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2019/5/8 21:30

【ナックルの挑戦状】あの武骨な「ThinkPad」が今風に進化! Xシリーズ最新作「X390」を使ってみた

レノボが満を持して2019年モデルとして発売した「ThinkPad X390」。このX390は、13.3型のディスプレイを搭載したA4サイズで、ThinkPadの軽量コンパクトモデルとしてラインナップに加わりました。

↑ThinkPad X390(2019年モデル)

 

X390は、2018年に発売されたX280をベースに、インテル第8世代CPUを搭載し、画面を12.5型から13.3型にサイズアップしたにもかかわらず、重量はほぼ同一となる1.18kg~の、いわばモバイルPCとして完成されたモデルです。と、レビュー本編の前にオチを言ってしまうというスタイルで進めていきたいと思います。

 

X1 Carbonとの分岐点はサイズ感

ThinkPadの軽量モデルといえば、フラッグシップ機として名高い「X1 Carbon」が思い浮かびます。X1 Carbonは、文字通り、カーボン素材を筐体に採用し、WQHD(2560×1440)の14型ディスプレイが選択可能など、ThinkPadの王者として君臨し続けている「キングオブThinkPad」といっても過言ではないモデルです。

↑ThinkPad X1 Carbon(左)とX280(右)ともに2018年モデル

 

ところが、昨年発売されたX280は、エントリースペックを踏襲しつつ、X1 Carbonよりわずかに小さいサイズで発売された、いわば庶民のモバイルThinkPadなのです。その正統後継モデルとなるのがX380と言いたいところですが、2019年もX280が併売されているため「正統後継」と言ってしまうと少し語弊があるかもしれません。とはいえ、X280もX390も大和研究所における製品開発は同一のチームが行っているとのことで、この2モデルは同じ血が流れていると言っても過言ではないでしょう。

 

X390の本体サイズは、天板がカーボン素材の最軽量モデルで幅311.9×奥行き217×厚さ16.5mm、重量は1.18kgとなります。X1 Carbon(2018年モデル)との差は、幅が約1cmちょいほど狭く、厚みが5mmほど厚いという程度の差。しかし、実際に手に持ったりバッグに入れてみると、この差が意外に大きく感じるものです。特に、女性が持つバッグに入れる際には、バッグ内に余裕のアリナシに関わってくるサイズ感でしょう。価格やスペックにコダワリがないのであれば、このわずかなサイズ感でX1 CarbonかX390を選択するのも良い選択といえます。

↑X390にA4のコピー用紙を重ねてみました

 

モッサリ感のあった極太ベゼルがシェイプアップ!

X280は、庶民のThinkPadを象徴する存在である反面、いくつか不満もありました。筆者がもっとも不満に感じたのは、時代と逆行するかのような画面を囲うド図太いベゼルです。あまりにも残念過ぎるため「この太いベゼルの部分も画面にして欲しい」と、ThinkPadの故郷である「大和研究所」のエンジニアに直訴したほど。

↑ThinkPad X280(2018年モデル)。ベゼルの太さがお解りいただけただろうか?

 

この太いベゼルに不満を持ったのは、恐らく筆者だけではないはず。それもこれも、このX1 Carbonより一回り小さいサイズ感が小気味よく感じられた末の心の叫びとでもいいましょうか。そんなThinkPadファンの願いが大和研究所に通じたのだろうか、天板の面積は変わらないまま、画面が12.5型から13.3型に大型化されたことによって、あれだけ太かったベゼルが見違えるようにシェイプアップされたのがX390です。

↑スリムになったベゼル。さすが、結果にコミットする大和研究所!

 

モバイルThinkPadたるフォルムは伊達じゃない

ひと昔前は、「ThinkPadは分厚くて無骨なPC」という先入観がありましたが、現代のThinkPadはまったく事情が異なります。特にXシリーズは、ThinkPadを代表するモバイルPCとして極薄型のフォルム。その代表となるのがX1 Carbonと、このX390です。

↑どこから見ても、今どきの薄型ノートPC。もうオジサンのPCではないのです

 

X390がただのモバイルPCではない大きな理由として、LTE内蔵モデルがカスタムオーダー可能な点。これは他のThinkPadでも同様なのですが、PC単独でLTE通信できるため、別途モバイルルーター等を持ち歩く必要がなく、余計な重量増を避けられる意味でもモバイルマシンとして進化しているといえます。LTEモデル(WWANモジュール)を選択すると、価格が1万5120円ほど上乗せされますが、LTE通信は本当に便利なので、格安SIMを契約しているような人は、CPUをランクダウンしてでもLTEを搭載することをオススメしたいです。

