代表的な“秋の味覚”であり、刀のような形をしていることから「秋刀魚」と書くサンマが、今年も旬を迎えています。
サンマの“旬”については、水揚げする場所によって、時期や脂の乗りが異なるため諸説ありますが、秋のサンマは身がふっくらとして脂が乗っている上、漁獲量が多くなるため1尾100円前後で買える、魅力的な食材です(※漁獲量によって、価格は前後します)。その上、栄養価は高く、善玉コレステロールを増やし血液をサラサラにしてくれるDHAや、タンパク質、鉄分やカルシウムなども含んでいます。
ところが、いざサンマを焼くとなると、煙や臭いが気になるし、使用後のグリルを洗うのがわずらわしいと、調理を躊躇する人も多いのでは? そこでおすすめしたいのがフライパン調理。煙や臭いが広がりにくく、片付けも簡単なフライパン調理でできる多彩なサンマ料理を、料理家の横山久美子さんに教えていただきました。
“おいしいサンマ”の見分け方
スーパーや鮮魚店でサンマを買うとき、鮮度がよく脂の乗ったものを選びたいですよね。まずは、おいしいサンマの見分け方をおさえておきましょう。
「まっすぐ一本線のような形で、体色は青々として、目は透明感がありキラキラしているものが新鮮な状態です。また、口元は尖っていて下顎が黄色っぽいものを選びましょう。頭から背中にかけてぷっくりと盛り上がっていると脂が乗っています。
塩焼きにするときは脂の乗りがよいものを選びましょう。一方、竜田揚げのような揚げ物にするときは、背脂の少ないスレンダーなものを選んだ方が、あっさりとした味わいになります」(料理家・横山久美子さん、以下同)
サンマの鮮度を保つ保管方法
サンマは鮮度が落ちやすいため、購入後の下処置も大切だという横山さん。
「買ってきたら、すぐに少量の塩をまぶし、脱水シートで包んだら冷蔵庫のチルド室で保存しましょう。こうすることで、余分な水分と臭みが抜けます。脱水シートがない場合はキッチンペーパーで包み、その上からラップを巻いてチルド室に入れます。脱水シートの場合もラップで包んだ場合も、冷蔵保存したら購入した翌日までには調理をしてください」
調理する際に用意したい便利グッズ
臭いや身の扱いなど、魚の扱いにはそれなりにコツがいるもの。あると便利なアイテムをピックアップしていただきました。
左上=オカモト「浸透圧脱水シート ピチットレギュラー15枚」1100円(税込)
「サンマの下処理で説明しましたが、塩を振って水気や臭みを抜く際に脱水シートはとても便利。業務用スーパーやインターネットで購入できます」
左下=旭化成ホームプロダクツ「クックパー フライパン用ホイル」242円(税込)
「フライパンで魚を焼くときは、シリコンでコートされた専用ホイルを敷くことで、魚がフライパンに焼きついて皮や身がはがれるのを防ぎます。さらに、フライパンへの臭い移りがおさえられ、片付けも簡単に。一方、アルミホイルは魚がくっつきやすくなりますし、クッキングシートは、サンマから出る脂分により耐熱限度を超えたり、シートが焼けてしまったりする危険があるので注意が必要です」
右=レイエ「ソースもすくえるガッシリトング」2200円(税込)
「魚を裏返すときは、菜箸よりもトングを使う方が身を傷つけません。わたしが愛用しているのは、日本の調理道具ブランド『レイエ』のものです。これは魚がつかみやすい上に、スプーン側がちょうど大さじ1の分量なので、調理時の軽量スプーンとしても貢献してくれます」
ここからは、さっそくフライパンを使ったサンマレシピを紹介していただきましょう。
1. 王道レシピを手軽に!「サンマの塩焼き」
2. キャンプ飯にもおすすめ!「サンマのジャンバラヤ」
3. 晩酌のおともにぴったり!「揚げサンマのエスニックサラダ」
4. パスタソースにすれば二度おいしい!「サンマのアクアパッツァ」
