「グルテンフリー」という単語が浸透し、スーパーなどでも手に取りやすくなった米粉(こめこ)。最近では、小麦粉の価格高騰で代替品としての注目も集めています。一方で、小麦粉の代わりとしてではなく、もちもちとした食感を楽しむためにあえて米粉を選ぶ人も。今回は、米粉レシピを長年に渡り研究してきた、料理研究家の今別府靖子さんに、“米粉らしさ”を活かしたレシピを教えていただきました。
米粉にはどんな種類がある?
米粉とは、お米を砕いて粉末にしたもの。日本における歴史は古く、奈良時代には米粉を練って揚げた煎餅のようなものが大陸から伝わって来たことをはじめ、お団子などの和菓子の材料としても広く使われるようになりました。
米粉には、もち米を原料とした白玉粉や道明寺粉、うるち米から作られる上新粉、菓子・料理用の米粉などがあります。一般的にスーパーで売られているものは、うるち米から製造されたもので、菓子用やパン用など用途別に表示されています。ちなみに、菓子・パン用の米粉は上新粉と違って粒子がかなり細かく、ダマになりにくいので料理にも扱いやすくなっています。
「今回紹介するレシピに使っている米粉も微細粒タイプで、菓子・料理用と表記されているものです。上新粉ではうまくできない場合もあるので、『米粉』と書いてあるものを使いましょう」(料理研究家・今別府靖子さん、以下同)
ではここからは、米粉のもちもちとした食感がアクセントとなるレシピを、今別府さんに解説していただきます。「米粉のグルテンフリー肉まん」「もちっと米粉ニョッキのトマトソースがけ」「高野豆腐ときのこの米粉グラタン」の3種です。
もちもちの皮が絶品! 「米粉のグルテンフリー肉まん」
米粉の味ともちもち感を楽しみたいなら、いちばんおすすめしたいのが肉まんの皮。むっちりとして食べごたえがあり、腹持ちもよくて満足感の高い一品です。
「米粉で作る肉まんは、小麦粉のものと違ってずっしりとした仕上がり。米粉によって水分量が若干変わってくるので、耳たぶの硬さくらいになるよう、水を調節しながら練ってください。蒸し上がったあと冷めると硬くなっていくので、その場合は蒸し直してから食べましょう。一度蒸したものは一か月程冷凍保存ができるので、いつでも手軽に蒸し直して食べられますよ」
【材料(6個分)】
〈皮〉
・米粉……200g
・片栗粉……40g
・ドライイースト……6g
・砂糖……大さじ1
・塩……ひとつまみ
・牛乳(人肌に温める)……150ml
・米油……大さじ2
*打ち粉用片米粉……適量
〈具〉
・豚ひき肉……200g
・長ねぎ……1/3本
・生しいたけ(軸も使う)……2枚
・しょうが……1かけ
・しょうゆ……大さじ3
・砂糖……大さじ2
・ごま油……大さじ1
・塩、こしょう……各少々
【下準備】
ボウルに豚ひき肉とみじん切りした野菜と調味料を入れ、よく混ぜ合わせて具を作る。
【作り方】
1. ボウルに牛乳以外の皮の材料を入れ、泡立て器で混ぜ合わせる。
「泡立て器でぐるぐると混ぜながら、粉類のダマをほぐします」
2. 牛乳と米油を加えてへらで混ぜる。
「粉に牛乳と米油を馴染ませるように混ぜていきます」
3. 粉気がなくなったら手でこね、ひとまとめにしてラップをして約15分発酵させる。
「耳たぶくらいの硬さになりつるんとしたら、ひび割れないようにきれいに丸めて発酵させます。固すぎたり柔らかすぎたりしたら、米粉と水で調節しましょう」
4. 生地が1.5倍の大きさまで膨らんだら、生地を6等分して丸める。
「たくさん膨らむわけではありませんが、発酵後は生地が柔らかくなり、具を包みやすくなります」
5. 広げたラップの上に打ち粉をして生地をのせ、上からもラップをかぶせたら、生地を円形に薄く伸ばす。
「ややぼろぼろしやすい生地なので、ラップでサンドして伸ばしていくようにしましょう」
6. 生地に用意した具をのせ、四方を折りたたむようにして包む。
「小麦粉の皮と違い、伸びづらいので、しっかり伸ばした生地で覆うように包んでいきます」
7. カットしたオーブンペーバーに肉まんをのせて、蒸し器で約20分蒸す。
「おいしく蒸すコツは、蒸気がしっかり上がってから蒸しはじめること。蒸気が上がっていなかったり温度が低かったりすると失敗してしまうので、強火でしっかりお湯を煮立たせておきましょう。ステンレスの蒸し器の場合は、肉まんに水滴が落ちてこないよう、フタにふきんを巻いて蒸します」
皮の作り方さえ覚えてしまえば、中にあんこを入れてあんまんにすることもできます。お好みのオリジナル中華まんを作ってみても楽しいですよ!
