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2016/6/3 9:08

【本日スタート】ピース・又吉 原作ドラマ「火花」は芸人たちの切なすぎる舞台裏を描いた傑作!

ピース・又吉直樹原作のあの芥川賞受賞作「火花」がNetflixにより初ドラマ化され、6月3日より全世界190か国で全10話が一斉配信されます。日本独自制作のオリジナルドラマが全世界一斉配信されるのはNetflix初の試み。今回は、その話題作の後半となる第6話から第10話までを業界最速!? レビューとしてお届けします!

※:本記事は2016年5月14日に掲載した内容を再構成したものです。

 

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前半のレビューはコチラ
ピース・又吉 原作の話題ドラマ「火花」を超速レビュー!

 

売れ出したスパークスの苦労に若き日のピースの姿が重なる

後半に入り、主人公・徳永(林遣都)と、先輩芸人・神谷(波岡一喜)の人生はどんどん逆方向に動いていきます。神谷は恋人・真樹(門脇麦)と別れ、借金まみれになり、芸風も「マニア受け」を通り越してどんどんカルトに。かたや徳永のコンビ・スパークスは、ラジオやテレビのゲストに呼ばれるようになりソロライブは満席になるほど人気が上昇していきます。

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↑先輩芸人・神谷(波岡一喜)と徳永(林遣都) (C)2016YDクリエイション

 

でもその人気は、自分らしさを殺した結果得られたものと知っているので、何かを埋めるように徳永は神谷に会いに行くようになります。主催ライブの打ち上げでも、大事なプロデューサーとの食事会をブッちぎって……。この時、一番ウケていた”恋に堕ちたことがわからないボケに「それは恋やろ!」とツッコむ”というネタと2人がリンクして切ないです。誰にも止められないのが恋というもの。でも、恋はいつか終わるもの。

 

このあたり、現実でいえば2007年頃になりますが、このころテレビでは「エンタの神様」や「爆笑レッドカーペット」が人気となり、短い持ち時間のなか、一発ギャグや強烈なキャラクターで勝負せざるをえなくなった、漫才芸人には不遇な時代。お笑い番組のプロデューサーに、“売れるため”だけのアドバイスを受ける徳永の張り付いたような笑顔に、当時、渦中にいた又吉さんもこうだったのかなぁ? とつい邪推をしてしまいます。

 

いわゆるリアクション芸人がどんどん売れていくなか、ネタとしゃべくりが持ち味のスパークスは伸び悩みます。プロデューサーの「(おもしろいけど)地味なんだよね〜」という何気ない一言に心を削られていく毎日。筆者は、「お笑いをつまんなくしたのはお前らテレビ屋じゃん!」と心の中で叫んでしまいそうになりながら、むかし見たテレビ番組のワンシーンを思い出していました。それは、主婦タレントにダメ出しされながら、食品の「詰め放題」に挑戦するスクールジャージ姿のピースの綾部さんと、”やらされている感”120%の又吉さん……。上記の場面がやたら心に沁みたのは、きっとそういうピースの2人の姿が、劇中のスパークスの2人と重なってしまったからでしょう。

 

売れない芸人の舞台裏の切なさ

“恋”の終わりは、神谷がブレ始めたことで訪れます。売れたいがために客に迎合してしまったスパークスとは対象的に、我を通し、見事に散っていったあの狂気が神谷に感じられなくなっていたのです。それどころか、弟子である徳永をマネた髪型と服装をし、スパークスの漫才にダメ出しもしてくれないなんて……。そんな師匠の姿に徳永の心が折れていく様子を、林遣都のアップを固定カメラで捉えた長回しシーンは胸に刺さります。この後にも胸が痛くなる長回しが2回ほど出てきますが、それがどれも切ない!

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↑徳永と相方・山下(好井まさお) (C)2016YDクリエイション

結局、スパークスはブレイクできないまま結成10年目を迎えるのですが、ある日、相方・山下の彼女の妊娠が発覚。これを機にスパークスは解散し、2人ともお笑い業界から足を洗うことを決めます。スパークスと山下の彼女の3人で、線路脇を歩きながら思い出話代わりにネタをやるシーンと、解散ライブの本当にラストの漫才シーンが前述のように長回しで撮られていて、なんかもう、ひたすらつらい……でも、目をそらすことはできません。だって、ここまで8時間もかけてこのコンビを見守ってきたんだから。時間をかけてじっくり培った思いを、静かに、深いところからゆさぶられるなんて、2時間程度の映画ではできない贅沢な味わい方ではないでしょうか。同時に、一気見できるオンラインストリーミングサービスのドラマならではの醍醐味でもあります。

 

芸人をあきらめた者たちへのレクイエム

解散を見届けたように神谷も姿を消します。そして1年が経過。芸能界から足を洗い、すっかり不動産屋の営業マンが板についた徳永の前に、突然神谷が現れるのです。常軌を逸した「仕込み」をして……。呆然としつつも、笑いとコンプライアンスについて熱弁をふるううちに、徳永にあの頃の感覚が蘇ってきます。あの、熱烈に恋していたクレージーな神谷が戻ってきた!?

 

原作を実写化する上で最も危惧されていたであろう「○○な体になってしまった神谷」も、滑稽かつ哀愁漂う絵面でちゃんと見せてくれています。ここも、地上波ドラマでは難しいシーンだったでしょう。

 

ラストはドローン撮影で、どんどん引きになり、徳永と神谷が再び熱く語り合う部屋の窓が小さな光の点に……という、いわゆる“神の視点”になります。物語の冒頭、弟子と師匠の契りを交わした居酒屋で、店員に「観光ですか?」と訊かれて反射的にボケた神谷の「土地の神です」という言葉を思い起こさせるエンディング。この物語は、又吉さんの“祈り”のようなものだったのかもしれません。芸に真摯に向き合う者たちが、それを司る神にちゃんと愛されますようにと……。

 

地上波ドラマでも真似できないほど丁寧に作り込まれた映画のような映像と、豪華なキャストが織りなす青春絵巻は一見の価値あり! この夏の最大注目作品になること間違いなしの名作に仕上がっています。この作品のためだけにNetflixに加入する価値はありますので、配信が開始されたら、ぜひ見てみて下さい!

 

【キャスト】
林 遣都/ 波岡一喜
門脇 麦/好井まさお(井下好井)/村田秀亮(とろサーモン)/菜葉菜/山本 彩(NMB48/AKB48)/徳永えり/渡辺大知/高橋メアリージュン /渡辺 哲/忍成修吾/徳井 優/温水洋一/嶋田久作/大久保たもつ(ザ☆忍者)/橋本 稜、俵山 峻(スクールゾーン)/西村真二、きょん(ラフレクラン)/染谷将太/田口トモロヲ/小林 薫

 

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【URL】

Netflix「花火」公式ページ http://www.hibana-netflix.jp/