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2022/11/17 21:30

「ボジョレー・ヌーボー」に沸くのは日米だけ? ワイン好きの間で新たに注目される「ボジョレー」とは

「ボジョレー」と聞いてまず「ボジョレー・ヌーボー」を思い出す人は多いのではないでしょうか? 毎年“解禁日”が設定され、当日はボジョレー・ヌーボーを楽しむ人でにぎわう風景が一般的となっています。ところがこれが風物詩となっているのは、日本やアメリカ、カナダなど世界でも一部の地域にすぎないのだそう。実はワイン好きの間でいま注目を浴びているのは、「ヌーボー」ではない「ボジョレー」なのだとか。では、この「ボジョレー」とはいったい何?

 

バーとワインショップを経営しており、ワインの最新事情に詳しい橋本一彦さんに、最新の「ボジョレー」事情をうかがいました。

 

おさらいしておきたい、
「ボジョレー・ヌーボー」とは?

「ボジョレー」とは、フランス・ブルゴーニュ地方の南にある地区の名称。そこで作られた「ガメイ」というブドウ品種を使ってその地区で作られたワインが、「ボジョレー」と呼ばれます。一方、「ヌーボー」とはフランス語で“新しい”を意味する単語。つまり、「ボジョレー・ヌーボー」とは、ボジョレー地区で作られたその年の新しいワインということになるのです。

 

毎年、11月第3木曜日が“解禁日”に設定されており、それ以前は輸送などはできても、飲んだり販売したりはできません。2022年は11月17日がボジョレー・ヌーボー解禁日

2021年のヌーボー。「Rémi Dufaitre Beaujolais Villages Nouveau2021(レミ・デュフェイトル ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー)」(左)、「“SELENE” Sylvere Trichard Beaujolais 2021(シルヴェール・トリシャール・セレネ)」

 

【関連記事】今年もいよいよ解禁! マナーとして知っておきたい「ボジョレー・ヌーヴォー」のこと

 

「ボジョレー」とは
「ボジョレー・ヌーボー」のことではなかった

ボジョレー・ヌーボーを略したつもりで「ボジョレー」と言っていた人もいるかもしれません。橋本さんに聞いてみると、「ボジョレーとボジョレー・ヌーボーは別物です」とのこと。

 

「日本では、ボジョレー・ヌーボーのイメージが強いため、ボジョレーはイコールボジョレー・ヌーボーとなってしまっています。ヌーボーじゃない時のボジョレーはあまり好きじゃない、あるいはそもそも知らない、という人が多いですね。

でも、実はボジョレーにはとても味わい深いワインもあるんです。生産者側からも、ボジョレーは畑や場所が良くて参入しやすいという利点もあります。最近では味わいも含めて、ボジョレーの価値が見直されてきているんですよ」(橋本一彦さん、以下同)

東京・赤坂のバー「sansa」オーナーの橋本一彦さん。

 

収穫と新酒を祝う形のひとつとしてヌーボーを作る生産者はいますが、やはり『ワインは適切な時間をかけて作るもの』という考えもあります」

 

ご当地では実際、ヌーボーを作っていない生産者の方も少なくないのだとか。というのも、本来ワインとは収穫されたブドウを熟成させて作るもの。そのため、ヌーボーを作る生産者が比較的多いであろうボジョレー地区であっても、ほかの地域と同じワインの作り方のみをしていることもあるようです。

 

注目を集める“熟成ボジョレー”とは?

ワインは適切な時間をかけて作るものであり、またボジョレーのワインが魅力的だということを教えていただいたわけですが、では実際に、「ボジョレー」のワインとはどのような味わいなのでしょう? ボジョレーの味についても、橋本さんに教えていただきました。

 

「ガメイ種のぶどうを使ったボジョレーは美味しいですね。僕はどちらかといえば『ボジョレー・ヌーボーは苦手だ』と思っていたんです。でも、ガメイはそもそもおいしい、魅力的なブドウです。いい意味で洗練されきっていない、荒々しさや複雑さがある味わいに、魅力があると思っています。銘柄によっては、さらに熟成させることで本当に魅力的なお酒になることもあります。それが知られたことで、昨今、ヌーボーではないボジョレーが注目されてきているのだと思います」

こちらはヌーボーではなく、熟成されたボジョレーワイン。「Laurence & Rémi Dufaitre(ローレンス・エ・レミ・デュフェイトル ボージョレ・ヴィラージュ)」(左)と「Les Chemins de Traverse(レ・シュマン・ド・トラヴェルス)」

