デジタル
2018/4/12 17:00

障がい者支援の最前線――アメリカで見た最先端テクノロジーと社会の仕組みに思うこと

CSUN2018(障がい者のための支援技術会議)は、主に視覚と聴覚の障がいを扱った展示会兼講座発表の場だ。第33回目となる今年は、アメリカはサン・ディエゴで開催。展示会場には世界中から障がい者向けの商品やサービスが並んだ。

 

音で、振動で、レーザーで――視覚障がい者の自立を支援するさまざまなアプローチ

会場には、盲導犬を連れた方や、白杖を持った方が、来場者の半数近くいた。1人で歩いている方も多く、世界では障がい者の自立がかなり進んでいることを実感する。白杖を使った歩行訓練を受けなければ、視覚障がい者が自立歩行をするのは難しいというが、その意識はアメリカではかなり高そうだ。

実際に、視覚障がい者の自立歩行を補助する商品がいくつもあった。

 

その1つが、RightHear(https://www.right-hear.com/)だ。施設の要所要所に卵ほどの大きさの機器を取り付ける。使用者はスマホやiPhoneにアプリを入れるだけだ。すると自分がいまどこにいて、その先に何があるのかをソフトが音声で説明してくれる。同行者がいなくても、1人で不自由なく歩くことを目的として作られたという。

 

予想もつかない方法でサポートを行う製品もあった。

 

BrainPort V100(https://www.wicab.com/)は、ヘッドバンドを装着し、四角い板を口に入れる。するとカメラに映った映像の情報が振動によって舌に伝わるという。暗い・明るいを検知することで、自分が歩くべき道や、取るべきものが認識できるとのこと。10時間ほどの訓練で使えるようになるそうだ。

 

サンプル映像では、使用者がトラックを走ったり、地面に置いてあるボールを蹴ったりと、かなりアクティブに動いていた。商品を口に含まなければいけないため、会場で試すことはできなかったこともあり、画期的ではあるが想像を超えたところにある製品だ。

また、メガネ型の映像装置がいくつか発表されていた。これらは、カメラが捉えた映像をメガネで視るというもの。その際、ズームイン・ズームアウトや色調変更、明暗などが自在に変更できる。

特に興味深かったのは、ロービジョン(全盲ではないが、見えにくさによって日常生活に不自由さを感じている人)の方のための商品を多数開発しているZOOMAX(http://www.zoomax.co/)の新作だ。メガネタイプのカメラを装着するところはほかの商品と変わらない。しかし特筆すべきは視野欠損のある方のために、画像をカスタマイズできるところ。例えば中央が欠損しているなら、その部分にある画像を別の箇所に表示することができる。個人的には画像はほかのどの商品よりもクリアに感じた。メガネはもはや近視や遠視を矯正するだけのものではないようだ。

また、QD LASER(http://www.qdlaser.com/)のRETISSA Displayは、網膜に直接レーザーを当てて画像を映すというもの。そう聞くと恐ろしげだが、身体にはまったく問題がないという。装着してみると、目の前に見える風景の手前にデジタルの画像が現れ、SFで観る世界のようだ。このシステムは網膜が生きていれば使えるとのことで、白内障など角膜の病気で視野が濁っている人に効果が高いという。

Googleからは、肢体障がいの方に向けたスプーンが発表された。マヒなどで手が震えたり、思うように手が動かせない人でも、簡単にスプーンでものがすくえる。手が震えていてもさじの部分には振動が伝わりにくく、またすくったあとにどんなに傾けても、さじの部分は水平を保っているため、すくったものがこぼれない。

こちらは動画で見ていただくとわかりやすいかもしれない。

 

アメリカで感じた日本との違いと障がい者の自立を促す社会の仕組み

冒頭でも書いたが、驚いたのは、会場には1人で歩いている視覚障がい者がたくさんいたこと。白杖をついている人、盲導犬を連れている人……気を抜いていると白杖や盲導犬に足が当たってしまいそうだった。歩きながら、周囲に意識をめぐらさずにはいられない。

 

しかし考えてみれば、これは当たり前のことだ。日本では視覚障がい者からも車いすユーザーからも「歩きスマホが恐い」と聞く。それだけ私たちは普段から彼らに気を遣わせているのだ。

 

「ポケモンGO」が流行ったとき、歩きスマホが特に問題視されたが、その際知人が「車いすの人なんて周りにいないし」と言っていたことが印象的だった。こうした意識がますます彼らを外出させにくくしていることに気づくべきだろう。

 

新橋駅で、エレベータを探して駅員に道を尋ねている外国人車いすユーザーを見かけたことがある。多くの車いすユーザーは、外出前に行き先の経路をチェックし、エレベータの場所や段差の有無を調べるという。日本の街は、まだまだ「誰もがフラリと出かけて楽しめる」場所ではないのだ。

 

一方、今回訪れたアメリカでは、エレベータの場所を表示してあるなど、小さな気遣いがあちこちに見られた。例えば、ミッドウェイミュージアム(https://www.midway.org/)は、航空母艦であるにもかかわらず、船内のほとんどすべての場所で車いすが利用できた。アクセスできないエリアについては展示スペースで体験が可能だ。手話と音声解説ツアーも対応している。こうした配慮は法律で定められているという。同国において障がい者は「守るべきもの」ではなく、彼らの自立を促す社会の仕組みが整っていることを強く感じる旅だった。

 

2020年に東京パラリンピックがやってくる。海外からさまざまな障がいのある方が来日するだろう。そのときに、世界に恥じないユニバーサルなインフラや意識を持っていることを私たちはアピールすることができるのだろうか。まだまだ道のりは遠いように思う。

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