Appleは3月25日(米国現地時間)、クパティーノにあるスティーブ・ジョブズ・シアターにて、スペシャルイベントを開催。前夜祭的に発表されたハードウェアには触れることなく、4つの新サービスについてお披露目された形となりました。どんなサービスが発表され、どれが日本に上陸する可能性が高いのか、それぞれ細かく解説していきます。
1)電子雑誌や新聞をまとめて読める
iOSで利用できる機能は、Appleの公式サイトから確認できますが、実は日本で提供されていない機能もいくつか存在します。「News」アプリはその一つであり、オーストラリア、英国、米国でのみ提供されていました。
今回のイベントで最初に発表されたのは、このNewsアプリにおけるサブスクリプションサービス「Apple News+」です。その内容は、電子版の新聞と、複数ジャンルの電子雑誌をまるっとひとまとめにしたもの。コンテンツはiPhoneやiPadでもみやすいように整えられています。
新聞では「The Wall Street Journal」、雑誌では「Time」「Vogue」「National Geographic」などを筆頭に、300ものメディアが参加しています。
同サービスは、イベント同日から米国とカナダで提供が開始されています。また、秋には英国とオーストラリアでも提供される予定。米国での価格は、9.99ドル/月であり、最初の1か月間は無料で体験可能。ただし、残念ながら日本での提供はしばらく期待できません。
ちなみに、Appleは3月19日にメディアリテラシープログラムを提供する非営利団体を支援するとも発表しており、フェイクニュースなどに惑わされずに正しい情報を得る能力が重要だという姿勢を示しています。「News」アプリに注力している背景には、厳選したニュースを届けたいという想いもあるようです。
広告ありきや、炎上狙いのコンテンツ作りを避けるために、サブスクリプションサービスというが一つの道として存在し、「Apple News+」はそれらをまとめるプラットフォームとして提案されているという文脈が見えてきます。
2)Appleのクレジットカードが出てきた
続いて発表されたのがクレジット決済サービスの「Apple Card」です。こちらは米国で夏から提供が開始され、iOSで提供される「Wallet」アプリの中で登録することで即日利用できるようになります。イシュアーはゴールドマン・サックスで、ブランドはMastercard。非常に興味深いサービスですが、日本での提供はしばらく期待できません。
Apple Cardでは、年会費や通常支払いにおける手数料が設定されず、一般的な米国のカードよりも低い利息での貸付を目指すとされています。また、米国特有と言える支払い遅れ時のペナルティに相当する手数料も設定されません。
日単位で付与されるキャッシュバック施策「Daily Cash」もユニークです。還元率はApple PayでApple Cardを用いて支払った場合が2%であり、さらにAppleでの買い物や購読サービスを利用した場合には3%に。こうした還元は「Apple Cash」カード(個人間送金にも対応するApple Pay Cashサービスで使うApple Pay専用のキャッシュカード)に対して付与されます。こちらも日本では未提供ですね。
また、トランザクション(取引の記録)や収支がWalletアプリの中で確認できるようになります。利用履歴には店舗の名前と位置情報が関連づけられ、どこで支払ったのかを後日確認しやすくなる機能も便利。支払いをカテゴリー別に分類する家計簿としての機能も兼ね備えます。既にキャッシュレス化を心がけている人なら想像しやすいですね。つまり、「Moneytree」や「Money Forward」「Zaim」といった家計簿アプリの機能がWalletアプリで使えるわけです。
NFCによるApple Pay未対応の店舗では、チタン製の物理カードが使えます。このカードにはカード番号やセキュリティコードなどが記載されておらず、支払いごとに固有の番号が振り当てられる仕組み。ちなみにこちらを使った支払いだとDaily Cashの還元率は1%です。
Apple Pay担当のvice presidentであるJennifer Baileyは、「Apple Cardは、Apple Payの大きな成功の上に成り立っており、iPhoneの力でしか実現できない新しい体験を提供する。Apple Cardは、顧客がより良い経済的生活を送れるように設計されている」と述べています。
クレジットカード社会とも言われる米国——。物価や金利の上昇に伴いローンが長期化し、借り手が返済に追われるケースも増えているといいます。こうした背景を踏まえ、Appleとしては、Apple Cardを通じて、低い金利と支払いの透明性を実現し、消費者が完済しやすい仕組みを作ろうとしているようです。