次のページでは、ニョッキやグラタンのレシピを紹介していただきます。
おもてなしや週末のご褒美にぴったり! 「もちっと米粉ニョッキのトマトソースがけ」
じゃがいもと米粉を合わせて作るニョッキは、もちもちですが歯切れがよく、おもてなしや特別な日のメニューにもぴったり。ゆっくりできる週末のランチにもおすすめしたいレシピです。
「ニョッキは茹でる前の状態でも、茹でてからでも冷凍できます。こちらも一ヶ月を目安に消費してください。市販のパスタソースを使えばより手軽ですし、ホワイトソースやオイルベースなど、お好みのソースで食べてみてくださいね。じゃがいもをかぼちゃやさつまいもに変えると、色がついてかわいいニョッキになりますよ」
【材料(2人分)】
・じゃがいも……2個
・たまご……1個
・米粉……100g
・市販のトマトソース……300g
・粉チーズ……適量
・生バジル……適宜
*打ち粉用片米粉……適量
【作り方】
1. じゃがいもは皮をむいて茹で、水分を飛ばして粉ふき芋の状態にしてから、マッシャーで潰す。
「熱いうちにできるだけ形が残らないように潰しておくと、なめらかで食感のよいニョッキに仕上がります」
2. 溶きたまごを入れてゴムべらでよく練る。
「じゃがいもにしっかりたまごがなじみ、生地全体が黄色くなるまで混ぜます」
3. 米粉を入れて混ぜ、粉気が少なくなってきたら手でこねる。
「生地がなめらかにまとまるまで、しっかりこねましょう。硬さの目安は耳たぶくらいです」
4. 生地を親指の太さくらいに伸ばし、打ち粉をしながら包丁で2cmの長さに切って丸める。
「打ち粉をしすぎると、生地がぽろぽろしてきてきしまうのと、硬くなってしまうので、台にくっつかない程度にふりましょう」
5. 丸めたニョッキにフォークを当て、模様をつける。
「模様はなくても構いませんが、あった方がソースも絡みやすく、見た目もかわいいですよね。ぜひやってみてください」
6. たっぷりのお湯でニョッキを茹でる。浮いてきたらさらに1分程茹でてから、ざるにあげる。
「あとはニョッキを器に盛りつけ、温めたトマトソースをかけたらできあがりです。粉チーズをかけてバジルをのせていただきましょう」
ホワイトソースの“ダマになる”問題は米粉で解決! 「高野豆腐ときのこの米粉グラタン」
バターと小麦粉を練って作るホワイトソースも、溶けやすい米粉を牛乳に溶かしておく方法で作るとダマになりにくく、簡単です。
「高野豆腐や野菜をたっぷり入れた、栄養価も高いグラタンにしました。高野豆腐が入ると、食べ応えが出て満腹感も得られるのでおすすめです。お好みの具で作ることもできますし、牛乳を豆乳に替えてもOKです。粉チーズの代わりにマヨネーズにしてもおいしいですよ」
【材料(2人分)】
・高野豆腐……2個
・玉ねぎ……1/4個
・しめじ……1/2袋
・エリンギ……小1本
・ハム……1枚
・サラダ油……大さじ1/2
・牛乳……250ml
・米粉……大さじ2
・鶏がらスープの素……小さじ1
・塩、こしょう……各少々
・パン粉……適量
・粉チーズ……適量
・パセリ(みじん切り)……適宜
【下準備】
高野豆腐は1個半を水に浸して戻したら、水気を絞って約1cm角切りにする。残りはすりおろしておく。
【作り方】
1. 玉ねぎは薄切り、しめじとエリンギは粗みじん切り、ハムは細切りにして油で炒める。
「あとでオーブンに入れますが、時間が短いので、ここでしっかり火を通しておきましょう」
2. 牛乳に米粉と鶏がらスープの素を入れて混ぜ、1に加えて混ぜる。
「ここで牛乳にしっかり米粉を溶かしておくのが、ダマにならずじょうずにホワイトソースを作るポイントです」
3. 戻した高野豆腐を加えて中火でとろみがつくまで混ぜる。
「しっかりと高野豆腐にもソースが絡み、とろんとするまで混ぜながら加熱します」
4. 塩・こしょうで味を調えてグラタン皿に盛り付ける。
「グラタン皿に盛り付けるときには、平らにならして入れましょう」
5. すりおろした高野豆腐と粉チーズ、パン粉をふって250度のオーブンで約2分、アルミホイルをかぶせて約5分焼く。
「焼きあがったら、仕上げにパセリをちらします。ホワイトソースには焼き色がつきませんが、パン粉が香ばしい色になったらできあがりです」
米粉は国産のものが多く、米粉用の米作りを研究し続けている米農家もたくさんあります。一方で、日本は米の自給率が100%にもかかわらず、消費量が年々減少し続けています。農林水産省によると、米1人当たりの年間消費量はピーク時の1962年度に118kgあったものが、2020年度には半分以下の50.8kgにまで減少しています。また、家庭における年間支出金額においても、2014年以降はパンの支出額の方が上回っているとか。 お米は日本の食文化の代表格です。その食文化を継承していくという意識で、ぜひ料理に米粉を取り入れてみてはいかがでしょうか?
プロフィール
料理研究家・栄養士 / 今別府靖子(いまべっぷやすこ)
健康と美味しいを基本としたレシピ開発から撮影、コーディネートまで行う。各メディアを始め料理教室やイベントなどでも広く活動。米粉に関しては、娘の小麦アレルギーをきっかけに1999年頃からレシピ開発を始める。震災後の宮城県南三陸町、福島県相馬市への米粉シチューなど炊き出し、学校給食関係者や一般向者向けの料理講習会、米粉食品コンテストの審査員を努めるなど各地で講演やイベント、料理講習会を通して米粉普及活動を行っている。また、米粉のレシピ本と電子書籍も出版している。農水省主体の東京米粉普及推進連絡会(とうきょう米粉ネットワーク)・栃木県米粉食品普及推進協議会に所属。
http://www.foods.thinknext.co.jp