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2018/7/26 19:15

【西田宗千佳連載】「画質」「設定」から見えるスマホメーカーの方向性

「週刊GetNavi」Vol.68-4

スマートフォンにおいて、カメラの画質は商品を差別化する大きな要因だ。とはいえ、センサーの活用方法やソフトウエアのチューニングは各社まちまちであり、スペックだけでは語りづらいのが今の状況である。

 

高画質カメラ、という意味で話題の中心にいるファーウェイの「P20 Pro」は、確かに優れた画質を実現している。特に静止画で、風景や食事を撮影したときの「印象深さ」はトップクラスだ。その理由は2つある。静止画で彩度を撮影するために使っているメインセンサーが1/1.7インチと一般的なスマホ用カメラより大きく、画像処理も「しっかりかける」のが基本だからだ。大きなセンサーは光量の少ない、暗いシーンでの撮影に向いている。さらに、いわゆる「AI処理」として搭載されている機能も優秀で、シーンを的確に分類してくれる。最適な処理を重ねていくことができ、これも画質向上に一役買っている。

↑ファーウェイ「P20 Pro」

 

一方で、動画は静止画ほど暗い場所に強いわけではない。画質が悪いというわけではないが、静止画で実現されている「印象的で精彩な絵作り」とはちょっと違ってしまう。

 

また、静止画もAIによるシーン検出を使うと、どうにも「印象的になりすぎる」のが気にかかる。確かに印象的な夕焼けや青空が撮れるのだが、実景はそこまでいつも印象的なわけではない。ガッツリ&ハッキリとした補正のため、「ちょっとこれ、違う」と感じる写真になることも多い。マニュアル設定を駆使して撮影すれば、カメラの素性の良さが引き出せるのだが、そうした作業は多くの人にとって荷が重いと感じるだろう。

 

iPhoneはそれと対照的である。カメラのセッティングがほとんど必要なく、誰が撮っても同じような写真になる。一方で、無理に印象的な加工を施すことは少なく、P20 Proに比べておとなしい。実際には、アップルもソフトでの加工をかなりやっており、「スマホの写真らしい」派手さに強調されている。一方で、それをやりすぎないことで、万人向けの画質に仕上げているという印象がある。iPhoneのカメラアプリは極端なくらいシンプルだが、それは、「カメラの設定や操作ができる人は限られている」という判断に基づく。複雑な設定や印象的な撮影は、サードパーティ製のアプリを入れてやれば良い……という棲み分けになっている。Android端末だと「カメラの機能をすべて出せるのは自社アプリだけ」と考え、アプリを作り込むメーカーも少なくないのだが、アップルは考え方が違うのだ。

 

ソニーモバイルやシャープは、今季の差別化点を「動画」に置いた。同じ「暗さに強い」カメラでも、ファーウェイのP20 Proは静止画に、ソニーは動画に特化しており、シャープは動画・静止画を同時に最適画質で撮影できることに注力した。画質について詳細なチェックができる状況にないので、それぞれの評価は省くが、このあたりは、スマホでの動画撮影が国内で重視されつつあることを反映した動きといえそうだ。一方で、ファーウェイが「SNS映え」する写真画質になっているのは、中国を含めたアジアの「写真の好みに対するトレンド」を反映しているように思える。

 

カメラの画質にも、市場の要請やその企業が支持されやすい地域の好みが反映される。そして、時代によってもそのテイストは変わる。技術だけでなく、文化の面から「スマホのカメラ画質」を考えてみるのも面白そうだ。

 

●次回Vol.69-1は「ゲットナビ」9月号(7月24日発売)に掲載されます。

 

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