デジタル
2018/4/4 15:00

【西田宗千佳連載】「デジタルコミックが紙を抜いた」インパクトは本物か

「週刊GetNavi」Vol.65-1

日本の電子書籍市場は当初からコミックが中心

2月26日、出版科学研究所は2017年のコミック市場規模を発表した。その発表のなかで注目を集めたのが、コミック単行本の売上に関して、電子版(1711億円)が紙の書籍(1666億円)を上回った、というニュースだ。

 

このことは、出版業界を超え、世間一般に広くインパクトをもって受け止められた。「電子書籍なんてまだまだ」と思っている人が多いなかで、紙を超えた、という数字にはやはり驚きがある。実のところ、電子書籍を長く取材している筆者にとっても、少々意外な出来事であった。

 

日本の電子書籍の市場は、2011年頃からプラットフォーマーが増えはじめ、2012年秋に、アマゾンが日本でも「Kindle」をスタートしたことで、本格的に加速しはじめた。市場を牽引している。日本の場合、もともと出版市場を牽引しているのは雑誌とコミックであり、特にコミック市場は質・量ともに、世界に類を見ないほど充実したものになっている。だから、コミックが電子書籍市場を牽引するのも当然のことだ。

 

インプレス総合研究所が2017年7月に公開した調査によれば、2016年度の日本の電子書籍市場は1976億円で、そのうち8割をコミックが占める。だから、出版科学研究所による調査の2017年のデジタルコミック市場が1711億円、という数字は、多少大きめではあるが、不可能なものではない。

 

電子版のコミックの好調は「まとめ買い」が支える

このような好調さの背景には、電子書籍版のコミックを出版するのが珍しいものではなくなったことがある。いまだ紙でしか発売されていないタイトルももちろんあるが、メジャーなタイトルは、紙版の発売と同時(あるいは若干の遅れ)で電子書籍版が登場するようになっている。また、過去の作品であっても、販売が見込める人気作は、随時電子書籍化されている。

 

また、コミック特有の動きでり、市場の牽引に寄与しているのが「まとめ買い」だ。コミックは小説と異なり、人気作品の巻数が多い。だが、紙版だと、20巻・50巻・100巻を超えるような人気作品を、歯抜けなくすべて在庫している書店は非常に少なく、さらに購入後、自宅に置こうとすると場所の制約が大きい。これが電子書籍であれば、そうした問題はないのだ。そのため、電子書籍ストアはヒット作の「まとめ買い」キャンペーンを積極的にしかけている。ストアを工夫して1クリックで全巻が買えるようにしたり、全巻を買うと割引やポイント還元などの形でおトクになるようにしたり、といった施策を用意して、大人がコミックをまとめ買いしやすい環境を作っているのである。

 

こうした事情もあり、デジタルコミック市場では過去作と新作の販売割合が、紙の市場とは大きく異なる……と言われている。正確な統計はないが、筆者が電子書籍ストアから聞いている話だと、新作2割対過去作8割、という状況だそうだ。紙では新作のほうが圧倒的に売れるため、様相はまったく違う。やはり電子書籍の強みは「売れるタイトルの多彩さ」なのだ。

 

では、なぜこのような違いがあるのだろうか? そのあたりのことは次回のVol.65-2以降で解説する。

 

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