1. 王道レシピを手軽に!「サンマの塩焼き」
旬のサンマといえば、塩焼きは欠かせません。「脂の乗った鮮度の良いサンマは、塩を振って焼くだけでごちそうになりますよね。グリルや網で焼くと、下に落ちた脂から煙や臭いが広がりますが、フライパンで焼けばそれらの煩わしさがありません。塩は全体になじみやすいように、粗塩ではなく粒子の細かいものを選びましょう」
【材料(1人分)】
サンマ……1尾
塩……適量
<お好みで>
大根おろし……適量
すだち……1/2個
【作り方】
1. サンマを半分に切り、全体に軽く塩を振る。脱水シートまたはキッチンペーパーの上からラップで巻き、1時間ほど冷蔵庫に置く。
「焼く前には頭と尾の部分には『化粧塩』として、少し多めに塩を振っておくのがポイントです。こうすることで焦げ色を抑え、見た目がより美しく仕上がります」
2. (1)のサンマの脱水シートをはずし、アルミホイルを引きたフライパンに並べて中強火で焼く。片面に焼き色が付いたら裏返して蓋をし、中弱火にする。
「サンマから出る脂によって、表面が揚げ焼きのようになります。強火だと中まで火が通る前に焦げてしまうので、中火のやや強めくらいで焼いていきましょう」
3. 2分ほど焼き、断面の身がふっくらとしてきたら蓋を取り、中強火にし、全体に焼き色が付いたら完成。
「フライパンで調理するときは、サイズの都合でサンマを1/2サイズにカットしますが、こうすることで、火の通り具合も確認しやすくなります。断面の身がふっくらと盛り上がってきた頃がいい塩梅。蓋を取ったら中強火で表面をこんがりさせて仕上げましょう」
定番の塩焼きを押さえた上で、ここからはエスニックやクレオールなど、さまざまな味わいでサンマのおいしさを堪能できるアレンジレシピを紹介していただきます。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
2. キャンプ飯にもおすすめ!「サンマのジャンバラヤ」
ジャンバラヤとは、アメリカ南部の郷土料理でパエリアのような一品。ここではスパイスを効かせた洋風トマトスープでお米を煮て、こんがりと焼いたサンマをのせています。
「サンマはトマトとの相性がよいので、洋風アレンジもしやすいですよ。ジャンバラヤはフライパンでできるので、アウトドアメニューにもぴったり。三枚おろしは魚屋さんやスーパーの鮮魚コーナーでお願いするのが簡単です」
【材料(2人分)】
サンマ(3枚おろし)……2尾
<A>
ガラムマサラ……大さじ1/2
パプリカパウダー……大さじ1/2
塩……小さじ1/2
玉ねぎ……1/4個(50g)
赤・黄パプリカ……各1/3個(各35g)
ピーマン……1個
にんにく……1片
オリーブオイル……大さじ1
米(一晩浸水したもの)……1合
<B>
カットトマト缶…80g
水……100ml
洋風スープの素(コンソメ)……小さじ1
<仕上げ>
イタリアンパセリ……適量
レモンのくし切り……適量
【作り方】
1. 3枚におろしたサンマの切り身を半分にカットし、塩(分量外)を振りかけて15分ほど冷蔵庫に置く。キッチンペーパーで水気を拭き取り、調味料<A>の半量を全体にまぶす。
「サンマに塩を振ってから脱水シートで包むのが丁寧な仕込みですが、内臓を取り除いた切り身を新鮮なうちに調理する場合は、そのまま塩を振ってバットに並べ、15分後に出てきた水分を拭き取れば大丈夫です」
2. 玉ねぎは粗めのみじん切りに、赤・黄パプリカとピーマンは種とヘタを取り除き、斜めに薄切りにする。にんにくは縦半分にカットして芯を取り除き、みじん切りにする。
「パプリカやピーマンは大きめにスライスすることで、食べ応えが出る上に、彩りも豊かに。野菜はナスやしめじなど冷蔵庫の残り野菜や、お好みのものにアレンジするのもOK!」
3. フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけ、にんにくの香りが立ったらサンマを皮目から入れて中火で焼く。焼き目が付いたら裏返して中弱火で焼き、全体に火が通ったらお皿に取り出す。
「皮目から焼くことで身がくずれにくく、またこんがりと香ばしい仕上がりになります。皮に焼き色が付くまではなるべく触らないようにします。裏返した後は少し火を弱め、中まで焼きましょう」
4. サンマを取り出したフライパンに玉ねぎ、赤・黄パプリカ、ピーマンを加えて中火で炒める。野菜がしんなりとしてきたら米を加えて米が透き通るまで炒め、調味料<A>の残りと<B>の全量を加える。
「サンマの旨味が付いたフライパンを洗わずにそのまま使いましょう。米は前の晩からしっかりと浸水しておくことで、中まで火が通りやすくなります」
5. 全体が混ざり煮立ったら、平らにならして蓋をして弱火で12分加熱する。火を止めて10分ほど蒸らしてから器に盛り付け、上に焼いたサンマの切り身を並べて、イタリアンパセリを散らし、レモンを添えれば完成。
「平らにならすことで、火が均一に入ります。こんがりと焼けたサンマの上からギュッとレモンを絞り、全体を混ぜながらめしあがれ!」
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
3. 晩酌のおともにぴったり!「揚げサンマのエスニックサラダ」
カリッと揚げたサンマとたっぷりのパクチーを含む生野菜を合わせ、そこにスイートチリソースとナンプラーのドレッシングを添えたサラダです。
「パクチーのさわやかな香りと香ばしいサンマが合わさった味わいは、おつまみにぴったり。主菜として食べるなら、サンマの量を増やしてください。野菜類はお好みのものに変えてもいいですし、スイートチリソースがない場合は自宅にある調味料で代用できます(※代用レシピ参照)」
【材料(2人分)】
サンマ(3枚おろし)……1尾
片栗粉……大さじ1
こめ油……大さじ2
紫玉ねぎ……1/2個(80g)
赤・黄パプリカ…各1/3個(各35g)
きゅうり……1本
パクチー……2束(50g)
<A>
スイートチリソース……大さじ3
レモン汁……大さじ2
ナンプラー……小さじ1
【作り方】
1. 3枚におろしたサンマに軽く塩(分量外)を振り、3等分にしてから片栗粉をまぶす。フライパンにこめ油を引き、中強火で表面がカリッとするまで揚げ焼きにする。
「玄米の表皮と胚芽を絞ってつくられるこめ油は、ほかの油と比べて泡立ちにくく、カラッと仕上がります。ビタミンEが豊富な上に酸化に強いので、油っぽさも残りにくいのでサラダとしても食べやすいのでオススメです。こめ油がなければ、植物油で代用できます」
2. 紫たまねぎは薄切りにして水にさらし、赤・黄パプリカは斜め薄切りに、きゅうりは斜めにスライスしてから縦半分に、パクチーは葉の部分を3cm幅にざく切りにする。
「野菜はサンマと一緒にからめて食べやすいような大きさがいいので、あまり細かく刻まないほうがよいでしょう。洗ってしっかりと水気を切っておきます。食べる直前までこの状態で冷蔵庫に入れて冷やしておくと、パリッとした食感がキープできます」
3. 調味料<A>をボウルに入れて、よく混ぜ合わせる。
「スイートチリソースの甘みが強く感じるときは、お酢を足してお好みの味わいに調整してください。スイートチリソースがない場合は、手づくりソースで代用可能です」
※スイートチリソースの代用レシピ
【材料】
穀物酢……大さじ5
砂糖……大さじ3
唐辛子輪切り……1本分(分量外の穀物酢に入れて一晩ふやかす)
塩……少々
にんにくすりおろし……少々
【作り方】
1. 鍋に調味料をいれて分量の2/3くらいになるまで煮詰める。
2. 粗熱を取り冷ましたら完成。
