日本酒における最高峰のグローバルブランドを目指す「SAKE HUNDRED」から、初のスパークリング日本酒が限定発売されました。その名も「白奏 | HAKUSO」。価格は1本720mlで約3万円と、今回もセレブリティなプライスです。しかも約2000本の限定生産とのことで希少性もピカイチ。特別に試飲体験と、開発ストーリーなどを教えてもらえるということで、取材に行ってきました。
構想2年。常識を打ち破る泡酒造りの舞台裏
まず、簡単に「SAKE HUNDRED」の説明を。同ブランドは「心を満たし、人生を彩る。」を掲げ、これまでの日本酒とは一線を画す立ち位置を築いています。造り方や味わいも個性あふれるものばかりで、コストも手間も開発時間も完全度外視。一切妥協をせずに生み出されることもあり、価格もそれなりにします。
そして今回の新作はブランド7番目の商品。聞けば、スパークリング日本酒の発売は約2年前から構想していたとのこと。とはいえ、なかなか理想の味わいにたどり着けず、開発は困難を極めたとか。幾多の生みの苦しみを経て発売となったのが「白奏 | HAKUSO」なのです。
味のイメージは甘みが主体で、きめ細やかで柔らかい発泡感が特徴。スパークリング酒はワインでも日本酒でも、ドライでキレがあり、爽快な発泡感のタイプが主流ですが、あえてそうではない酒質を目指したといいます。
それでいて甘すぎず、上品でなめらかな味わい。常識を打ち破るような、これまでにないスパークリング日本酒を求めたがゆえに、長い歳月がかかったといいます。「味を知るにはまずご賞味を」とのことで、襟を正しつつまずはひと口。
第一印象は、もぎたてのリンゴやマスカットを思わせるフレッシュな香味。口に含むと米由来の甘みが立ちつつ、爽やかな酸味も。どこか甘酸っぱいベリーのニュアンスやクリーミーなトーンもあり、繊細な泡のタッチが優しく刺激します。絶妙な甘みと心地良い発泡は余裕を感じさせ、総じて上品。
「このフルーティさは、米を相当磨いているに違いない!」と思い、実際に聞いてみると、精米歩合はなんと18%と想像以上の答えが返ってきました。元の米から1/5以下にまで磨くことで、ピュアな甘みを醸し出していたのです。有名な高精白酒である「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」でも23%なので、それ以上。やはり「SAKE HUNDRED」、ただものではありません。
泡酒の名手×大吟醸に適した熊本酵母と山田錦
個々にイメージする味わいを、最も実現してくれる蔵元をパートナーに迎えるのも「SAKE HUNDRED」の特徴です。今回白羽の矢が立ったのは、熊本の河津酒造。同蔵は「シャンパン製法」と呼ばれる瓶内二次発酵の技術を、スパークリング日本酒で早くから取り入れていたことで知られ、当然ながら泡酒は大得意。
なおスパークリングタイプにする手法は、ガスを充填するか、瓶内で発酵させるかの大きく2つに分かれますが、後者のほうがナチュラルで繊細な泡を作りやすいのがメリット。ただし、狙った泡の質感にできるかどうかは腕次第というわけです。また、その際に「デゴルジュマン」という澱(おり)抜きの手法によって雑味の元となるもろみを抜くのですが、この工程が最も難しかったといいます。
なぜなら、もろみにもうまみが詰まっているから。試験醸造の際にもろみを抜いたところ、味の全体バランスが崩れてしまったそう。そこで酒質の密度を上げたり、日本酒度を下げて甘みを強化したり、また一次から二次発酵の際に3週間の熟成期間を設けてうまみも重ね、もろみを抜いた状態で理想の味になるよう整えていったのです。
河津酒造に製造を託したもう一つの大きな理由が、熊本が誇る酵母。「白奏 | HAKUSO」に使われている「熊本酵母(KA4-01)」は秋田・新政酒造が発祥の「きょうかい6号」や長野・宮坂醸造から分離された「きょうかい7号」と並び、現代吟醸酒の基礎を築いた熊本発祥の「きょうかい9号(熊本酵母)」を元に研究されたもの。近代的吟醸酒造りに特化した酵母で、上品で華やかな香りが特徴のため吟醸酒造りに最適なのです。
そして、酒米には味がふくよかになりやすく、甘みが主体の酒造りにも適した山田錦を採用。辛口の値を示す日本酒度が-17という、上品な甘口スパークリング酒が生まれたのです。
6月発売の限定2000本生産ということからも分かるように、「白奏 | HAKUSO」は初夏を楽しむ想定で造られています。真夏ほど暑くはなくしっとりとしたこの季節には、優しい甘さとなめらかな発泡の「白奏 | HAKUSO」が、よく合いそう。記念日や贈り物、または自分へのご褒美に、この特別な一本を入手してはいかがでしょうか。