最後に服を買いに行ったのはいつだろうかーー。忙しい毎日に追われ、オシャレになど時間をかけてなどいられない。でも、着古したボロボロの服を着ていったらみっともない。こんなストーリーに共感できる人たちに、ぜひ「メチャカリ」というサービスを紹介したい。
「メチャカリ(MECHAKARI)」は、岡山県に本社を置くストライプインターナショナルが運営するファッションサブスクリプションサービスである。同名のスマートフォン向けアプリ経由で、同社ブランドの借りたい洋服を選ぶとその商品が宅配で届く。誰かが着用した商品ではなく、タグのついた新品が送られてくるのが特徴だ。
同アプリは、iOS 10.3以降またはAndroid 4.1以降の端末で利用可能。制作はチームラボが担っている。
基本となるベーシックプランの月額料金は5800円(税抜)〜で、一度に借りられる洋服は3着まで。借りる洋服には返却期限はなく、気に入ったアイテムは5%引きの価格で買取可能。借りたアイテムには、返却用の伝票が同梱されており、利用済みの洋服はクリーニング不要で返送してOKだ。レンタル回数に制限はないが、返却時に380円/1回の返却手数料が別途発生する。ちなみに支払い方法は、クレジット決済とキャリア決済を選べる。
メチャカリの事業部長に話を聞いた
サブスクリプションサービスといえば、音楽聴き放題や、動画見放題でおなじみだが、ファッション関連でもここ数年で色々なサービスが登場した。特にストライプインターナショナルの「メチャカリ」はアパレルメーカーとしては初の試みだった。
同サービスは一体どんな経緯で提供されることになったのか。そして、提供後どんな使われ方をしているのか。同社のメチャカリ部を率いる澤田昌紀さんにお話を伺った。
−−そもそも、何故アパレルメーカーが定額サービスを始めたのでしょうか?
澤田氏:アパレルの市場は縮小トレンドだと言われています。今や大部分のアパレルメーカーは売上高2500億円が限界値で、3000億円の壁があると言われます。この壁を超えているのは、ユニクロやしまむらくらい。我々が仮に1兆円の売上を目指すとした場合、既存の戦略の延長線上ではまずダメでしょう。
澤田氏:こうした背景がありつつ、2014年頃にユーズドのビジネスに挑戦しようという話があがりました。代表の石川が「TSUTAYAみたいにユーズドとレンタルと組み合わせたらどうだろう」と思いついたのがきっかけです。
その後、私がシリコンバレーにあるサブスクリプションサービスを参考にしつつ、メチャカリの元になるようなビジネスモデルを提案したら、「それ、やりなさい」って採用になったんです。まさか事業部長になるとは思ってなかったですけれど(笑)
当時は「Airbnb」や「Uber」の登場に世間が賑わっていましたよね。今もそうですが、日本でもITベンチャーが既存の業界を食ってしまうと物議を醸していました。そういうベンチャーに我々の市場規模を食われてしまうくらいなら、先に我々がそういう市場を作ってしまえというわけです。
−−どんな客層に流行らせようと想定していたのでしょうか?
澤田氏:弊社は創業25年くらい。earth music&ecology(以降「アース」)というブランドもできて今年20年を迎え、幅広い層のお客様に着ていただいております。若い頃からずっとアースのファンという方も多く、常にエントリーカスタマーとして、若年層を取り込んでいきたいと考えています。
メチャカリをリリースした当時は、スマホゲームが流行って、課金する若者も多くなった時期でした。定額制アプリで洋服が借り放題なら、大学生に響くのではないかと考えました。
−−メチャカリが2015年9月にリリースされてから3年以上が経過していますが、反響はどうでしょうか?
澤田氏:当初は、服が好きな若い子が、服を取っ替え引っ替え借りるのに使うと想定していましたが、実際は少し違いました。蓋を開けてみると、洋服が好きな子より、ファッションにあまり貪欲じゃない層にウケているとわかったんです。
例えば、20代後半で都内在住、オフィスで勤務している女性。狭いクローゼットで、ファストファッションを半年に1回買って着古したら捨てる。でも職場では偉い人の前でプレゼンテーションしたりもするような人。あとは、お母さんもそうですね。普段着はこだわらず自分の服もあまり買わないけれど、参観日だったり、ご両親に会うときにちゃんとした格好もしなくてはいけない。
澤田氏:忙しいけれど、毎日同じ服は着たくない。そういう人達に人気が出たんです。半年前の服はトレンドが過ぎているから恥ずかしくて着れない、と考える人でもそれなりのトレンドを押さえて、新品の綺麗な服を着れますからね。
こうした結果は、いい意味で想定外でしたね。既存の店舗販売とのカニバリを防げました。
−−昨年チャットボット機能が導入されましたが、どういった意図があったのでしょうか?
澤田氏:洋服が大好きな人なら、自分でコーディネート組めるんですよね。でも、我々の顧客層は言ってしまえば「忙しい人」。ファッションの知識はあるかもしれないけれど、そんなことに時間を使いたくない、あるいはそもそも知識がないという人もいるかもしれません。そういった人達に対して、洋服のコーディネートを提案するための機能を追加しました。
「オフィスカジュアル」とか「ママコーデ」とか、用途によって「こんな組み合わせはどうですか?」ってレコメンドします。割とご好評いただいていまして、100%これのおかげかどうかは判断できないのですが、同機能のリリース以降、サービスの継続率も向上しています。
動画配信サービスって、観たい動画がなければやめますよね。我々も一緒で、商品は1万種類以上あるし、在庫も何十万ていう規模で動いているけれど、欲しいアイテムを見つけてもらわなければ意味がない。お客様が欲しいと思う商品を適切にレコメンドしてあげるのが重要なんです。それもECサイトの提案みたいな淡白なものじゃなくて、人間味のあるアプローチでやりたい。「パーソナライズスタイリングAIチャットボット」という機能は、それを実現したものです。
もちろん、今が100点満点だとは思っていないので、今後はもっとこの機能の精度を高めていかなくてはいけません。
−−最後に、メチャカリの上手な使い方を教えてください。
澤田氏:実は「セットアイテム」というのがあります。1点だけど上下セットみたいなやつです。つまり実質2点ですね。実は常に何点かそういうのを用意しています。メチャカリのベーシックプランだと一度に3点までしかアイテムを借りられませんが、これらを上手く使えば実質6点まで借りられます。
あとは、冬場には定価1万円のコートなども出ていますし……夏場には浴衣も出ます。単価の高い季節ものを狙うのもお得ですよ。まぁ、うちとしては儲からないんですけどね(笑)。
−−ありがとうございました。