ソフトバンクが展開するものづくりを支援するプラットフォーム「+Style(プラススタイル)」にて、Nextbit(ネクストビット)が提供するスマホ「Robin」が発売開始となりました。今回は同社のCEO、Tom Moss氏にインタビューする機会を得たので、開発の経緯や、同機に込められた想いについてお聞きしました。
Robinは米国のメーカー「Nextbit」が提供する5.2型のSIMフリー端末です。フルHDのディスプレイやSnapdragon 808を搭載し、価格は3万9980円(税込、以下同)とお手ごろ。内部ストレージと、クラウドストレージを一体化させる「クラウドファースト」という先進的なコンセプトに注目が集まっています。
――ズバリ、Robinはほかのスマホとどう違うのですか?
「単なるスマホではなく“クラウドフォン”を目指していることです。機械学習やAIを利用したアルゴリズムによって、利用頻度の少ないデータをクラウドストレージに自動的に出すようになっています。従来のサービスと異なるのは、内部メモリとクラウドが一体化していること。例えば、ゲームアプリでレベル30まで進めている場合、一度クラウドにデータを移し、その後端末に戻しても、レベル30のデータからそのまま続きを遊べるわけです。データ通信を抑えるためにデフォルトではバックアップはWi-Fi接続時に行われます」
――デザインもかわいいですよね。
「そうなんです。最近のスマホはデザインがすごく冷たくてかわいくない。2007年~2009年ごろは、比較的いろんなパターンの端末が出ていた印象がありましたが、ここ数年のスマホはみんな同じような見た目だと感じています。スマホは人生に一番深く接するものだと思うので、もうちょっと優しくて、キャラクター(性格)のあるものの方がお客様に喜んでもらえるのではないかと考えて、デザインしました。私は日本に昔からある “モノに魂が入っている”という考え方を尊敬しています。私たちはスマホが大好きで、想いを込めて作っているので、ものを大事にしている人に使っていただきたいですね」
――Robinを開発するきっかけは何だったのでしょうか?
「私は8年前、Googleジャパンの統括部長として日本および、アジアのAndroidを担当していました。一生懸命スマホの製作にかかわってきたが、“スマホがつまらない時代に入った”と感じ、もっと面白い次世代のものを作りたいと思って創業にいたりました。創業メンバーはほかに2人いますが、一人が私と同じくGoogleでAndroidに携わっていた者、もう一人がHTCでデザインを担当していた者です」
――実際に会社を設立する決断となったきっかけはありますか?
「機種変更したときに、それまで使っていたケータイのデータがなくなってしまったことがありました。その当時はまだAndroidやiOSがようやく開発され出したころで、クラウドの知識が普及していませんでした。新しいケータイを購入すると、写真を移動させなくてはいけない。アプリは移動さえできない。いろいろ面倒くさいところがあったのです。当時、OSレベルでクラウドを利用しているスマホはありませんでした。AndroidもiOSも2005年くらいからベースは変化していなかった。それに気づいて、“我々ならもっと良いものが作れるはずだ”と希望を抱きました」
――Robinの開発で苦労された点はありますか?
「全部です(笑)。ソフトウェアの開発に2年間、ハードウェアに1年間で、およそ3年間で開発しました。でも、やはりハードの方が難しかったですね。実際に想定していたスケジュールよりも3~4か月遅れました。例えば、部品が売り切れてしまったり、地震などの災害で工場が止まってしまったりと、我々がコントロールできない部分があります。そこが難しかった。もちろんソフトも難しいのですが、その核は100%自社にあるので、頑張ればなんとかできると信じています」
――今後“クラウドフォン”はどう進化していくのでしょう?
「Robinはまだクラウドフォンとしての完成形ではなく、スマホからクラウドフォンへと移行する最初の一歩にいます。現在、クラウドに保存している部分がまだ写真データなどのストレージに限定されていますが、将来的には、ストレージ以外の部分も管理できるようにしたい。OS、CPUやGPUなどのすべての動きを学習させ、そのユーザーの使い方に最適な状況をカスタマイズしていけるのではと考えています。既に学習エンジンが搭載されているので、アップデートという形で実現可能です」
――ストレージが端末とクラウド合わせて132GBである意義はなんでしょうか?
