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2025/3/28 19:15

使って納得! アップル次世代スマホのイイところ足りないところって?

アップルのiPhoneシリーズ最新モデル「iPhone 16e」が販売開始となって約1ヵ月。

 

筆者は昨年から「iPhone 16 Pro」ユーザーなのですが、今回はiPhone 16eのレビュー機材をお借りし、3週間ほど2つのiPhoneを一緒に使うことで、本製品の良いところや物足りないところをじっくりチェックしてみました。先に結論を述べておくと、iPhone 16ファミリーの新しいスタンダードモデルとして、とてもコストパフォーマンスが良いモデルに仕上がっていると感じています。

↑iPhone 16シリーズのニューフェイス「iPhone 16e」を発売から3週間使ってみました。

 

スリムで軽く、6.1インチのディスプレイが見やすい

2025年は年初から「アップルがiPhone SEの後継機を発売するのではないか」というウワサで持ちきりでした。

 

iPhone SEは、2016年に初代モデルが販売されたiPhoneシリーズの廉価モデルです。2020年に発売された第2世代以降はホームボタンを搭載するiPhone 7のデザインを踏襲し、それでいて4.7インチと小さくて軽いので、片手でも軽快に操作ができます。しかも2022年3月に発売された第3世代のiPhone SEは、生産を完了するまでApple Storeの販売価格が6万2800円(税込)という、Appleデバイスの中でも手軽に買える製品でした。

 

iPhone SEの後継機を待っていた方々にとっては、6.1インチに大型化し、Apple Storeの販売価格も9万9800円(税込)~と値上がってしまったiPhone 16eに対して、「期待していたのはこれじゃない」という思いを持ったかもしれません。

 

実際、iPhone 16eはどんなスマホなのでしょうか。筆者は3週間使ってみて、以下の「いいところ」と「物足りないところ」を実感しました。

 

・本体サイズは控えめなまま大画面化し、視認性が良好に

・充電コネクターがUSB-Cに。互換性が向上

・Apple Intelligenceに対応。シリーズでもっともお手頃

・ProMotionテクノロジーや常時表示ディスプレイはなし

・シングルカメラは上位機種に見劣りする部分もあるが、機能は十分

・バッテリー駆動時間は体感でiPhone 16 Proと大きく変わらない

・カラバリがブラック・ホワイトのみ

 

さっそく、ひとつずつ詳細を見ていきましょう。

 

大型化で優秀なコンテンツプレーヤーに進化

↑6.1インチの有機EL、Super Retina XDRディスプレイを搭載。明るく自然な色合いです。

 

まず、6.1インチでありながらスリムで軽く、大きなディスプレイにより視認性が高まったことを踏まえれば、コンテンツプレーヤーとして非常に優秀なスマホであると言えるでしょう。筆者の家族が第2世代のiPhone SEを持っているので、並べて比べました。重量は、iPhone SEの147gに対してiPhone 16eが167gと20g重くなりましたが、ディスプレイが大きくなった割に本体のサイズはそれほど大きく変わっていません。従来はホームボタンを配置していたエリアにまでディスプレイが広がったことが、コンテンツの視認性を高めています。

↑左側は4.7インチの第2世代iPhone SE。iPhone 16eはホームボタンのないオールスクリーンデザインなので、ディスプレイ全体の視認性が格段に上がっています。

 

筆者が使っているiPhone 16 Proの重量は199gです。重さのバランスはトリプルレンズカメラの側に若干偏ってしまいます。その点、iPhone 16eはフラットで持ちやすいので、電車の中でNetflixのドラマを見たり、Apple Arcadeのゲームをプレイしたりしてもスマホの重さを負担に感じにくいと思います。本体はIP68相当の防塵・防水仕様なので、バスタイムのコンテンツプレーヤーとしても最適でした。

↑左側は6.3インチのiPhone 16 Pro。質量は199g。手に取って比べると167gのiPhone 16eの軽さがよくわかります。

 

古いiPhoneから買い替える意味は大きい

iPhone 16ファミリーが出揃ったことで、ちょっと古いモデルからの買い替えを考えている、という人もいるでしょう。内部機構を大きく変えて軽量・スリム化を図った2022年モデルの「iPhone 14」に比べると、iPhone 16eはデザインとポータビリティの点で従来モデルから大きく様変わりしているわけではありません。だとしても、iPhone 14シリーズよりも前の世代のiPhoneを使っているユーザーがiPhone 16eに機種変更する変更する意味は大きいと考えます。理由は2つです。

↑左側のiPhone 16 Proはトリプルレンズカメラユニットの重さにより、iPhone 16eよりも重心のバランスがやや不安定です。

 

ひとつはデジタルコネクターがLightningからUSB-Cになることです。昨今はMac、iPad、AirPodsを含む最新のアップルデバイスにUSB-Cコネクターが普及しています。他社のパソコン、ワイヤレスオーディオ機器もしかりです。旅行や出張などの機会に持ち出す複数のデジタル機器が、同じUSB-Cケーブルでチャージできることは大きなメリットと言えるでしょう。

↑iPhone 16eはUSB-Cコネクターを採用しています。

 

