日本のPCブランドとして長年にわたり愛されてきたFMVシリーズが2025年1月、ブランドリニューアルを行うとともに、新機種を発売しました。特に注目を集めているのは、若年層をターゲットに据えたカジュアルノートPC「FMV Note C」。
学生でも若年層でもない筆者があえて本機種をレビューしてみたところ、どんな世代にもおすすめしたい、丁度いい一台であることがわかりました。
無駄を徹底的に削ぎ落としたデザインは好印象

手にとってまず感じたのはデザインの良さ。全体の凹凸が徹底的に削ぎ落とされていることが特徴で、上面はもちろん、底面もファンレスですっきりとした印象を受けます。


また、インターフェースも最小限で、左側面にUSB Type-Cが2つとイヤホンジャックが1つあるのみ。どこから見てもアルミ筐体の美しさが際立ちます。

本体サイズはおよそ幅297×奥行210×高さ13.9mm。画面サイズは13.3インチで、A4用紙とほぼ同じサイズのコンパクトさを確保しています。本体重量は1187gで、極端に軽量というほどではないものの、持ち歩いても負担にならない重量に収められていると言っていいでしょう。
ちなみにカラーバリエーションは「エクルベージュ」「ミストグリーン」「スモークグレー」の3つです。若年層を意識していることもあってか、流行のくすみ系カラーを採用しています。今回はミストグリーンの筐体を試していますが、キートップの上品なグリーンが好印象でした。
シンプルなデザインにまとめようという思想は、キーボードにも反映されています。初めて見たときに一瞬「USキーボード?」と思ったのですが、よく見ると一般的なJIS配列です。ただし、「かな」がプリントされていないので、他の機種よりもすっきりとした印象を与えてくれます。また、カーソルキー横にWindows OSのAIツール「Microsoft Copilot」の起動キーである「Copilotキー」がしっかり配置されているのも注目でしょう。

ちなみに本製品はキーボード右のカーソル部分を一段下げず、他のキーと並ぶようフラットな配置にしています。これによりスマートな見た目を獲得しているものの、やや窮屈な配置になっているとも言えるため、人によっては少々違和感や押しにくさを感じるかもしれません。同じ最新機種である「FMV Note U」は、少し筐体サイズが大きい(14インチクラス)都合もあるものの、カーソルキーまわりを一段下げて余裕を出すデザインだったので、個人的にはこちらのほうが好みでした。

トレンドをおさえた入力端子とディスプレイ。光沢画面は好みが分かれる?
本機種のUSB Type-Cポートは、USB 3.2(Gen2x2)規格でのデータ転送が可能です。最大伝送速度は20Gbpsということで、対応する外付けSSDなどがあれば、容量の大きなデータの頻繁なやりとりが苦にならないのはメリットと言えます。また、USB Power Deliveryによる急速充電、およびDisplayPort Alt Modeによる最大解像度4Kでの映像出力にも対応しています。
Type-Cポートで様々な状況に対応できる反面、Type-Aポートがひとつもないこともあり、インターフェースのシンプルさは状況によっては少し不便に感じることもあるかもしれません。仮に片方のポートで充電をしている場合、使えるポートがあと一つとなってしまうのに若干の心もとなさを感じる人もいるでしょう。幸い、バッテリー駆動時間は公称約13.6時間(JEITA 3.0)とかなり余裕があるので、上手くやりくりするか、どうしても必要な場合はUSBハブを使うといった工夫が必要になりそうです。

