日本人1人当たりの卵の消費量は世界第2位(日本養鶏協会「鶏卵の需給見通し」2022年9月より)。栄養価の高く、どんな食材とも相性がいいので和洋中さまざまなメニューに多用されます。
これら卵の魅力についておさらいしながら、おいしい食べ方と調理方法をマスターしましょう。卵料理の本の料理指導の経験を持ち、自他ともに認める卵好きのフードコーディネーター、平岡淳子さんに、卵を食べるときのポイントやおすすめのレシピについて教えていただきました。
卵とはどんな食材?
はじめに、卵の魅力や栄養についてあらためて教えてください。
「第一の魅力は、手軽に食べられることです。生卵をご飯にかける『卵がけごはん』、割って焼くだけの『目玉焼き』など、卵が1つあれば、忙しい朝でも手軽に作れる1品となります。そのうえ保存がきくので、常備食材として冷蔵庫にいつも卵が並ぶ家庭は多いのではないでしょうか。また、卵は完全栄養食と言われるほど栄養価が高く、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養が豊富です。どんな食材にも合うオールマイティな食材であり、価格も手頃で、家庭料理の強い味方といえます」(フードコーディネーター・平岡淳子さん、以下同)
卵に関する素朴な疑問
殻の色で味が違う? 卵は1日1個まで? 巷にはさまざまな卵に関する噂が存在します。この機会に、平岡さんに正解を教えていただきましょう。
Q.茶色い殻が茶色い卵のほうが栄養価が高い?
卵の殻は、茶色いほうがなんとなくおいしそうに思えますが、実際はどうなのでしょうか?
「卵を産む鶏の種類によって、殻の色が変わります。白い殻と茶色い殻に、おいしさ、栄養価に差はありません」
Q.白いヒモのようなものは何?
白いヒモのような部分は食べないほうが良いでしょうか?
「白い部分はカラザといって、壊れやすい黄味を中央に固定し、衝撃から守る役割があります。ここには栄養がたっぷりつまっているので、一緒に食べることをおすすめします。ただ、火が通ると白い筋となり見映えが悪くなる場合があるので、料理の撮影時には取り除くこともあります」
Q.卵は1日1個まで?
卵を食べる頻度は、どれくらいが適当でしょうか?
「卵はコレステロールが多く含まれているため、以前は『1日1個まで』という摂取基準がありましたが、現在は設けられていません。さまざまな研究により、卵のコレステロールと血中コレステロールには、十分な科学的根拠がないからと撤廃されました。卵は良質なたんぱく質の供給源でもあるので、人によっては一日数個食べられる方もいらっしゃいます。もちろん、どんなに栄養価の高い食材も食べすぎは禁物ですが、気にしすぎず、食べ過ぎた翌日は控えるなど1週間単位で調整するのが良いと思います」
Q.その効果を最大限に活かす食べ方は?
卵の栄養を活かす調理方法について教えてください。
「卵の栄養とたんぱく質の吸収率は、加熱の度合いによって異なります。生食は、熱に弱いビタミンB群をそのまま摂取できますが、タンパク質の吸収率は約50%。半熟の場合は、たんぱく質の吸収率は約90%に。ビタミンB群の損失も少ないと言われています。また、半熟は消化に良いので、疲れた体や体調の優れないときにもおすすめです」
Q.卵は朝昼晩いつ食べればいい?
卵はいつ摂取するのが望ましいでしょうか?
「手軽に摂取できるという観点から、やはり朝ですね。忙しい朝でも、卵は手軽にたんぱく質を摂取できます。朝は忙しいため、朝食も簡単になりがちですが、一日を元気よくスタートさせるためにも、朝食にたんぱく質の摂取は欠かせません。とは言え、摂取の時間をそこまで気にする必要はありません。私は疲れた夜のメニューに、簡単な卵料理を作ることがあります。色合いも良くおいしいので、簡単ですが、家族も大好きです」
では、さっそく卵を使った栄養たっぷりなレシピを教えていただきましょう。今回教えていただくのは「半熟卵のカルボナーラ」と「春菊入り納豆卵チャーハン」です。
卵に不足するビタミンCと食物繊維までしっかり摂れる
「半熟卵のカルボナーラ」
「カルボナーラを濃厚に仕上げるために黄味だけを使うレシピがありますが、今回は白身に含まれている栄養も摂りたいため、全卵を使います。また、卵に含まれる栄養素で不足しているビタミンCと食物繊維をマッシュルームとトマト、レモンで摂取します。麺の量は1人分80gと控えめですが、野菜が加わることで、満足感のある一品となります」
【材料(2人分)】
・スパゲティ……160g(袋の表示通りに茹でる。9分茹でくらいのものがおすすめ)
・卵……3個
・パルミジャーノレッジャーノチーズ……15g
・ハーフベーコン(少し厚め)……6枚
・マッシュルーム……8個
・ミニトマト……6個
・バター……10g
・にんにく……1/2かけ
・オリーブオイル……小さじ1〜2(お好みで)
・刻みパセリ……お好み量
・レモン……お好みで絞る
・温泉卵……2個
【作り方】
1.ボウルに卵を割り入れ、よく混ぜる。
「白身と黄身を丁寧にほぐしましょう。特に白身が切れず弾力を持ったままだと、卵液とスパゲッティを混ぜたときにダマの原因となってしまいます。混ぜる時は、白身を切るようにしっかり黄身と混ぜましょう」
