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2025/1/6 11:00

【西田宗千佳連載】遅れてきた「シャープのライカスマホ」

Vol.145-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はシャープから登場した「AQUOS R9 pro」。ライカ社との協業でカメラ性能をアップさせた、シャープの開発意図を探る。

 

今月の注目アイテム

シャープ

AQUOS R9 pro

実売価格19万4600円〜

↑ライカカメラ社が監修した高精細な5030万画素の標準・広角・望遠カメラを搭載するSIMフリースマホ。カメラが3眼となり、標準カメラには1インチを超える1/0.98インチのセンサーを搭載する。美しい写真を撮影可能だ。

 

じっくりと開発してカメラ機能に注力する

シャープは12月に同社のフラッグシップスマホ「AQUOS R9 pro」を発売した。カメラを主軸としたフラッグシップスマホであり、著名カメラメーカーのライカとの協業モデルでもある。

 

12月にカメラに力を入れたフラッグシップモデルを提供するのは、同社の商品化サイクルを外れた部分がある。いままでは春ごろに出ている製品だったが、今回は年末の登場になった。

 

理由はじっくりと開発を進めてきたためだ。

 

スマホにもいろいろな種類がある。雑誌やウェブではハイエンド機種が取り上げられがちだが、実際に売れるのは安価なモデルやお買い得なモデルである。今年のシャープは、ミドルハイクラスと言える「AQUOS R9」を初夏に出して主軸とし、さらに低価格な機種などを用意した。AQUOS R9ではあえてミドルクラスのプロセッサーである「Snapdragon 7+ Gen3」を使い、コストを下げつつ実パフォーマンスは維持する……というパターンを採用している。

 

ただ、そうなるとトップレベルのパーツを使った製品がなくなってしまう。それでは問題なので、カメラにとことんこだわった「R9 pro」を開発し、発売したのだ。

 

シャープのスマホ事業を統括する、同社・ユニバーサルネットワークビジネスグループ長兼通信事業本部の小林 繁本部長は、「自社技術を含めた世の中の技術をすべて投入できるため、ブランド全体に対し効果が大きい。世界のトップ集団にとどまるには必要な商品だ」と説明する。

 

20万円近くの製品なので、販売数量はR9や他のAQUOSシリーズほど多くはならない。しかし、ブランド価値の維持や最新技術に対するキャッチアップを考えると、ハイエンドスマホを作ることには意味がある…ということなのだろう。

 

そこで「カメラ」にフォーカスするのも、現在のスマホ市場を見据えたやり方と言える。

 

ライカの知名度を生かし市場で優位な地位を築く

ハイエンドスマホと言っても、性能差はなかなかわかりづらい。ゲームなどの用途でも高性能は求められるが、より多くのニーズがあるのは“カメラの高画質化”だ。

 

センサーを大型化し、複数搭載する“大型化・複眼化”は既定路線で、それだけでは差別化が難しくなった。そこで、カメラのセンサーをどう使ってどんな写真を撮るのか、そこではどんな画質チューニングを行うのか、という点が大切になってくる。

 

シャープがライカと提携しているのも、画質や“ライカらしい写り”にこだわりのあるライカと組むことで、一定の差別化が行えるためだ。単に写るカメラを作るのは難しくない。だが、“どう写るべきか”“どういう写りが好ましいのか”といったノウハウはカメラメーカーにある。彼らの知名度を生かすことはマーケティング上も優位であり、だから提携が続いているのだ。

 

一方で、ライカはシャオミとも提携しており、市場に「ライカ搭載スマホ」が複数並ぶ。そこでの差別化はどうなるのだろうか? また、進化してくるAIの取り込みはどうなるのか? そこは次回以降で解説していく。

 

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