4. 2のボウルにサンマと調味料<A>を加えて全体を混ぜ合わせ、器に盛り付ければ完成。
「飾り用のパクチーを少し取り分けておき、盛り付けた上にのせるとキレイに仕上がります。サンマが温かいうちにめしあがれ!」
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
4. パスタソースにすれば二度おいしい!「サンマのアクアパッツァ」
サンマの塩焼きかアクアパッツァかというほど、旬の時期の定番メニューにしたくなる簡単で豪華な一品です。
「サンマの頭や内臓からのだしも旨味になるので、新鮮で脂ののった肉厚なサンマでつくりたいメニューです。ここではローズマリーを添えましたが、お好みのハーブでOK。残ったスープは旨味が凝縮されているので、ガーリックトーストに付けたり、茹でたパスタをからめてもおいしいんです」
【材料(2人分)】
サンマ……2尾
オリーブオイル……大さじ3
にんにく(みじん切り)… 1片
<A>
白ワイン……1/4カップ
水……1/2カップ
オレガノ……小さじ1/3
塩……小さじ1/2
ミニトマト……6個
スライス黒オリーブ……25g
砂抜きしたあさり……150g
塩・こしょう……適量
<飾り用>
ローズマリー(お好みのハーブ)……適量
【作り方】
1. サンマは斜め半分に切り、全体に塩(分量外)を振り、脱水シートまたはキッチンペーパーの上からラップで巻き、1時間ほど冷蔵庫に置く。
「斜めにカットすることで内臓が出にくくなります。サンマから出た水分が残っていると油がハネるので、しっかりとペーパータオルなどで拭き取っておきましょう」
2. フライパンにオリーブオイル1/3量とにんにく1/2量を入れて強火で熱し、サンマを並べ入れる。焼き色が付いたら裏返し、全体に焼き色を付ける。
「ここでは皮目にこんがりとした焼き色を付けるのが目的なので、強火で一気に焼いていきましょう。中まで火が通っていなくても大丈夫です」
3. サンマの両面に焼き色が付いたら火を止め、調味料<A>をすべて加えて強火にかける。フツフツと煮立ってきたら、ミニトマト、スライス黒オリーブ、砂抜きしたあさり、にんにく1/2量を加える。
「火を付けたまま調味料を入れると飛び散るので、必ずいったん火を止めてから調味料を入れてください」
4. スプーンで煮汁をすくい、サンマに回しかけながら5分ほど煮る。あさりが完全に開いたら弱火にし、蓋をして5分ほど煮る。最後にオリーブオイル1/2量を加えてフライパンをゆすりながら煮汁を乳化させ、塩・こしょうで味を調え火を止める。器に盛り付け、ローズマリーを添えれば完成。
「煮汁をすくって上からまわしかけることで、サンマの表面にも味が染み込みます。サンマの煮崩れを防ぐため、トングや菜箸で触れるのではなく、フライ パンをゆすりながら、全体を混ぜ合わせていきましょう」
おいしくて栄養価の高いサンマが出回っています。フライパンを使った調理ならば、パパッとつくれるし、後片付けもラクに済みます。スパイスを使った多国籍レシピも取り入れて、今年はサンマをたっぷりとさまざまに楽しんでみてはいかがでしょうか。
【プロフィール】
料理家 / 横山久美子
青森県出身。単身でカナダに渡り、カップケーキデコレーターとなる。帰国後、いがらしろみプロデュースフェアリーケーキフェア入社を経て、ニコライバーグマンカフェノムへ入社。パティシエとしてスイーツづくりの経験を積んだ後、2014年に独立。2016年8月からは、東京・南青山で故郷の青森食材を使った料理とお菓子の教室「Knock’s kitchen」をスタート。一般社団法人おにぎり協会公式メンバーでもある。雑誌、広告等のフードコーディネート、イベントのフードケータリングなどでも活躍中。
http://www.knock-food.com/