グルメ
2021/10/26 20:00

塩炒りだけじゃない!「ぎんなん」が主役になるおかずレシピを料理研究家が考案

秋になると、銀杏並木に実がたくさん落ちているのを見かけることがあるのではないでしょうか? 銀杏(いちょう)の木には雄と雌の木があり、雌の木にだけ実がなります。それが銀杏(ぎんなん)。硬い皮の内側にある可食部は、もちもちとした食感とほんのり苦味もあっておいしく、“秋の味覚”として楽しまれています。

 

ぎんなんといえば、塩を振っていただく「塩炒り(塩煎り)ぎんなん」が定番ですが、今回はほかに“ぎんなんが主役になるレシピ”を、料理研究家のほりえさわこさんに考案していただきました。

 

“ぎんなん拾い”の注意点とは?

銀杏(ぎんなん)とは、秋になると銀杏(いちょう)の木になる種子のこと。ふっくらとした柔らかい外表皮を取ると、中から硬い殻に包まれた胚乳が表れ、この部分を加熱すると中の身はきれいな翡翠色になり、食べることができます。食用とするのはアジア独特の食文化で、韓国でもよく食べられているほか、特に和食のあしらいには欠かせません。

 

「この季節になると毎年、母はぎんなん拾いに行くのですが、拾うときには注意が必要です。ぎんなんの外表皮はとても匂いが強く、肌がかぶれる原因となるギンコール酸を含んでいるので、手袋をして拾い、外表皮を落とすためによく洗ってから干すという下処理が必要です。絶対にそのまま触らないでください。

産地としては、愛知県の祖父江町(現・稲沢市)のぎんなんがとても有名で、生産量も日本一。道端で拾えるぎんなんは食べるために育てられていないこともあって可食部が小さいこともあるのですが、祖父江のぎんなんは粒が大きく、食べ応えがあります」(料理研究家・ほりえさわこさん、以下同)

 

実は食べすぎは危険! その理由は?

ぎんなんは食べすぎてはいけない、と聞いたことがあるでしょうか? 実は、ぎんなんには中毒症状を発症させる物質が含まれているのです。

 

「食べすぎてはいけない理由は、種子に含まれる物質を摂りすぎるとビタミンB6の欠乏症となるためです。大人はかなりの量を食べないと中毒症状に陥らないのですが、個人差があるので注意が必要。また、子どもの中毒報告はとても多いので、一粒二粒食べる程度にとどめておくのがよいでしょう。何ごとも食べすぎないことが大切です」

 

ぎんなんの保存の仕方

ぎんなんは殻つきのままであれば、冷凍も冷蔵もすることができます。ただし、冷凍してしまうと、その後加熱してもきれいな翡翠色にはならないので、1~2か月で食べ切るなら冷蔵がおすすめ

 

「保存袋に入れて野菜室にしまっておけば、ちょっとあしらいに使いたいときに便利ですよ。加熱して保存しておくより、生のままの方が香りや味が飛ばず、長く保存できます

 

王道だけどやっぱりおいしい!
シンプルな「塩振りぎんなん」の作り方

パッと食べられておつまみにぴったりの「塩炒り(塩煎り)ぎんなん」。今回は直火で煎るより、さらに手軽に電子レンジを使って作る方法を紹介しましょう。「ぎんなんのサイズや電子レンジの加熱ムラによって時間が変わるので、様子を見ながら加熱しましょう」

※直火で炒らないので「塩振りぎんなん」としています。

 

【作り方】

1. 縦長の茶封筒にぎんなんを殻ごと入れる

「10~15粒くらいのぎんなんを茶封筒に入れます。加熱するとぎんなんが弾けるので、飽きにくい縦型がおすすめ。また、茶色でなくても構いませんが、デザインのあるものは電子レンジにかけられない塗料が使われていることもあるので注意が必要です」

 

2. 口をしっかり閉めて、電子レンジ(600w)で40秒加熱す

「口は二つ折りにして、ぎんなんが飛び散らないようにします。口を下にして電子レンジに入れるも忘れずに」

 

3. 封筒の中でパンッと音がしたら開け、できあがったぎんなんから取り出していく

「殻が割れたものは加熱ができているので、割れたものから取り出して剥いていきます。殻が割れなかったものは封筒に戻して、再度様子を見ながら加熱してみましょう。殻が割れたのに加熱し続けてしまうと可食部が細かく割れてしまうので、きちんと見て寄り分けてください」

 

オイルをまぶしてチンするだけ! ぎんなんの薄皮を剥く方法

殻と薄皮を同時に剥くなら、先ほどの封筒を使った処理方法が便利ですが、薄皮のみで売られている場合は、この方法で剥いてみましょう。

 

【材料】

ぎんなん……50g
油……小さじ1弱
水……大さじ1

 

【作り方】

1. ぎんなんの薄皮に油をまぶして水を加える

「ぎんなんの薄皮に油がまんべんなくつくよう、かけてから混ぜて馴染ませます。油は、香りのないサラダ油などがいいでしょう」

 

2. ラップをふわっとかけて、電子レンジ(600w)で1分加熱する

「ぎんなんを平たく並べてしまうと、加熱したときに水分が飛びすぎてカサカサになってしまうので、ボウルのような形状のものがおすすめです」

 

