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2018/9/7 8:00

【西田宗千佳連載】成長のために「打倒PC」を鮮明化するiPad

「週刊GetNavi」Vol.70-3

2010年に登場すると、iPadはたちまち「タブレット」という市場を作り上げてしまった。紙と同じようなサイズの板を見ながら操作する、という形は、やはり非常に便利だ。

↑iPad Pro

 

だが、iPadが作り出した「タブレット」という市場は、必ずしも堅調というわけではない。マーケット調査会社IDCの集計によれば、2017年のタブレット市場は全世界で1億6350万台。これは2016年に比べ1160万台の減少となっている。IDCの調査における「タブレット」の定義は、Androidタブレットや2-in-1タイプのPCも含めたものなのだが、主に減少しているのは、Androidタブレットと2-in-1「ではない」シンプルなWindows搭載タブレットとなっている。

 

タブレット市場は2014年をピークに減少している。トップシェアであるアップルのiPadは堅調だが、Androidタブレットが、特に低価格なAmazonの「Fireタブレット」を除いて市場構築がうまくいっていない。堅調とされるiPadも、発売から4年程度で伸びが止まったわけで、「好調」というのは難しいだろう。

 

タブレットのジレンマは「閲覧用のコンピュータ」と思われてしまったことだ。文字入力をする効率ではキーボードのあるPCにかなわず、ファイル整理のしやすさやアプリ活用の自由度でもPCに劣る。タッチやカメラを生かしたアプリも多数あり、閲覧だけの機械ではないものの、その活用方法を学ぶのは面倒で、結局「閲覧だけなら簡単で便利」という点ばかり注目された。閲覧だけなら性能はさほど必要なく、新機種への買い替えも促されない。皮肉なことに、iPadという製品の完成度の高さゆえに、市場は急速に成長したものの、伸びが止まるのも早かったというわけだ。特に2012年に発売の、解像度が向上した第三世代iPad以降は完成度が高く、3年・4年と使い続ける人もいるほど。PC市場は買い替えサイクルの長期化に悩んでいるが、PC市場が20年かけて到達したところに、iPadはたったの4年でたどり着いてしまったのである。

 

そうなると、各社はタブレットの戦略を見直さざるを得なくなる。その結果、ハイエンドのAndroidタブレットはあまり出なくなり、iPadについても、小型で利幅も小さく、日本などアジア圏以外での人気が今ひとつである「iPad mini」には注力しなくなったのだ。

 

そして、2015年からアップルが採ったのは、「PC代替」としてのiPadの位置付けを明確にするという方針だった。12.9インチと大型で、「Apple Pencil」に対応した「iPad Pro」を製品化。その後、iOSも2017年登場の「iOS11」からファイル整理などの機能を拡張し、PC的な使い方が多少楽になった。

 

また、当初からiPadは教育市場を狙っていたのだが、特に2015年以降はそれを鮮明化させた。カメラやタッチを使うアプリケーションの使いやすさ、無償提供されるプログラミング学習アプリである「Swift Playgrounds」の完成度の高さなどを軸に、アピールを開始。さらに、2018年3月、iPadのベーシックモデルをApple Pencil対応にリニューアルする時には、発表会をシカゴの高校で開くほど、教育市場へのシフトを打ち出している。

 

iPadはPCとは違うものとして生まれたが、いま改めて、低価格PCや教育用PCの座を狙っているのだ。マイクロソフトがSurface Goを作ったのは、こうした変化に対応するための策といえるだろう。

 

だが、低価格PCや教育市場における台風の目はiPadでもSurface Goでもない。それがなにか? どう影響しているかについては、次回のVol.70-4で解説する。

 

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