デジタル
2017/2/2 18:12

iPhoneで「RAW」が撮れるって知ってた? これでiPhoneは常時携帯できる最高のサブカメラに

突然だが、iPhoneのカメラの画質に満足しているだろうか? たしかに現状でも十分な性能ではあるが、もっと細部までシャープに写したい、薄暗いシーンでの高感度ノイズを減らしたい、白とびや黒つぶれを防ぎたい……と感じるシーンもあるはず。そんなときにはRAWフォーマットでの撮影がおすすめだ。iOS 10から可能になったRAW撮影は、通常のJPEG撮影と何が違うのか。その画質差や活用法を解説しよう。

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そもそも“RAW”って何?

「RAW」とは日本語に直訳すると「生(なま)」の意味。イメージセンサーから得られたデータをカメラ内ではあまり加工せず、生に近い状態で記録するファイルフォーマットのことだ。そしてRAW現像という作業によって、RAWデータから一般的なJPGデータを出力することができる。

 

RAWといえば、かつては一眼レフやミラーレスカメラ、高級コンパクトデジカメだけの機能だったが、昨秋のiOS 10以降、「iPhone 6s/6s Plus」「iPhone SE」「iPad Pro」「iPhone 7/7 Plus」でRAW記録に対応。Lightroom mobileやProCam、ProCameraといったRAW対応のカメラアプリを使うことで、記録フォーマットとしてRAW(DNG形式)が選べるようになった。RAW現像の作業についても、これらのカメラアプリで行える。

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↑Lightroom mobileの操作画面。ファイル形式として、JPGとRAW(DNG)が選べる

 

RAW撮影の活用例①――白とびしがちな明暗差の大きなシーン

ここからは、RAWとJPEG撮って出しでは何が違うのか、作例を用いて具体的に説明していこう。

 

まずは1枚目の写真を見てほしい。iPhone 7 Plusを使ってJPEGで撮影した中国の古い建物だ。画質に何か気になる点はないだろうか?

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単なるメモ記録なら、特に写りに問題はないかもしれない。だが、写真として見れば、画面中央から右上にかけて、空の部分が真っ白く飛んでいるのがマイナスだ。通常のJPEG記録の場合、階調の再現域があまり広くないため、暗い建物側に露出を合わせると、こうした曇り空が白とびしがち。仮にこの写真を後からレタッチ処理で暗く補正しても、白とび部分が回復することはない。

 

これがRAWだとどうなるか。次の写真はRAW撮影して調整、現像したものだ。

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RAWの場合は、空は白とびせず、雲のディテールまでをしっかりと再現できている。8ビットで圧縮記録されるJPEGとは異なり、RAWデータにはより多くの情報量が含まれるため、暗部から明部までの滑らかな階調を表現できるのだ。

 

RAW現像という「ひと手間」はかかるが、この階調の広さは、風景に限らず明暗差の大きなシーンで役に立つ。下の写真では、窓から差す強い太陽光によって、JPEGでは子ども頬や腕に白とびが生じたが、RAW現像すれば違和感ないの仕上がりになった。

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RAW撮影の活用例②――ノイズが出やすい暗所撮影

では、暗所での高感度撮影についてはどうだろうか。次のカットは、同じくiPhone 7 PlusでJPEG撮影したもの。感度はオートで撮影したところ、自動的にISO320までアップした。

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一見、何も問題なさそうにみえるが、下のようにRAW現像したものと比べてみるとノイズ量に差があることがわかる。

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iPhoneの画面上で写真全体を見るだけなら特に不満はないだろう。だが、PCのディスプレイ上で拡大表示にしたり、大きく印刷したりすると、暗部に生じたザラザラとしたノイズが気になってしまう。RAW現像したものと比較すると、その差は一目瞭然。RAWではマネキンの肌のトーンを滑らかに仕上げることができた。

 

さらに次のカットは、より暗いシーンだったので、感度はISO1600まで自動アップした。ここまで高感度だと全体表示でもノイズが目立つ。だがRAWなら調整することでノイズを目立たないレベルまで低減できる。ノイズ感だけでなく発色や階調性についても、RAWのほうがワンランク上であることがわかるだろう。

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↑全体表示

 

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↑部分拡大表示

 

RAW撮影の活用例③――ディテール重視で撮りたいシーン

続いて、遠景カットの細部表現力を見てみよう。次の写真は、iPhone 7 Plusの広角で撮影した上海、および望遠で撮影した浅草の街並みだ。全体表示では差は分からないが、部分拡大にすると大きな違いが確認できる。

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↑広角で撮影。全体表示

 

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↑広角で撮影。部分表示

 

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↑望遠で撮影。全体表示

 

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↑望遠で撮影。部分表示

 

建物の輪郭など形状がシンプルな被写体では特に違和感はないが、水面や木々のような細部が入り組んだ被写体では、拡大表示にするとディテールがつぶれて塗り絵のような描写になっている。これはカメラ内で行われるノイズリダクション処理の影響によるもの。RAWの場合は、ノイズリダクションをキャンセルしたり、好きな値にカスタマイズしたりでき、解像感重視で仕上げることが可能だ。

 

RAW対応でiPhoneは常時携帯できる最高のサブカメラに

以上のように、iPhoneが備える画質のポテンシャルを最大限に引き出すには、RAWでの撮影が適している。階調やノイズ感、細部表現に優れるほか、ホワイトバランスや発色傾向を画質劣化なしで後から変更できるというメリットもある。

 

一方でデメリットは、iPhoneのRAWデータはJPEGデータの1.5~3倍程度のファイル容量があるため、ストレージが不足しやすいこと。定期的にPCなどにデータ転送することが欠かせない。また、iPhone純正のカメラアプリではRAWでの撮影や現像はできず、前述したようにLightroom mobileやProCam、ProCameraといったRAW対応のサードパーティアプリを入手しなければならない点にも留意したい。

 

そもそもiPhoneなどのスマホカメラは、手軽に撮影できることが大きな利点であり、わざわざ手間のかかるRAWを使って画質の細部にこだわることは本末転倒かもしれない。だから、iPhoneユーザーすべてにRAW撮影をすすめるつもりはもちろんない。ただ、せっかく撮るなら少しでも高画質で残したいと考える人や、RAWによる撮影/現像の作業を「手間」でなく「楽しみ」と感じられる人にとっては、RAW対応のiPhoneは常時携帯できる最高のサブカメラになるだろう。