「チンすると、こんなふうに薄皮が剥けた状態に仕上がります」

 

3. ざるに上げて水気を切り、ぎんなんを転がしながら薄皮を剥く

「熱いのでやけどしないよう注意しながら、ペーパーでぎんなんの薄皮を剥いていきます。冷めると剥きにくくなってしまうので、なるべく熱いうちに行います」

 

いずれかの方法で薄皮まで剥けたら、お料理に使うことができます。ここからは下処理を終えたぎんなんで作るレシピを2つ紹介しましょう。

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

もっちりぎんなんとクリーミーな松の実で作る「ぎんなんのお粥」

韓国で料理の修行をしていた経験のあるほりえさんが作ってくださったのは、韓国でもよく食べられているというお粥。みじん切りにしたぎんなんと攪拌して入れた松の実がクリーミーで、もちもちした食感とコクのある味が楽しめるお粥に仕上がりました。

 

「調味料は塩のみなのですが、松の実とぎんなんの味わいがおいしい一品です。お米をあらかじめ攪拌して炊くので時間がかからず、手軽に作っていただけます。また、柔らかくて消化によく、ぎんなんと松の実が滋養になるので、疲れたときや二日酔いの日のごはんにもおすすめです」

 

【材料(2人分)】

お米(洗わずに30分以上浸水させる)……1/2カップ
ぎんなん(加熱して薄皮を剥いたもの)……50g
松の実……30g
塩……小さじ1/2

 

【作り方】

1. 松の実をフードプロセッサーで攪拌する

「松の実はもう少し細かく、しっかり攪拌します。トッピング用のものは攪拌せず、数粒取っておきましょう」

 

2. ぎんなんをフードプロセッサーで攪拌する

「ぎんなんは粗くみじん切りにした状態に。こちらもトッピング用のものは取り分けておき、半分にカットしておきましょう」

 

3.お米をフードプロセッサーで攪拌する

「お米が1/3くらいの大きさに砕けていれば大丈夫。もちろん攪拌しないまま炊くこともできますが、粒の小さいお米は口当たりがよくて食べやすいですよ」

 

4. 鍋にお米と水を入れて10分ほど加熱する

「お米を入れたら、炊きはじめます。攪拌したお米は炊けるのに時間がかからない分、焦げやすいので、蓋をせずにときどき様子を見ながらかき混ぜてください」

 

5. 沸騰したら、ぎんなんと松の実を入れる

「ぎんなんと松の実をよくかき混ぜ、トッピングのぎんなんと松の実をのせたら完成です」

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

おかずにもおつまみにもぴったりの「ぎんなんと肉団子の甘辛煮」

小さな肉団子とぎんなん、ナッツや甘栗を入れた吹き寄せのようなおかずは、甘辛くてごはんにもお酒にもぴったりの味。ナッツのザクザクした食感とぎんなんと肉団子のもちもちが味わえたり、栗の甘さやぎんなんのほろ苦さがあったりと、食べているだけで賑やかな気持ちになれる一品です。

 

「ポイントは、ナッツを炒める前に電子レンジで1分加熱してローストしておくこと。この一手間がザクッとしたナッツの食感につながり、アクセントになってくれます。先ほどのお粥のような優しい味わいのものにもよく合います」

 

【材料(2人分)】

<肉団子>
合い挽き肉……50g
酒 小さじ2
片栗粉……小さじ1

醤油……小さじ2
砂糖……小さじ2
生姜(スライス)……1かけ
無塩ミックスナッツ(電子レンジで1分加熱したもの)……50g
ぎんなん(加熱して薄皮を剥いたもの)……50g
甘栗……5粒

 

【作り方】

1. 合い挽き肉をよく練り、片栗粉と酒を入れて団子状に丸める

「片栗粉を入れて練ると、肉汁と旨みが溢れ出さず、しっかり閉じ込めて置くことができます。また、食感も柔らかくてしっとりしますよ」

 

2. フライパンに醤油と砂糖、生姜をいれて沸かし、肉団子を加える

「中火で加熱し、肉団子を転がしながら、煮汁がとろんとするまで煮詰めていきます」

 

3. 汁気がなくなってきたら、ナッツ・甘栗・ぎんなんを加える

「お醤油を全体に絡めながら煮汁の水分を飛ばしていきます。全体につやが出て、水気がなくなったらできあがりです」

 

茶碗蒸しに入れたり、あしらいに使うだけだったぎんなんも、存在感あるレシピでいただくと、あらためておいしさに気づけるはず。おせち料理には松葉ぎんなんとして使うので、冷蔵庫に少しストックしておくといいかもしれません。

 

【プロフィール】

料理家 / ほりえさわこ

料理研究家の草分け的存在である祖母・堀江泰子さんと、同じく料理研究家の母・堀江ひろ子さんとともに三代で料理家として活躍。幼稚園の頃から包丁を握り、料理の道へ。イタリアと韓国での料理修業の経験を持ち、和食をベースにしながらもレパートリーが広く、家庭で作りやすいレシピを提案している。総勢9名の大家族の中で最高齢の106歳になる祖父の生活や、おすすめレシピをまとめた『100歳まで元気でボケない食事術』(主婦の友社)は、読むだけでも面白くてタメになる。