モトローラのAndroidスマートフォン「Moto Z」シリーズは、Mods(モッズ)と呼ばれる専用アクセサリーを装着することで、スマホを超えた様々な機能を利用できることが特徴です。このModsは、モトローラがオープンソース化しており、サードパーティーによる開発も進んでいるとのこと。日本ではまだ発売されていませんが、海外ではファッションブランドとコラボしたバッテリー内蔵ケースなどがすでに登場しています。
また、開発に必要なNative Development Kit(NDK)も用意され、一般ユーザーでもModsの開発を行うことができます(日本では近日中に販売開始予定)。今回、モトローラでは一般ユーザーを対象にした、新たなModsを開発するためのアイデアソンを大阪・船場のコワーキングスペース「The DECK」で実施。応募者総数約90人のなかから選ばれた45名(病欠などの理由により、当日の参加は37人)が、アイデアを競いました。
まずはブレインストーミングで肩慣らし
アイデアソンとは、アイデアとマラソンを融合させた言葉で、新しい製品やサービスを生み出すために、個人やチームでアイデアを競うイベントを指します。Moto Modsのアイデアソンは、過去にも世界の様々な都市で開催されてきましたが、日本での開催は今回が初めて。
イベントには、モトローラ・モビリティ・ジャパンのダニー・アダモポウロス社長や、Modsエコシステム担当シニア・マネージャーのステファン・マクドネル氏が審査員として参加。アイデアの審査基準は「実現性」「ユーザーの問題解決」「日本らしさ」の3点となります。
イベントの冒頭に登場したダニー社長は、「斬新なものを生み出してきた日本ならではのイノベーションを期待しています」と述べました。ちなみに、グランプリ受賞者には、最新端末「Moto Z2 Play」とNDKキット、さらに同社の開発拠点である米国シカゴのラボツアーに2名が招待されるという豪華な賞品が授与されます。2位には、近日発売予定のNDKキットが贈呈されるとのこと。
今回、あらかじめ職場の同僚などとチームを結成して参加した人もいましたが、ほとんどは個人で参加し、当日に初対面の人とチームを結成することに。そのため、イベントは自己紹介からスタート。某トークバラエティー番組のように、自分を○○芸人と称して自分の趣味や興味あることなどを紹介します。
自己紹介が終わったら、まずはアイデアを出す練習として、様々なシーンを写した写真に、Moto Z及びModsを使って新しいアイデアを提案していきます。例えば、男性がゲームをしているシーンでは、「Moto Zをコントローラーとして使う」というようなアイデアが貼られていました。考えたアイデアは、付箋に記入して写真に貼りつけることで「見える化」され、お互いに刺激を与え合うことができるのです。
続いて、2人1組になってペアブレスト。個人のアイデアについて他者から意見してもらうことで、アイデアの完成度を高めていきます。今回は、大勢の参加者がいることを生かし、パートナーを入れ替えながらペアブレストを繰り返します。
さらに、ペアブレストで磨き上げた新しいModsのアイデアを、イラストにしながら具現化していきます。文字だけでなく、イラストにすることで製品の具体的なイメージを固めていくのです。こうして個人で作りあげたアイデアをチーム内で精査し、チームでプレゼンテーションするModsを決めます。
いよいよアイデアのプレゼンがスタート
各チームのアイデアが出揃ったところで、ダニー社長やステファン氏へのプレゼンに移ります。ここでは、単におもしろいアイデアが求められるだけでなく、実際に製品化するためのコストや実現性など、実際に製品開発に必要な情報も要求されます。
それでは、各チームのアイデアを一挙に見ていきましょう。
1.Mr.かまた「自撮りキレイMods」
チームMr.かまたが提案したのは、自撮りする際に自分の顔をより美しく撮影できる「自撮りキレイMods」。背面にLEDライトと確認用の小型モニター、シャッターボタンを備え、失敗なくきれいな自撮りが可能となります。想定価格は6980円。ダニー社長からは、「いくつLED電球を使うのか?」など、製品化を想定した現実的な質問が飛び出しました。
2.I LOVE スマホケース「Case Adaptor Mods」
I LOVE スマホケースチームからは、豊富なバリエーションを誇るiPhone用ケースを、Moto Zシリーズに装着するためのアダプターが提案されました。こちらは、内部に伸縮できるアジャスターを備え、それを調整することで大きさの異なるiPhone用ケースを装着可能にするもの。AndroidスマホはiPhoneに比べて、使用できるスマホケースが少ない、といった悩みからアイデアが生まれたそうです。想定価格は1980円。
3.エレコ「FUROSHIKI」
