AI機能を徹底強化。カメラや音声認識がスゴくなる
SoCのAI対応についても、クアルコムはこれまでのSnapdragonシリーズの上位モデルを中心にこだわり続けてきました。例えばAIアシスタントの音声認識技術など、AIに関わる多くの技術には現在、クラウドサービスと併用しながら実現しているものが多くありますが、Snapdragon 855シリーズはSoCに高度なAI処理性能を持たせて「オンデバイスAI」としてできることの可能性をさらに高めています。
最新のSnapdragonのAIエンジンの中核は、いずれもクアルコムが独自に設計開発を行ったCPUの「Kryo 485」、グラフィックの処理に特化した演算処理装置であるGPUの「Adreno 640」とDSP(デジタル信号処理プロセッサ)の「Hexagon 690」というもの。それぞれの性能も強化したことで、AI関連のリアルタイム処理性能は、現行のSnapdragon 845シリーズとの比較で約3倍に高めています。
また、これまではAIやXR(クアルコムが提唱するVR/AR/MRを包括した「eXtended Reality」の略)に関わる処理を高性能なDSP「Hexagon 685」プロセッサに預ける格好としていましたが、最新のSnapdragon 855では画像処理や音声処理の中で頻繁に使うものを独立したハードウエアICに乗せて切り離すことによって、DSPに仕事をさせる領域にゆとりを持たせています。
新しいAIエンジンは1秒間に約7兆の演算処理をこなせるパフォーマンスを備えています。その実力を活かすことによって、例えばスマホの内蔵カメラで4K/HDR動画を撮りながら、被写体となる人物と背景を瞬時に判別して背景だけに“ボケ味”を加えられるポートレート撮影を、Snapdragon 855搭載のスマホは容易に実現できることになります。静止画ではよく聞くようになった機能が、4K/HDR動画でもできるようになれば、スマホによるムービー撮影がもっと楽しくなりそうです。
音声の認識処理性能も飛躍的に上がります。例えば内蔵マイクでキャプチャした音から、人間の声と周囲の騒音を機械学習によって得られたデータベースを参照しながら選り分けて、人の声だけをガンマイクで拾ったみたいにクリアに聴ける高度なノイズリダクション機能も作り込むことができます。イベントに出展されたSnapdragon 855を搭載するスマホのプロトタイプで、そのノイズキャンセリング機能と1基のマイクだけでクリアなビデオ・音声通話を可能にするデモが紹介されました。