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2019/1/26 7:00

【西田宗千佳連載】無人コンビニは「人減らし目的」だけだと失敗する!

「週刊GetNavi」Vol.75-1

買い物の楽しさ維持が無人コンビニ成功のカギ

2018年は、「無人コンビニ」が多くの場面でよく話題になっていた年だった。そんな話題の無人コンビニは、おそらく2019年中には、日本国内でも「実験」でなく実際に店舗として運営されるところが出てきそうという雲行きだ。

 

無人コンビニとは、店員の代わりに機械が買い物の状況を把握し、セルフレジなどで決済をするという店舗を指す。カメラなどで人の行動と商品の移動を把握する技術が使われているのだが、「無人」とはいうものの、店に誰もいないわけではない。単に、レジに人がいないだけ、という場合がほとんどだ。「無人コンビニ」という名前だと「省力化・人減らし」、というイメージが強くなるが、これは実際には、ちょっと違うのではないか、と思っている。

 

筆者は2018年秋に、アメリカの「無人コンビニ」の火付け役ともいえる、アマゾンのリアル店舗「Amazon GO」を何度か利用した。レジはなく、決済はすべて自動。店の中で買うものを選んだら、あとは「店を出るだけ」。持って出た商品の料金は、アマゾンのアカウントへと自動的に請求される。行列なども一切なく、なかなか新鮮な体験だった。

 

Amazon GOはレジなしなので、従業員も少なく、機械的なのだろう……、そんな風に思っていたが、実際体験したイメージは逆だった。たしかにレジはないが、店員がいないわけではない。すでに述べたように、商品の出し入れには必ず人が必要だからだ。彼らに商品の内容について説明を受けることもできる。棚にある商品を見て、買うかを悩んで「元に戻す」こともできる。買い物の体験のうち、「不快であるレジ待ちの行列だけがない」というのがAmazon GOの最大の特徴であり、ポイントなのだ。

 

無人コンビニについても、本質はここにある。人を減らすのはあくまでコンビニ側の事情であり、客が望むことではない。客が望まないことをやって、店としてうまくいくかというと、それは別の話である。一方で、たしかに店舗として省力化は必要だ。そこで、特に人手がかかって客側にとっても不快な「レジ作業」をAIなどの力を使って無人化しつつ、店としての価値や買い物の楽しさをそのまま維持するのが「無人コンビニ」、すなわち「レジなし店舗」の本質といえる。これを勘違いしたまま、非人間的な店舗を作ったところで、商売として成功しなければ意味がない。

 

中国では、本当に人のいない無人店舗もあるようだが、あまり評判が良くない。結局、コンビニの命は「品数の豊富さ」と「比較的新鮮な食材が並んでいる」こと。無人にしてしまうと商品の出し入れや陳列がうまくいかず、自動販売機のような店になり、店としての魅力が失われてしまうようだ。

 

ともあれ、Amazon GOでの買い物は実に快適だった。だが、同じことが日本で実現できないなら、日本の無人コンビニの動きは失敗してしまうのではないか、と思っている。

 

では、無人コンビニではどんな技術が使われているのか? 「本当に無人」のコンビ二には意味がないのか? そして、省力化以外のメリットはどこにあるのか? そのあたりは次回Vol.75-2で解説していきたい。

 

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