「我々が把握しているデータでは、32GBの端末を持つ人の5割以上が、1年でストレージがなくなり、16GBでは半年くらいで7割くらいの人がなくなるとわかっています。132GBのストレージがあれば、デバイス自体の寿命がくるまで、ストレージ不足で困る事態を解消できるだろうと考えました」
――今後クラウドのストレージを有料化することは?
「ありえません。2016年にクラウドを有料化することはナンセンスです。むしろ、多めにストレージを使っている人が、100GBを使い切りそうになっときに、無料で少し増やしたいと思っています。これはユーザーにも既に伝えていることです」
――GoogleやAppleがこの領域に挑戦しない理由は?
「私が感じているのは、GoogleやAppleはもうスマホにそれほど力を入れていないのではないかという点です。ここ3年間くらいの発表を見てもOSそのものが大幅に進化しているわけではありません。新たに発表されるものは、サービス、ウェアラブル、テレビ、車、AR、VRなどばかり。新しい技術を使ってより良いものを作りたいというわけではないのでしょう。まあ、Googleにはクラウドの技術をよく理解している人たちがいるので、やろうと思えばRobinのようなことはできるかもしれませんが、そこには興味を持っていないということです」
――販売の場所として「+Style」を選んだ理由はなんですか?
「+Styleは、メーカーが好き勝手に商品を出せるわけではありません。“保証”という言葉がよいと思いますが、ソフトバンクがチェックしている分、お客さんに安心して買ってもらえる場所だと思っています。もちろん新しいものであるし、クラウドファンディングの製品にもいろいろあるので、すべてが完璧ではないかもしれませんが、ソフトバンクが目を通していて、“これは大丈夫”と言ってくれることは、お客様にもメリットがあることだと信じています」
――3万9980円という値段で販売できる理由はなんでしょうか?
「一般的なメーカーに比べて、人数が少ないので、社内コストがかなり安いです。また、セールスも、ダイレクトで行ったり、+Styleみたいなオンラインのお店で行うので、マージンが低く抑えられます。こうした理由で、高い質のものをなるべく安く提供できています」
――故障・トラブル時のサポートはどうなりますか?
「ネクストビットジャパンを設立して、日本でオンラインのサポート体制を整えました。サポートを大事にしないと日本では成功できないですからね。最初から重要事項として位置づけていました。現状サポート体制を整えたのは、アメリカ、インド、日本の3か国です。ちなみに、さっき2chで“ネクストビットサポートは神対応”ってだれかが書いてくれていました(笑)」
――どんな人に購入してほしいですか?
「やはり、いま出ているスマホについて“つまらないなぁ”と感じている人です。そして、次の時代に何がくるのだろう、と興味がある人にも。あとは、ただ品質のよい端末が欲しい人にも手に取っていただければ嬉しいです」
Nextbitが提唱する「クラウドフォン」の概念は、後10年のスマホのあり方に革新をもたらすかもしれません。また、Robinは斬新でありつつ、高スペック、高品質を謳う端末でもあります。通信に関してはSIMフリーなので、ソフトバンクやY!mobileの回線、そして格安SIMを含むNTTドコモ回線でも利用可能です。「スマホの新たな可能性を一足早く体験したいが、普段使いに困らない品質が保証された端末を、なるべく安く運用したい」。そんな欲張りな人に、ぴったりの端末ではないでしょうか。
【SPEC】
- OS:Android 6.0
- CPU:Snapdragon 808(6コア)
- RAM/ROM:3GB/32GB(オンラインストレージ100GB)
- ディスプレイ:5.2インチ フルHD
- アウトカメラ/インカメラ:1300万画素/500万画素
- 周波数帯・バンド
- GSM:850/900/1800/1900
- HSPA:850/900/1700/1800/1900/2100
- LTE:1/2/3/4/5/7/8/12/17/20/28
- サイズ:W72.02×H149.00×D7.00mm
- 質量:145g
【URL】
+StyleのRobinページ https://plusstyle.jp/shopping/item?id=12