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2017/10/31 6:00

【西田宗千佳連載】レコメンドが映像産業を「データベースビジネス」に変えた

「週刊GetNavi」Vol.60-2

↑シャープ「AQUOS LC-55US5」
↑レコメンド機能「COCORO VISION」を搭載したシャープ「AQUOS LC-55US5」

 

映像や音楽の配信において、「レコメンド」は非常に重要な技術になっている。なぜなら、大量のコンテンツに出会えるようになった現在、レコメンドがなければ人々は「選ぶことに疲れて」しまうからだ。レコメンドはまだそんなに賢くはなく、映画好き・音楽好きの友人ほどに全面的な信頼を置くことは難しい存在ではあるものの、レコメンドがなくては、毎日のように追加されるコンテンツのなかから、好みのものを見つけるのは難しい。

 

レコメンド技術の基本となっているのは、「特定の属性のものを見た人が、それとは別になにを見ているのか、逆になにを見ていないのか」ということ。技術的には「協調フィルタリング」と呼ばれるものである。アマゾンの「これを買った方はこれを買っています」という奴でも同じ技術が使われているので、みなさんにも非常に身近なものである。

 

だが、この技術には大きな落とし穴がある。

 

きちんと機能するには、驚くほど多くの情報が必要なのだ。

 

現在、テレビのチャンネルは、衛星放送を含めると100近くある。主要な地上波とBS・CSだけでも20から30というところだろうか。そこに毎時間放送があるわけだから、1日の放送番組数は主なチャンネルで400くらい。1週間になおすと2000以上の番組があることになる。このなかから自分が好きな番組を見つけるのは難しく、だからレコメンドを……ということになるのだが、技術者の話では「この程度の数では、適切なレコメンドにはまったく足りない」のだそうだ。協調フィルタリングによるレコメンドが適切に働くには、番組の属性が多数必要になる。「スポーツ」「ドラマ」といった単純なジャンルと出演者情報などではまるで足りない。

 

そのためネット配信では、レコメンドのために、利用者には見えない独自の「属性タグ」が番組に付加されている。例えば「作品の作られた年代」「ハッピーエンドか否か」「都会派の作品か」「バイオレンス度」といった情報が、各番組に数十種類設定され、その情報を掛け合わせることで、ようやくレコメンデーションを成立させている。

 

すなわち、映像配信ビジネスは映像を供給するビジネスであると同時に、映像をデータベース化して管理するビジネスでもあるのだ。使っているだけでは気づくことはないが、こうしたデータ整備こそがサービスの質を大きく左右しており、実は「データベース産業」の意味合いが強い。そのため、テレビで放送のレコメンドをするためにも、各社は独自のデータベース構築を進めている。

 

では、水面下でどこがどんな動きをしているのか? 次回のVol.60-3以降ではそのあたりを解説していこう。

 

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