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2018/11/7 7:00

【西田宗千佳連載】「AQUOS zero」はなぜ「軽さ」をアピールするのか

「週刊GetNavi」Vol.72-3

本誌の読者のみなさんなら、「普及価格帯の機種もいいけれど、スマホの華はやっぱりハイエンド」と考える人も多いのではないだろうか。

 

現在、スマートフォンのハイエンド機種では、ディスプレイに有機EL(OLED)を使うのがトレンドになっている。シャープもそれに倣い、今期のフラッグシップモデル「AQUOS zero」では、ディスプレイにOLEDを採用した。シャープといえば、なんといっても「液晶のシャープ」というイメージが強い。それなのにOLEDを採用したことは、少々意外にも思える。

↑AQUOS zero

 

だが、やはりそこは「ディスプレイ製造技術」をウリにする会社。他社のOLEDとはちょっと違ったものになっているのだ。

 

まず、AQUOS zeroで使われているOLEDは、他社からの供給ではない。現状多くの企業は、サムスンかLGのどちらか(もしくは両方)からOLEDの供給を受けてスマホを作っているのだが、シャープは自社の国内工場で生産したOLEDを使っている。品質面で顕著な差はないようだが、逆に言えば「初物」で他社と同じような品質になっているわけで、それだけでも十分な健闘だといえる。

 

一方で、AQUOS zeroは、OLEDを使いつつ、「OLEDが美しい」ことをあまり強調していない。OLEDはたしかにコントラストと色域に優れているのだが、スマートフォンという用途では、その「画質」がさほど生きてこない。液晶も十分に高画質になっているので、単純に「画質」といっても通じづらいのだ。

 

そこでAQUOS zeroは一計を案じた。アピール点を「軽さ」に振ったのだ。AQUOS zeroは、本体質量が「暫定値」という条件付きながら、「約146g」と非常に軽い。iPhone XSが「177g」だから、かなりの差だ。軽く作るために、ボディはアルミでなく、マグネシウム合金とアラミド繊維で作られている。

 

なぜ軽さをアピールしたか? それは、OLEDと液晶の違いが、画質よりも「軽さと薄さ」にあるからだ。

 

液晶は意外とパーツの多いデバイスだ。仕組み上、液晶そのものに加え、バックライトとその光を広げる導光板、偏光フィルターなどをセットにしないと「ディスプレイ」にならない。しかしOLEDはパネルが自ら発光するため、バックライト・導光板・偏光フィルターが不要だ。その分、軽く・薄くするのが簡単なのである。そして、その軽さをよりアピールするために、ボディの素材も工夫した。そうしたほうが、他社のスマホとの重量差が大きくなるからである。違いをアピールしやすくする、なかなか巧みな商品企画である。

 

一方、こうした作りであることにはリスクもある。「初物」であるシャープのOLEDは、他社ほど安価に、一気に量産できる状態とは思えない。また、アラミド繊維を使ったバックパネルは、ガラスや通常の樹脂を使うバックパネルに比べ、生産性が悪い。こちらも「量」を作るには不利である。

 

シャープ側は「生産量に問題はない」としているものの、そもそもAQUOSシリーズに、世界的に人気の機種……例えばiPhoneやGalaxyほど大量のニーズがいきなり存在するとは思えない。今回、AQUOS zeroはソフトバンクの「専売商品」となっているが、その裏には、こうした生産性の問題がある、と思われる。

 

では、シャープは今後、スマホ事業にどう取り組んでいくのか? 全体戦略の予測は、次回のVol.72-4で解説しよう。

 

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