースは1706円です

 

山本さんは試行錯誤を重ねるなか、鳥しきのルーツでもある「鳥よし」のスタイルに行き着いたとか。その一例が、肉は厚くて串は短め。強火の炭に近づけて焼き上げることで、中はきわめてやわらかくジューシー、周りはカリッと香ばしく仕上げる手法です。ただ、手を火傷しやすく、また焦げないように常時気を配る繊細さが必要とか。

↑精肉は食感とジューシーさのバランスがよい福島の伊達鶏、内蔵は鮮度と旨味が抜群な鳥取の大山どりを使用。焼く直前に昆布酒をあしらい、素材の持ち味を最大限に引き出すとともに旨味をプラスしています
↑精肉は食感とジューシーさのバランスがよい福島の伊達鶏、内蔵は鮮度と旨味が抜群な鳥取の大山どりを使用。焼く直前に昆布酒をあしらい、素材の持ち味を最大限に引き出すとともに旨味をプラスしています

 

そして、おいしさへの探求心は空間づくりにも。あえてテーブル席はつくらず、目の前で焼くことで音や香りなど五感で旨さを伝える設計に。それが15席のカウンターです。また、できたてを味わってもらうため、一本一本焼けた串から出す方法で提供。もちろん、串の盛り合わせは用意されていません。このスタイルを、勝手にですが筆者は“劇場型”と名付けました。そして劇場型は、今後もっと増えていくと確信しています。

 ↑動きが完全に丸見えで、焼く表情や会話もはっきりとわかる厨房。それはさながら劇場といえるのではないでしょうか!
↑動きが完全に丸見えで、焼く表情や会話もはっきりとわかる厨房。それはさながら劇場といえるのではないでしょうか!

 

↑お店は地下にあり、それはまるで下北沢のライブハウスや小劇場に吸い込まれるように入場する時のよう。階段を下りると向こうには美食のステージが!
↑お店は地下にあり、それはまるで下北沢のライブハウスや小劇場に吸い込まれるように入場する時のよう。階段を下りると向こうには美食のステージが!

 

ちなみに、山もとが三鷹に出店した経緯ですが、三鷹にはもともと縁がなかったそう。子育てをはじめ、住みやすい街を探したときに出会ったのが人気No.1の吉祥寺でした。とはいえ、店舗の家賃相場も高かったため、焼鳥をより値ごろな価格で提供するには相場が下がる三鷹のほうがよく、さらに住まいとして生活しやすそうだったことから、いまの場所に決めたのだそうです。三鷹は吉祥寺ほど目立ちませんが、中央特快に乗れば新宿からわずか14分。ぜひ今度、足を運んでみてはどうでしょうか!

↑山本耕太さん。旨さの高みを目指し続ける職人ですが、雰囲気は柔和なナイスガイです
↑山本 洪太さん。旨さの高みを目指し続ける職人ですが、雰囲気は柔和なナイスガイです

 

【SHOP DATA】

焼鳥 山もと

住所:東京都武蔵野市中町1-19-8 シティハイツ武蔵野市B1

アクセス:JR中央総武線「三鷹駅」北口徒歩3分

営業時間:17:00~23:00

定休日:木曜日

 

【URL】

山もとのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/yakitori_yamamoto