Apple Intelligenceに対応する最も手頃なiPhone現行モデル

もうひとつの理由は、AIアシスタント「Apple Intelligence」に対応していることです。

 

iPhone 16eはアップルの最新SoCであるA18チップを搭載するため、Apple Intelligenceが利用可能です。Apple Intelligenceは4月から日本語にも対応しますし、いわゆる「AIスマホ」としてiPhoneが便利になる実感が今よりもわいてくると思います。

 

筆者はたくさんあるApple Intelligenceのツールの中で、SiriとChatGPTの連携による詳細検索と、カメラでキャプチャした被写体についてApple Intelligenceが深く調べてくれる「ビジュアルインテリジェンス」が役立ちそうな手応えを感じています。Siriは別途ChatGPTのモバイルアプリをインストールしなくても、設定から連携をオンにすれば、複雑なリクエストを投げたときに連携して必要な答えを返してくれます。

↑Siriへの複雑なリクエストには、ChatGPTが連携して答えてくれます。

 

ビジュアルインテリジェンスはいわゆる「Googleレンズ」のようなツールで、画像認証により外国語の標識やレストランのメニューを日本語に翻訳して読みたいときに役立ちます。iPhone 16eが搭載するアクションボタンを押して、ツールをすばやく立ち上げる設定も選べます。

 

アップルは今後、iOSのアップデートに伴いApple Intelligenceの新しい便利なツールを次々に増やしてくると思います。iPhone 16eのユーザーであれば、これからしばらくの間は最新ツールが楽しめるでしょう。

↑ビジュアルインテリジェンスで商品の詳細を検索。Google検索に連動します。

 

Proとの普段使いの違いはディスプレイにも表れる

iPhone 16eの有機ELを採用するSuper Retina XDRディスプレイは、Apple TV+などモバイル向け動画配信プラットフォームが扱う高精細なHDRビデオコンテンツを、劣化させることなく元のままに近い画質で再現します。iPhone SEのRetina HDディスプレイに比べると画質の向上には目を見張るものがあります。

 

上位モデルのiPhone 16 Proに比べて劣る点は、最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionテクノロジーを搭載していないことです。iPhone 16 Proを使い慣れていると、Webページをスクロールしたときに少し表示がもたつく印象がありました。ProMotionテクノロジーはiPhone 13 Proシリーズに初めて採用された機能です。以降からiPhone Proシリーズを活用しているユーザーは、iPhone 16eに機種変更してしまうとProMotionテクノロジーの不在に面食らうかもしれません。

 

また、iPhone 16 Proだけが搭載する「常時表示ディスプレイ」がないので、iPhoneを充電待機中にもディスプレイに時計やカレンダーを表示したままにできる「スタンバイ」が活かしきれないのも少し残念です。

 

シングルレンズカメラの高い安定感

カメラについても触れておきましょう。iPhone 16eは、iPhone 16ファミリーの中では唯一シングルレンズカメラのスマホです。上位のiPhone 16やiPhone 16 Proに比べてしまうと見劣りする部分もありますが、写真やビデオの撮影については必要な機能が十分に揃っていると思います。

 

48MPの高解像度センサーを搭載するメインカメラは、光学2倍相当のズーム撮影ができます。2倍ズームは被写体に影を落とすことのないよう、少し手もとから離した位置で料理などを撮るときに便利です。筆者は取材の際に人物のポートレートやレポート記事に使う「ブツ撮り」のような写真もiPhone 16eで撮ったりします。暗めの場所での写真撮影はiPhone SEと明らかな差が付きます。

↑シングルレンズのカメラに必要十分な機能を詰め込んでいます。

 

空間オーディオに対応する4K高画質ビデオも撮れますが、データサイズが大きくストレージ容量を圧迫するのがネックです。せっかくの機能を気兼ねなく使うために、iCloud+のクラウドストレージや外付けストレージにバックアップすることをおすすめします。iPhone 16eに直接挿せるUSB-Cコネクター仕様のコンパクトな外付けストレージには様々な選択肢が揃っています。上手に併用すれば、最も安価な128GBストレージのモデルを選んだとしても、存分に写真・ビデオの撮影を堪能できるでしょう。

↑USB-Cコネクターに直接挿せる外付けストレージがあると、iPhoneの内蔵ストレージに負担をかけません。

 

iPhone 16eはバッテリー持ちもよいiPhoneだと思います。朝から晩まで、充電せずに使い倒しても夜にはだいたい30%前後の余裕を残しています。バッテリー持ちの体感はiPhone 16 Proとほぼ変わりません。

 

デザインについて少し物足りなく感じるのは、カラバリの選択肢がブラックとホワイトしかないことです。せめてあと1色、カラーが欲しかったところですが、アップルとしては「スマホの色」で個性を主張したいユーザーにはiPhone 16を選んでほしいということなのでしょう。ただし、iPhone 16eにはサードパーティの専用アクセサリーも数多く揃っているので、実際のところは購入後に本体カラーを気にするユーザーはあまり多くはないのかもしれません。

 

総じてiPhone 16eは、上位のiPhone 16と同等クラスの実力を備えるスタンダードモデルです。各通信事業者が提供する端末購入プログラムを利用すればかなり安く買える場合もあり、相応の満足感が得られるでしょう。