デジタル
2018/5/24 18:30

「エドテック」で変わる勉強法――大学受験の地方格差解消に高まる期待

テクノロジーの進化によって環境が目まぐるしく変化する昨今、教育業界もその例外ではありません。今回は「エドテック(EdTech)」をキーワードに、注目を集める新たな教育サービスについて、自らもオンライン家庭教師事業を手掛ける株式会社シンドバッド・インターナショナル代表取締役社長、山田博史さんに解説してもらいました。

 

【この方に聞きました!】

株式会社シンドバッド・インターナショナル
代表取締役社長
山田博史さん

 

大学受験における地域格差をなくしていく可能性を秘めている

「エドテック(EdTech)」というキーワードを聞いたことがあるだろうか? 話題の「フィンテック(Fintech)」とも似ているが、エドテックは金融ではなく、教育(エデュケーション)とテクノロジーを掛け合わせた言葉だ。いま、教育、受験勉強の場においてエドテックの活用が広がっている。

 

たとえば、インターネットを利用してパソコンやスマートフォン上で、授業を受けたり、個人指導を受けることができる。これでまでの塾通いや、紙による通信教育といったスタイルとは異なり、自宅にいながら塾を体験できるなど、新たな勉強法が浸透してきている。大学受験では、地方の高校が不利と言われ続けてきたが、エドテックは、その格差をなくしていく可能性も秘めている。

 

今春、都市部の大学合格者たちに話を聞く機会があった。合格した地方出身の現役生や浪人生たちから出てきた受験時代の悩みが、「都市部の受験生たちとの情報格差が大きい。こんなに情報量が違うとは思わなかった」「地元にはそもそも塾が少ない、選択肢がない」「難関大学を受験するにも、学校の先生があまり指導し慣れていない」といったものだった。

 

東京にいれば、ある程度の高校であれば、学校の大学受験の指導は行き届いているだろう。また、学校以外にも、大手の塾や予備校が無数にあり、個人塾、東大や医学部の専門塾まである。そのなかから自分にあった指導をしてくれる塾、あるいは進学希望先に合わせて選ぶことができる。しかし、地方にいる受験生はそうもいかない。そもそも塾も少ない。学校の先生頼みになってしまうが、それだけではどうも心もとない。

 

そんな現状を変えつつあるのがエドテックだ。エドテックを活用した、新たな教育サービスが続々と登場し、受験生たちの助けとなっている。

 

スマホ普及やYouTubeが追い風に!? エドテック事例集

エドテックの普及が急速に広がっている理由は、やはりスマートフォンだろう。中高生のスマホ普及率が高くなったことで、エドテックが身近になった。

 

エドテックを利用した教育で1番最初に話題になったのは、YouTubeでの授業動画の投稿だろう。2010年ごろから授業動画が増え始めた。個人で授業動画を投稿し、評判が良かった一部講師は、ある意味人気“ユーチューバー”となっている。また、代々木ゼミナールや東進ハイスクールなどの塾もYouTube内でチャンネルを持ち、無料で授業動画を見ることができる。

 

スマホを利用した家庭教師サービス「manabo(マナボ)」では、スマホのカメラでわからない箇所や問題を撮影して送信すると、東京大学、早稲田大学、慶應大学といった大学の学生講師が約3分でアドバイスを返してくれる。公式ホームページによると、約3000名の講師が在籍し、24時間対応できるという。月額3000円(税抜)で毎月60分まで何回も質問ができる。

 

講師の無料変更も可能で、自分にあった先生を選びやすいかもしれない。60分を使い切った場合は、60分追加購入することで利用できる。じっくり教えてもらうというよりは、ちょっとしたヒント、解決法を知りたいときに使うのにちょうど良いかもしれない。

 

教育サービス大手もエドテックに取り組む。通信教育でおなじみのZ会は「Z会オンライン個別指導」を展開する。難関大に合格したZ会のOB・OGの大学生講師を採用し、1対1でオンライン個別指導が受けられる。Z会の通信添削教材や映像講座と組み合わせて受講するスタイルが特徴だ。

 

例えば、Z会の通信教育と組み合わせたコース「サイクルズ」、Z会の映像講座とセットの「Z会の映像サポートコース」、大学入試直前の志望校対策をサポートする「過去問特訓コース」など様々なコースを用意できるのも大手ならでは。事前にZ会の教材を解いたり映像授業を受講したうえで、わからないところ、わかったつもりで終わっているところを、オンラインの個別指導で講師が確認して教えてくれる。Z会の資源をうまく活用したサービスだ。

 

最後に、僭越ながら弊社の取り組み「私大受験専門・家庭教師メガスタディオンライン」を紹介する。エドテックを思う存分活用した、より本格的な家庭教師サービスで、学生講師ではなく、プロの家庭教師がインターネットを介して指導してくれる。講師採用率が3%と厳選され、早慶上智MARCHなど難関大の合格実績豊富な講師を紹介することができる。

 

メガスタディオンライン最大の特徴は、パソコンに専用カメラを接続することで、講師が「生徒の顔」と「問題を解く手元」の両方同時に見られるシステムを利用していることだ。やはり、直接対面指導と違って、インターネットでの指導は、生徒の表情がわからず、本当に理解しているのかどうか講師が掴みづらい。この2画面同時システムを介すことで、生徒の理解度を把握しやすくなる。特に、地方に住んでいる受験生にとっては、首都圏の経験豊富な講師の授業を受けられるというメリットがあるだろう。

 

【番外編】アメリカで急成長中のエドテック

最後に番外編として、海外の事例で、アメリカで急成長中のオンラインレッスンサービス「Varsity Tutors(米ミズーリ州セントルイス)」を紹介する。Facebook社のCEOマーク・ザッカーバーグが設立した財団から5000万ドル(約53億円)投資を受けたことでも話題となり、注目を集めている。

 

アメリカでもオンラインレッスンサービスは利用者が急増中で、特に日本のセンター試験に相当する「SAT」の対策コースを提供するサービスは人気となっている。

 

このVarsity Tutorsの特徴は、下記のとおりだ。

・米国最大級のオンライン個人指導のマッチングプラットフォーム
・最短で15秒で自分にぴったりの教師が見つけられる
・約4万人の講師が登録
・1000以上のコースを提供
・プログラミングからアカデミックな学問領域まで幅広くカバー
・授業料は1時間あたり約50ドル(6000円前後)

 

さらに、大型調達資金を実現した Varsity Tutorsは、2017年に欧州最大の個人指導プラットフォームの「First Tutors」を傘下に収めるなど、海外展開も積極的に進めている。調査企業「Global Industry Analysts」では、世界の個人レッスン産業は2020年までに2000億ドル市場(約21兆円)に成長すると予測している。(ちなみに世界の教育産業の市場規模は約400兆円)。

 

この様に、受験生に向けた多種多様なエドテックサービスが世界で広がっている。日本でも、地方だから大学受験で不利という時代は、今や昔というふうになっていく可能性があると思う。