↑背面に搭載されたSIMトレイ。早速、格安SIMを挿してThinkPad単独でLTE通信してみました

 

その他、拡張端子はビジネスシーンで過不足なく活躍できるThunderbolt3対応のType-CやHDMIなどを搭載。特に、電源コネクタにType-Cを採用したのが、”今どき”の潮流にキッチリ乗っているのは好感度MAXです。

↑本体左側面の拡張端子。左からUSB 3.1 Gen 1 Type-C(電源と共用)、USB 3.1 Gen 2 Type-(Thunderbolt 3)、イーサネット拡張コネクター2、USB 3.1 Gen 1、HDMI、 マイクロフォン/ヘッドフォン・コンボ・ジャック

 

ThinkPadといえばキーボードとトラックポイント

ThinkPadといえば、キーボードの打鍵感とトラックポイントの使いやすさが、伝統的に受け継がれた機能となっています。X390もその伝統は守られ、長年のThinkPadユーザーを裏切らない作りで一安心といったところ。そこには、このサイズ感と19mmフルピッチを両立させるべく、大和研究所の苦労が垣間見えます。

↑アイソレーションになってから採用された6列キーボード

 

ThinkPadキーボードの、軽く押せて小気味良く反発してくるあの打鍵感はもちろんX390にも踏襲されています。筆者もまさにいま、この記事をX390を使用して書いていますが、その打鍵感のおかげで心なしか筆が走る勢いです。キーピッチは19mmですが、キートップの横幅は16mm弱。筆者的にはこの横幅がジャストサイズに感じます。これ以上、キーとキーの間の広がってしまうと、谷間に指が落ちてミスタイプの元になりかねません。

↑メインのキーは他のThinkPadと同様の横幅

 

ただし、やはりこのフットプリントに19mmのフルピッチを異形な配列にせず収めようとする設計エンジニアの苦労が括弧キー周辺にみられます。いくつかのキーの横幅を狭くして、なんとか狭い範囲に凝縮されているのです。しかし、横幅が狭いといっても打鍵に支障はありませんし、C言語やJavaなどのコーディングでもしない限り、タイピングする頻度が低いキーなので、大きな問題ではありません。

↑キートップの幅はメインキーより約3mmほど短い

 

次にThinkPadのアイデンティティーともいうべきトラックポイント、通所「赤ポチ」ですが、こちらも既存ユーザーを裏切らない相変わらずのクオリティ。テキストをタイピングしてばかりいるライターの筆者的には、タッチパッドに比べて指がホームポジションから離れないので大活躍しています。

↑X390のトラックポイント。伝統の使いやすさ!

 

しかし、令和になった現在、OSとしてのWindows、及び世の中のパソコンはとっくにタッチパッドを複数指で操作するマルチタッチジェスチャーに最適化されており、タッチパッドの操作も不可欠になってきました。トラックポイントが搭載されたThinkPadも、それは例外ではなく、WEBページのスクロールや仮想デスクトップの切り替えなど、上下左右の操作はマルチタッチジェスチャーがオススメです。しかも、ThinkPad X390に搭載されているタッチパッドは広い面積と指の滑りがよい表面処理がされているため、かなり使いやすいポインティングデバイスとなっています。トラックポイントが秀逸すぎるために、通常は気づかない部分かもしれません。

↑筆者的に生体認証は指紋センサーが好み

 

及第点以上のモバイルThinkPadであることは間違いナシ

ここまで紹介したように、ThinkPad X390が超豪華リッチテイストでないにしろ、モバイルPCとしては十分に及第点を満たしていることがお解り頂けると思います。取材時点では、フラグシップ機であるX1 Carbonの2019年モデルは米国で発表はされているものの、国内の発売はもう少し先のこと。ウワサでは500gほど軽量化されたり、4KのHDRディスプレイが選択できたりと、さらなるフラグシップ機への高みへ登りつつあるようです。

 

そんななか、最安モデルが約11万円強から購入できるX390が現実味のあるモバイルThinkPadとしての代表格であることは間違いありません。ただし、インテルCore i5のCPUとフルHDのディスプレイにLTE機能と、筆者が考えるマストな機能を搭載すると15万円オーバーは確実なのでもう少し直販価格がこなれてくると、購入しやすい「庶民のモバイルThinkPad」として広く普及しそうなポテンシャルを秘めている1台となるでしょう。

↑庶民のモバイルThinkPadとしてのミライに!