先にすこし述べた通り、本製品のディスプレイサイズはモバイルノートPCとして一般的な13.3インチです。注目すべき点は、一般的な画面比率である16:9よりやや縦に長い、アスペクト比16:10の液晶パネルを採用していることでしょう。これに伴い、画面解像度はフルHD(1920×1080ドット)より縦に広いWUXGA(1920×1200ドット)となっています。
縦方向の作業領域が増えることは、資料やウェブサイトの閲覧性のよさ、WordやExcelといったツールの作業性のよさに繋がります。デスクトップPCと比べてマルチディスプレー環境を構築しにくいノートPCにおいては、かなりのメリットがあると言っていいでしょう。そのため、近年は16:10のパネルを採用したノートPCが増加傾向にありますが、本製品もそのトレンドをしっかりおさえているというわけです。
ただし、本機種はグレア(光沢)液晶を採用しており、ノングレア(非光沢)液晶に比べて映り込みが目立ちます。持ち運びしやすいサイズ感なのでカフェや図書館などで使うことも多そうですが、照明や後ろを通る人の映り込みなどが少し気になる場合もあると思うので、この点は好みが分かれそうな印象です。
スペックは必要十分。注目は3つのプリインストールアプリ
本製品は複数のモデルが用意されており、CPU・メモリー・ストレージが各モデルで異なります。
CPUに関しては、カタログモデルおよびライト、スタンダードモデルが「Core Ultra 5 134U」を採用。ハイスペックモデルのみ上位の「Core Ultra 7 164U」を搭載します。ウェブサイトの閲覧やメール、Officeスイートを使った作業など、一般的な用途ではまったく問題ないポテンシャルを備えたCPUです。とは言え、いずれも消費電力を抑えたモバイルPC向けのモデルで、本体が静音性を重視したファンレス設計ということもあり、ゲームや動画編集など重めの作業には向いていません。
また、近頃のノートPCで話題に挙がりがちなトピックといえば「Copilot+ PC」ですが、本機種はその条件を満たしていないことに注意が必要でしょう。Copilot+ PCは、ローカル端末での高いAI処理性能を担保する指標のひとつ。本製品もCopilotを含むAI機能自体は使えるものの、高度な画像生成などには向いていない、ということです。
メインメモリはライトモデルのみ8GBで、その他3モデルはいずれも16GBを搭載します。近年は8GBだとマルチタスク時に少々心もとないので、メモリ容量に悩まされたくない方には16GB搭載の3モデルをおすすめしたいところです。ストレージはハイスペックモデルのみ容量512GB、その他3モデルは約256GBとなり、いずれもPCIe Gen4接続のSSDを採用しています。基本的には、モバイルノートPCとして必要十分なスペックを備えていると言っていいでしょう。
一方、そんな本機種でうまく活用していきたいのが独自のプリインストールアプリです。これらの存在が、ビジネス効率を格段にアップさせてくれると感じました。それぞれ細かく見ていきましょう。
・Umore

1つ目は、AIを活用したメイクアップアプリ「Umore」です。設定項目がかなり細かく、美肌、美白、小顔、カラコン、チークなどに加え、背景画像のぼかしにも対応しています。
同様の機能はzoomなどにも搭載されていますが、こちらの機能は会議アプリを問わずに適用できることが強み。男性の肌色を明るく見せることもできるので、オンラインミーティングが多い男性ビジネスパーソンにも活用してほしい機能です。
・Quick Capture
「Quick Capture」は、キャプチャに特化したアプリです。大きな特徴は、画面の変化を検出して自動でキャプチャをしてくれること。例えば下の動画は、Quick Capturewを起動した状態でブラウザのタブを切り替えているところですが、画面が変わるごとに自動でキャプチャをしてくれることがわかります。
オンライン授業の板書の保存やオンラインミーティングの資料の保存など、活用できるシーンは多そうです。
・Float Access
3つのプリインストールアプリの中でも、個人的に特に気に入ったのが「Float Access」です。こちらは画面上で左クリックを長押しするとメニュー画面が出現し、「画面キャプチャ」「ウィンドウの最前面固定」「クリップボード」「ファイル検索」の4つを即座に使えるようにするもの。
これらの機能は4つとも資料作成を強力にサポートしてくれるものですが、特に便利だと感じたのは「クリップボード」です。こちらを起動した状態で文章や画像をコピー(右クリックメニューまたはctrl+C)するだけで、クリップボードに次々と蓄積させることができます。


筆者は原稿を書く際に使えそうだと感じましたが、論文を制作する学生や資料作成を行うビジネスパーソンなど、文書作成を行うあらゆる人に試してほしい便利な機能です。
オンラインミーティングや資料作成が多い人は試してみるべき
「FMV Note C」の価格は15万4100円(税込)~。公式サイトを見てみると、若年層、おもに大学生に向けて強くアピールをしています。確かに持ち運びを想定したサイズ、外出先での作業でも気にならないファンレス仕様、シンプルなデザイン、オンラインミーティングや論文作成をサポートしてくれるアプリなど、大学生にうれしい機能が満載と言えます。
しかし、これらの機能を欲するのは若年層だけではないはず。とくに外出が多く、資料作成をする機会が多いビジネスパーソンはぜひ一度、本機の使い勝手を試してみてはいかがでしょうか。