TE Connectivity(タイコ エレクトロニクス ジャパン)という会社をご存知ですか? 先日行われた、日本最大規模のIT・エレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN 2018」にて、非常にユニークな展示を開いていました。電気自動車に水中ドローンにフライパン…聞いただけでワクワクしませんか?
TE社は「TE Connectivity」というブランドで、ケーブルを接続する「コネクター」や、情報を取得する部品「センサー」といった部品を手がけるグローバル企業。1957年に日本支社を設置し、60年以上の歴史を持つ老舗企業でもあります。
水に浮く? タイに進出する小型自動車
「FOMM ONE」は、ベンチャー企業のFOMM(フォム)が製造する電気自動車。4人乗りの電気自動車で世界最小クラスという、軽自動車よりも一回り小さいコンパクトモデルです。面白いのはこの自動車、車体のフレームがボートのようになっていて、水に浮いたまま動きまわれます(あくまで緊急時の機能となっていて、動作保証はありません)。
日本で設計し、東南アジアのタイで生産・発売される予定です。将来的には自動運転に対応し、タクシーのように気軽に呼べる乗り物として展開することも検討しているとか。
さて、「FOMM ONE」に使われているTEの部品は、車両前面のカバーの中にあります。電気自動車に欠かせない、給電ケーブルのコネクターです。このコネクターは電気のコンセントのように、国によって使われている形状が違います。FOMM ONEではタイ政府の基準を満たすコネクターを探していたフォム社が、TE社に相談したことがきっかけで採用につながったそう。
実はTE社は自動車に関わるさまざまなコネクターを作っていて、世界中のメーカーに供給しています。まさに縁の下の力持ちですね。
水の中を調べるドローン
ドローンというと、空をブーンと飛んで映像を撮る無人ヘリコプターを思い浮かべますが、中国Chansing Innovation社のドローン「グラディウス ミニ」が活動するのは空ではなく水の中。海や湖の中に潜って探索する水中探査ドローンです。
遠隔操作で動くのは、空のドローンと同じ。水の中を上下左右自在に動きまわり、4Kカメラで映像を送ります。空を飛ぶドローンは、人が立ち入れないダムや橋などに高所を調べる用途で活用されています。水中を動くドローンがあれば、たとえば橋脚の検査などに使えそうですね。グラディウス ミニは個人向けにも16万8000円で販売されています。水中の観察やダイビングの様子の記録に、1台あればいろいろ楽しめそうです。
そんなグラディウス ミニの中で使われているTE社の部品は、今いる地点の深さを測る水深計です。水深は水圧の計測で割り出せますが、実は水の温度によってバラつきが出てしまいます。TE社の水圧計は、温度計も使ってバラつきを補正する高機能さが特徴だそうです。
これはアイデア商品、温度が分かるフライパン
「中火」と「強火」の違いって分かりますか? 筆者は自炊するときは「とにかく熱くなればいいよね!」とばかりに熱を浴びせて、よく料理を焦がしています。料理に慣れた人向けのレシピほど、火加減の指示は詳しく書かれているもの。でもとろ火、弱火、中火、強火って一体ナニモノ? 火加減がもう少し分かりやすくなれば……。
「じゃあ、フライパンに温度計つけちゃえばいいんじゃない?」というシンプルな発想から誕生したのが、ビタクラフトの「テンプパン(TempPan)」。その名の通り、温度(temperature)が分かるフライパンです。柄の部分のボタンをぽちっと押せば、温度が表示されます。なるほど確かに、温度で書いてあれば迷わないし、調整も簡単。アイデア商品ですね。
ここまで記事を読んだ方なら想像がつくかと思いますが、テンプパンに使われている温度センサーはTE社の製品。開発に関わったTE社の方に説明によると、均一の温度に加熱できるフライパンを持つビタクラフトだからこそ実現できたとのこと 。近未来には、レシピにあわせてフライパンの温度を自動でコントロールするクッキングヒーターの開発も検討されているそうです。
コネクターやセンサーは1つ1つは小さく、地味な部品にも思えますが、さまざまな機器にかかせないもの。スマートフォンやパソコンから、冷蔵庫や洗濯機といった家電、クルマ、はては産業機器まで、さまざまな分野で使われています。そんなコネクターやセンサーで大きなシェアを持つTE社が1年間で製造する製品数はなんと120億。この記事を表示しているあなたのパソコンやスマホにも使われているかもしれませんね。
ふだんの生活では目にとめてもあまり気にしない「コネクター」に、そもそも目にする機会も少ない「センサー」ですが、そうした部品の積み重ねで作られた製品があってこそ、ふだんの生活が成り立っている……。TE社の展示はそうしたことを考えさせられる奥が深い内容でした。