 

常温はNG!
ワインの保存で注意すべき3つのポイント

熟成させれば、より魅力的な味わいになるというボジョレー。ではまず、初心者でも失敗しない保存方法とはどのようなものなのでしょうか? この機会に、注意すべきポイントについて教えていただきました。

 

「気を付けなければいけないのは、温度、湿度、光の3つ。低温・低湿度の暗い場所が保存に適しています。冷蔵庫は14℃程度に設定するのが最適です。直射日光が当たらないからといって、納戸などで保存することは避けるべき。というのも、冬はともかく夏は納戸の中もかなりの高温になるためです。

冷蔵庫内では横に倒して入れてください。振動はワインの品質を劣化させてしまうので、冷蔵庫の扉部分にあるフリーポケットやボトルポケットに入れるのはNGです。手ごろな価格のものでかまわないので、ワインクーラーがあれば一番いいですね」

 

振動はワインの粒子間の安定性をなくしてしまうため、本来の味わいを損ねてしまうんだそう。また、ボトルを横向きにするのも、振動を防ぐためだけでなく、コルクを湿らせておくためという理由も。これは、コルクが乾燥することで空気を通しやすくなり、ワインが酸化していってしまうのを防ぐためでもあります。おいしい熟成ワインを楽しむには、これらのポイントを押さえることが必要です。

 

ちなみに、自身でもワインを熟成させたいという場合には適した銘柄があるので、ワインショップで購入する際などには、確認をしてから選ぶようにしましょう。

Sansaでは料理に合わせたワインの提案も。画像(上右・下)は「サトイモと鮭のブランダード」。ブランダードとは、魚を牛乳やじゃがいもと一緒に煮込み、混ぜてペースト状にした料理のこと。

 

やっぱり気になる
“ヌーボー”の特徴と魅力とは?

それでも、やはり解禁日が近づくにつれボジョレー・ヌーボーの存在は気になるでしょう。ボジョレーの魅力について知ったところで、あらためてヌーボーの魅力についてもうかがいました。

 

「ヌーボーにも、おいしいものはもちろんあります。ヌーボーの最大の特徴は、製造時にガスを充填していること。ガスを入れることで色素がしっかりと抽出され、銘柄にもよりますが、味わいもパワフルで厚みが出るものになります。
とはいえ、やはり“収穫と新酒を祝う”といった気持ちで楽しめることが、何よりもの魅力だと思います。実際にボジョレーヌーボーを作らない、ボジョレーの生産者も人のヌーボーを飲んでお祝いしたりしていますよ」

 

また、“早出し”のワインだからこそ、その年の出来栄えを一番に確認することが出来るというのも、ヌーボーならではの楽しみだそう。

 

「ヌーボーを飲んで、その年のワインの質を先取りしておくこともできます。ただ、これは仕事柄ワインに携わっている人の楽しみ方かもしれないので、一般的に楽しむ場合は難しいことを考えずに、収穫祭のように一年に一度の祝賀イベントヌーボーを楽しむことが一番だと思います」

ボジョレーもボジョレー・ヌーボーも、それぞれの特徴や魅力を知った上で味わえば、より深い楽しみ方ができそうです。今年は、ヌーボーに加えて熟成ボジョレーも用意して、味を比べてみる……というのも楽しいかもしれません。

 

【プロフィール】

sansaオーナー / 橋本一彦

学生時代からアルバイトなどでワインをはじめとしたさまざまなアルコールに触れる。フランス東部のジュラ地方で生産されるヴァン・ジョーヌ(黄色いワイン)を初めて飲んだ時に衝撃を受け、ワインの世界にのめり込むように。現在は、東京・赤坂でバー「sansa」、六本木でワインショップ「awai」を経営。

 

【店舗情報】

sansa

生産者の元を訪ねセレクトしたワインを、食事とともに楽しめるワインバー。ワイン以外にもクラフトビールを多種揃えており、料理のマリアージュ・マッチングを提案してくれるのが特徴。ランチの営業も行っており、敷居を感じさせないフレンドリーさも魅力。
所在地=東京都港区赤坂2-20-19 赤坂菅井ビル1F
営業時間=ランチ 11:30~14:00(水曜~金曜)、ディナー 18:00~25:00(月~金曜)・17:00~24:00(土曜)・17:00~22:00(日曜)
定休日=火曜、不定休
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