2.(1)にパルミジャーノレッジャーノチーズを入れ、よく混ぜておく。
「削りたてのパルミジャーノレッジャーノは、風味豊かでカルボナーラにぴったり。残ったチーズは、乾燥を防ぐためにラップをした上からアルミホイルで光を遮断すると長持ちします」
「パルミジャーノレッジャーノが手に入らないときは、粉チーズやその他のチーズで代用してもOK。その場合は、塩分の含有量が異なるので、塩気を調節しましょう」
3.スパゲッティを袋の表示通りに茹ではじめる。
「茹でたてのスパゲッティを、すぐにソースに絡めたいので、茹でている間にソースを作ります。パスタを茹でるときは、放射状にパスタを入れると、まんべんなく火が通ります」
4.フライパンにバターを熱し、切ったベーコンを中火でカリカリに炒める。
「ここでは、ベーコンからうま味をじわっと引き出すように丁寧に炒めます。にじみ出た脂がバターと合わさり、ベーコンはカリカリと香ばしく、おいしいソースのベースとなります」
5.ベーコンがカリカリになったらにんにくをすりおろし、スライスしたマッシュルームを加え炒める。油分が足りないようならここでオリーブオイルを加える。
「にんにくは刻むよりも、すりおろす方が簡単。断面積が増えるほど、香りが増します」。オリーブオイルはお好みで。
6.(5)に茹であがったスパゲッティと、茹で汁を小さめのお玉一杯分を加え、水分を飛ばすようにあえる。
「フライパンにある油にゆで汁を加えることで乳化させ、この後の卵液との絡みをよくします」
7.最後にミニトマトを入れさっと炒める。
「ミニトマトは、生でも食べられるので火の通り具合に悩むところですが、皮にシワができるぐらいまで炒めると、ソースとなじむうえに程よい歯ごたえが残り、おいしく召し上がれます」
8.(2)のボウルに7を入れ、手早くよく混ぜる。
「熱を持ったスパゲッティを投入するので、卵に熱が通りダマになるのを防ぐため、素早く混ぜることがポイントです。熱が通ることで、チーズが溶け、スパゲッティに絡んでいきます」
9.皿に盛り、刻みパセリと温泉卵をのせる。好みでレモンを絞って食べる。
「お好みでコショウもかけても。温泉卵を簡単に作る方法は、蓋のついた鍋にお湯を沸かし、火を止めて15分放置するだけ。水から引き上げ、冷蔵庫で2~3日保存できるので、前もって作っておいても良いですね」
美肌効果たっぷりの「春菊入り納豆卵チャーハン」
「食物繊維も豊富で、美肌効果もある納豆。納豆は炒めることで臭みがやわらぎ、まろやかで食べやすくなります。春菊は鍋物のイメージが強いですが、炒めると鮮やかな緑に変化します。黄色と緑、そしてしらすの白のコントラストが食欲をそそる1品です。春菊と醤油は相性ぴったり。また、玄米や分づき米を使うことで、米の栄養を無駄なく摂取できます」
【材料(2人分)】
・卵……3個
・納豆……1パック(タレは使用する)
・春菊……2株
・分つき米……多めの2膳
・好みの食物油……大さじ2
・塩、こしょう……少々
・醤油……小さじ2
・しらす……大さじ2
【作り方】
1.深めのフライパンに油を大さじ1熱し(焦げ付きやすいフライパンなら油をもう少し増やす。)溶きほぐした卵を流し入れ強火でふんわり炒め、取り出す。
「半熟状態で取り出し、後ほどご飯と一緒に炒めます」
2.フライパンに残りの油を熱し、納豆を粘りけがやわらぐまで炒める。
「納豆は炒めることで、粘り気が減りパラっとします。火を通すことで、味わいもまろやかに、ホクホクとした食感に」
3.(2)に分つき米、刻んだ春菊を入れしっかり炒める。
4.(3)に納豆のタレ、塩を加え炒める。
5.(4)に(1)の卵を戻し入れ、醤油を鍋肌から加え、卵をほぐすようにして混ぜる。
「醤油を鍋肌に回し入れることで、醤油の香ばしさを引き立てます」
6.空気を含ませるように、フライパンを上下に動かし炒める。
「ご飯を宙に浮かせることで余分な水分を飛ばし、空気を入れることでふわっ、パラッとした炒飯になります」
7.炒飯を盛り付けた後に、しらすを山高に盛り付ける。
「玄米や分付き米を使うと、米が糠(ぬか)でコーティングされているので、白米を使用するよりもパラっとしたチャーハンになります。しらすは一緒に炒めず最後に盛り付けることで、ふんわりとした艶やかなしらすがアクセントになり、見た目にもおいしく食欲をそそります」
卵がけご飯のように卵を生で食べることは、世界でも珍しい食文化。海外では、安全面から生食は敬遠されがちです。安心して卵が食べられるのは、生食を基準に衛生管理が徹底されている日本ならでは。その安全な卵があるからこそ、多彩な卵料理が存在し世界2位の消費量となっているのです。
上の2つのレシピも、おいしさはもちろんのこと栄養満点! 半熟卵のカルボナーラはゆとりのある休日に、炒飯は忙しい朝に……。ぜひ、お楽しみください。
Profile
フードコーディネーター / 平岡淳子
好きな食べ物は、おにぎりと卵焼き。卵好きが高じて、卵料理本の料理指導も行う。手軽に作れる栄養バランスの良い家庭的な料理が好評。毎日食べるごはんをもっと大切にしたいと「平岡淳子 毎日のおかず教室」を主宰する。書籍、雑誌、テレビ、Web、広告等でのレシピ提案と調理、スタイリングなど幅広く活動を行う。
Instagram