デジタル
2019/5/8 7:00

【西田宗千佳連載】STADIAのメリットとデメリットを考察する

Vol.78-3

STADIAの特徴は「手軽」であることだ。なにしろ、高価なゲーム機もゲーミングPCも買う必要がない。それでいて、STADIAがクラウド側で提供するハードウェアの能力は、現在のPS4よりずっと性能が高い。同じ能力のゲーミングPCを作るなら、最低でも十数万円はかかるだろう。サービスへの加入が必要とはいえ、それだけのものを「買わなくていい」というのは、とても大きな魅力だ。

↑Google「STADIA」

 

また、インストールなどの手間がないことも大きなメリットだ。現在の大規模なゲームは数十GBのサイズがあり、ダウンロードしてプレイを始めるまでに数時間かかることも少なくない。だがSTADIAは、クラウド側でセットアップが終わっているのでダウンロードは不要。YouTubeでプレイ動画を見て、そこから自分がプレイできるようになるまでの時間は「5秒」とされている。

 

クラウド側のサーバーは厳密に管理されているので、誰もが同じ環境でゲームを楽しめる。いわゆる「チート行為」がないため、誰もが公平にゲームを楽しめるという点も大きいだろう。これは、ゲームファン以上にゲームメーカーにとって大きな福音といえる。ネットワークゲームを提供するメーカーは、常にセキュリティ対策・チート対策に頭を悩ませている。ファンが安心して、公平にプレイできる環境を整えておかないとゲームの商品寿命が短くなるからだ。そのために大きなコストをかけているが、メーカーとしては新しいコンテンツ開発やプロモーションにその費用を回したい、というのが本音である。クラウドゲーミングでチート対策が出来るなら、「新作をクラウドゲーミングだけで」と考えるメーカーが出てきても不思議はない。

 

こう考えるとメリットだらけに思えるが、もちろん、実際にはそんなことはない。

 

一番の課題は「遅延」だ。本連載の初回でも述べたが、最低数十ミリ秒から百数十ミリ秒の操作遅延が避けられないので、苦手なゲームも当然ある。タイミングが重要な音楽ゲームや、1980年代以前の「レトロゲーム」はその典型。これらは遅延が一切ないことを前提に作られているので、STADIAのようなクラウドゲーミングで快適にプレイするのは難しい。そもそも、回線が安定している場所ではちゃんと遊べるが、そうでない場合には難しい、というのがクラウドゲーミングだ。日本の場合には回線が均質に良いため問題は小さいが、海外は、アメリカのような先進国であっても「良い環境」と「悪い環境」の差が大きい。誰もが小さな遅延でクラウドゲーミングを楽しめるとは限らない。

 

そして、現状の最大の問題は「どこにおトクな点があるかわからない」ということだろう。料金プランも、どんなゲームがあるかも示されていない。だから実際には「まだちゃんと判断する情報がない」というのが正しい。

 

では、どういう情報が足りないのか? Googleが今後、どんなビジネスモデルを提示すればヒットの可能性があるのか? その辺は次回Vol.78-4で解説する。

 

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