デジタル
2016/5/9 19:00

Kindle OasisはKindleの3.5倍のお金を出す価値がある? “軽・薄・小”でお値段以上の満足度

2010~13年頃の、国内電子書籍市場の黎明機に巻き起こった「専用リーダーで読むか、汎用タブレットで読むか」というハードウェア論争。Amazonの電子ペーパー搭載リーダー「Kindle PaperWhite」(2012年9月発売)は前者の筆頭とも言える製品でした。

 

今回レビューする「Kindle Oasis」(2016年4月27日出荷開始)は、そんな「Kindle」ファミリーの最新・最上位モデル。今や第3世代目になっているKindle PaperWhiteの約3.5倍(プライム会員の場合)となる3万5980円~という強気な価格設定で良くも悪くも話題となっている製品なのですが、その実力やいかに? 価格以上の価値はあるのかを発売直後の実機で検証してみました。

 

Kindleシリーズ最上位の実力をチェック!

まず、さらっと基本性能をおさらいすると、Kindle Oasisは6.0型のモノクロ電子ペーパーディスプレイを採用した電子書籍専用リーダー。「電子ペーパー」は液晶パネルなどとは根本的に発想の異なる表示デバイスで、カラー表示ができず、暗いところでは読めず、しかも応答速度が極めて遅いという弱点があるものの、紙によく似た表示特性や驚異的な低消費電力などによって、電子書籍リーダーとの相性は抜群とされています

 

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↑Kindle Oasis

Kindle Oasisに搭載されている電子ペーパーのスペックは、昨年発売された第3世代Kindle PaperWhiteや、これまで最上位モデルという扱いだった「Kindle Voyage」と同等。6.0型×300dpiという紙に迫る高解像度で、まるで紙の書籍を読んでいるかのような錯覚を与えてくれます。

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↑画面の接写画像

なお、Kindleファミリーではほとんどのモデルで暗所利用を想定したLEDライトを内蔵しているのですが、Kindle Oasisはシリーズ最大となる10灯式を実現。Kindle Voyageの6灯式と比べて明るく、しかも均一に画面を照らしてくれます(ただしKindle Voyageに搭載されていた明るさの自動調整機能は省かれてしまいました)。

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なお、Amazon曰く、応答速度もわずかに向上しているそうなのですが、それについてはほとんど実感できず。電子ペーパーディスプレイ最大の弱点とされる強制リフレッシュ(一定ページ数を表示するたびに一瞬だけ画面が暗転する)の頻度もほとんど同じように感じられました。小説などの場合、数十ページごとに1回リフレッシュされます。

↑リフレッシュの様子
↑リフレッシュの様子。瞬間的に白黒が反転する

ほか、内蔵メモリ(4GB=一般的な小説などを最大数千冊保存可能)や、Wi-Fi、無料3G通信対応(何と月額料金不要でモバイルデータ通信を利用した書籍購入&ダウンロードが可能!)なども、基本的な機能は従来モデル(廉価モデルの「Kindle」をのぞく)と同等……あれ、約3.5倍の“価値”はどこに?

 

“軽・薄・小”にこだわった使いやすさ

実はその“価値”は表示性能以外の場所にありました。

 

まず特筆すべき点がその軽さ。もともと軽量だったKindleファミリーですが、Kindle Oasisはシリーズ最軽量の約131gを実現(編集部実測では133g)。Kindle PaperWhite(約205g)と比べて70g以上も軽いのです。一般的な文庫本(約150~180g)よりもさらに軽い。

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そして薄い。最薄部3.4mm……という表現はあまり誠実ではないように思うのですが(写真参照)、大きく膨れあがった最厚部でもわずか8.5mmというのだから驚かされます。しかも、この盛り上がった部分がグリップとなるため、非常に持ちやすいのです。重心が手のひらに近いほうにあるため、長時間持っていても全く疲れません。