PC周辺機器などで知られるエレコムの社員が結成したエレコは、日本の伝統的な風呂敷をモチーフにしたスマホケース「FUROSHIKI」を提案。外側にカラーの電子ペーパーを内蔵しており、データを入れ替えることで自由にケースのデザインを変えられるというものです。想定価格は9980円。ダニー社長からは、「デザインの販売はどこで行うのか? デザインの価格はいくらを想定しているのか?」といった質問が出されました。
4.Cheero「Moto Mods Safer」
モバイルバッテリーメーカーのCheero社員によるチームCheeroは、歩きスマホ問題を解決する「Moto Mods Safer」を提案。こちらは、本体にセンサーとカメラを内蔵し、センサーが人や障害物を感知した場合、スマホの画面に前方の映像をワイプ表示してくれるというもの。歩きスマホの危険性を低減するほか、高齢者や障がい者の歩行時のサポートにも使えるとのこと。想定価格は1万円です。
5.Modify「Design Mod」
チームModifyは、背面に複数のLEDイルミネーションを備えた「Design Mod」をプレゼン。こちらは、スマホの着信や通知に合わせてLEDライトが様々なパターン光るという、デザイン性と機能性を両立したアイテム。自分でLEDの色や発光パターンをカスタマイズすることもできるようになっています。価格はデザインの複雑さによって変わり、標準的な想定価格は5000円。
6.置くだけ「マルチホームベースMod」
チーム“置くだけ”は、スマホの映像をテレビやディスプレイに出力するための「マルチホームベースMod “置くだけ”」を提案。ネット動画を大画面で見るといったエンタメ要素だけでなく、別売のBluetoothキーボードなどを使ってPCのように使うことも想定。PCを持たずにスマホのみで完結しがちな学生などにも、低価格で構築できるシステムとしてアピールするとしています。想定価格は7000円。
7.とある会社の同僚チーム「KATATEMA」
会社の同僚で作ったという“とある会社の同僚チーム”は、通勤電車で長い時間を過ごす日本人に向けた折り畳みカバータイプの「KATATEMA」を提案。これはスマホにディスプレイをもうひとつ追加するModsで、ブラウザ画面などを表示しながら、画面を切り替えずにLINEやメッセージなども同時に確認できるようにするというもの。2画面を生かし、見開きの多いマンガなどもレイアウトを損なうことなく楽しめます。背面にはタッチパネルを備え、片手でページ送りなどの操作も可能。想定価格は1万5000円。ダニー氏からは、「日本人にとって、マンガを見開きで読みたいというニーズは強いのか?」といった質問がありました。
8.e-Mods「e-Mods」
チームe-Modsは、ケースに電子ペーパーを内蔵し、デザイン変更や情報の通知などが簡単に行える「e-Mods」を提案。イメージはエレコの「FUROSHIKI」に近いものですが、こちらはモノクロで、背面カバータイプとなっています。想定価格は9980円。
9.まなぶはまだ16だから「MA・GO・NO・TE」
今回最年少となる16歳の高専生が所属するチーム“まなぶはまだ16だから”は、画面に触らずにスマホを操作できるMods「MA・GO・NO・TE」を提案。背面にタッチパネルを追加することで、スマホの画面に触らずともカーソルを操作でき、画面に指紋をつけたくない・満員電車のなかでも片手でスマホを操作したい、といったニーズに応えるアイテムとなっています。想定価格は77ドル。
9チームがプレゼンを終えたところで、ダニー社長やステファン氏、イベントをサポートしたメンターによる審査がスタート。今回、9チーム中4チームがスマホケースとしてのModsを提案したことから、日本でのスマホケースのニーズの高さがうかがい知れます。ちなみに、ほかの国では肌診断センサーや指紋認証で開けられる財布、脱着式キーボードといったアイデアが出されたそうです。
厳正な審査の結果、グランプリにはLEDイルミネーションを備えた「Design Mod」を提案したModifyが選ばれました。ステファン氏はグランプリ受賞の理由として、「日本的なデザインであると同時に、世界でも受け入れられるユニバーサルな点が評価された。また、最も重要なことは、このアイデアが製品化され、市場に上梓される可能性が高いことだ」と述べました。
2位はCheeroの「Moto Mods Safety」が受賞。NDKに加え、ダニー社長の計らいにより、当初の予定にはなかった「Moto Z」端末もプレゼントされました。
グランプリを受賞したModifyは、今後、チームのなかから選抜された2人がシカゴでのツアーに参加し、アイデアを製品化するためのプログラムを受講することになります。
盛況のうちに幕を閉じたモトローラのアイデアソン。国内でも再び開催されるかもしれないということですので、自分のアイデアを実現化したいと考えている方は、同社のSNSの告知情報などを見逃さずチェックしてみて下さい。