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上下をひっくり返すことで右手でも左手でも持てるように工夫されていることも好印象です。内蔵センサーで向きを検知して、自動的に表示方向を切り替えてくれる点も気が利いています。

↑右手・左手どちらで持っても画面は正しく表示される(画面は画像処理しています)
↑右手・左手どちらで持っても画面は正しく表示される(画面は一部画像処理しています)

 

個人的には、一度は廃止されたページめくり用の物理ボタンが復活したことも歓迎。ここ数世代のKindleファミリーは、ページめくり時に画面を直接タッチもしくはフリックせねばならず、それが少なからず誤操作の原因になっていました。しかし、本機なら、しっかり押せるボタンで確実にページめくりが可能です。デフォルトでは、なぜか上ボタンが「次ページへ」で、下ボタンが「前ページへ」なのが気になったのですが、これは設定で変更できます。

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また、本体に標準で付属する革製カバーはマグネットで手軽に着脱できるほか(くぼみの部分にすっぽり収まるのが見事!)、ジョイント部に内蔵されたセカンダリーバッテリーで利用時間を大幅延長。本体だけでも約9週間の読書が可能(ワイヤレス接続オフで1日30分使用した場合)なのですが、カバー装着時はこれが数ヶ月にまで延長されるのです。通勤時間に読書する程度の使い方なら、年に数度充電すれば良い……これなら「充電するのが面倒」という人でもストレスなく使えるのでは?

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ただし、電子ペーパー特有の問題として、やっぱりまだまだマンガの表示には不向き。マンガの場合、1ページおきに画面の強制リフレッシュが行なわれるため、作品への没入感が大きく損なわれてしまうのです。個人的には慣れれば何とか……と思わなくもなかったのですが(絵の解像度などは充分なレベルに達しています)、こればっかりは皆さん、店頭などでご確認いただきたいですね。

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↑電子マンガのようなデータが大きいものはあまりたくさん保存できない(画面は一部画像処理しています)

 

本体内蔵メモリが4GBと小さいため、データサイズが大きなマンガ作品(1冊あたり50MB前後)の場合、せいぜい60~80冊程度でいっぱいになってしまうのも悩ましいところ。自慢の無料3G通信機能もマンガのダウンロード時には使えないので、落として、見て、消すという使い方もできません。画面表示の問題も含め、「小説」や「新書」など向けのデバイスと考えた方が良さそうです(小説作品のデータサイズは300~500KB前後なので、本体内に数千冊単位で保存できるほか、3G通信機能を使って気軽に適宜ダウンロードすることもできます)。

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既にKindleで文学作品メインの電子書籍生活を楽しんでいる人はもちろん、スマホや小型タブレットで電子書籍を読んでいるいう人に一押しのKindle Oasis。電子ペーパー特有の弱点は全く気にならず、美点だけをそのまま甘受することができました。特にこの軽さは、一度慣れてしまうと元のデバイスには戻れなくなってしまうほど。毎日使うなら、この価格差も決して高いとは思わないはずですよ!

 

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Kindle Oasis
Amazon.co.jp価格:3万5980円~

6.0型電子ペーパーディスプレイを搭載した電子書籍リーダー。電子書店「Kindle」で購入した電子書籍を閲覧できる。スタンダードな「Wi-Fi」モデルのほか、NTTドコモの3G通信網を利用してモバイル環境で書籍購入&ダウンロードが可能な「Wi-Fi + 無料3G」モデル(Amazon.co.jp価格:4万1190円~)がラインナップされている。

 

【SPEC】
ディスプレイ:6.0型モノクロ電子ペーパー(300ppi)
バッテリー駆動時間:約9週間(同梱バッテリー内蔵カバー使用時:約数ヶ月)
サイズ:W122×H143×D3.4~8.5mm
重量:約131g

 

【URL】
Kindle Oasis http://www.amazon.co.jp/dp/B010EJWHUC