デジタル
2016/6/9 17:26

BlackBerryはまだ甘美な果実か? 最新端末「Priv」は文化であり貴族のスマホだ【レビュー】

いまやあまり使われなくなった言葉だが、BlackBerryは「舶来品」という言葉が似合う製品だった。同ブランドはグローバルビジネスマンが持つのを許されるツールであり、代名詞的ともいえるキーボードは日本的な携帯電話にない文脈を感じることができた。要は「海外のかほり」がプンプンしていて、新しいモノ好きの私からすると憧れの存在だったのだ。

 

もちろん、W-ZERO3などのQWERTYキーボード型携帯電話だってあったが、BlackBerryというブランド名は強大。その名を聞くだけで果実のような甘美な魅力が漂っていたのだ。しかし、時の流れとは残酷なもので、iPhone、Androidが台頭。同ブランドは、勢いを失い最新のデータでは世界シェアも1%を切っているという。

 

という昔話はここまでにして、いま手元にあるのは、最新のBlackBerry端末「Priv」である(ちなみに、現在日本ではPrivを含め3モデルが正規販売されている)。見た目は一般的なスマートフォンに見える。果たしてBlackBerryにはまだ、果実のような甘美さはまだ宿っているか? 実際に10日ほど使ってみたレビューをお届けしよう。

 

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スペックは使い勝手は最新のハイスペックAndroid端末

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PrivはAndroid 5.1.1搭載、ROMは32GB、RAMは3GB、CPUにQualcomm 8992 Snapdragon 808 Hexa-Coreを搭載する、ハイスペック型のスマホである。同ブランドとしては初めて独自OSから脱してAndroid OSを搭載。Androidユーザーであれば、操作類で悩むこともないだろう。また、同機はFOX社が販売するSIMフリー端末。SIMカードを挿して設定するのも一般的なスマホと変わらない。とてもイージーである。

 

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↑画面サイズは5.4インチ(2560 x 1440)で、有機ELディスプレイを搭載。iPhone 6と比べるとひと回り大きい

 

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↑SIMカードはマイクロSIMを使用。挿し込み口は本体上部にある

 

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↑ホーム画面は一般的なAndroid端末そのもの

 

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↑Blackberry的な機能として搭載されているのが「DTEK」。これは端末のセキュリティ状態を評価してくれるものだ

 

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↑メッセンジャーアプリのBBMも引き続き使える

 

ただ、こうしたスペックや機能の羅列よりも、多くの人が関心を持つのは、やはりQWERTYキーボードではないだろうか?

 

UIはイマイチだがUXはサイコーだ!

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PrivのQWERTYキーボードは2層になっている本体の上部を上方向にスライドすると登場。幅77.2㎜に最大10個の物理ボタンが配置されている。

 

実際に押してみると……プチプチとした打鍵感はあるが決して押しやすくはない。操作に慣れたとしても変換作業が面倒で、ひらがな・カタカタ・漢字・アルファベット、数字を縦横無尽に扱う日本人には使いやすくはない(例えば、数字はALTキーを押しながら入力するとか)。

 

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だからといって、Privがダメだという気は毛頭ない。

 

文字入力は一般的なスマホ同様、画面タップ&スワイプで行えばいいわけだし、そっちのほうがずっとストレスフリーで入力スピードも速い。ここで重要なのは、それでもやっぱり、PrivはQWERTYキーボードで入力するのは楽しいということ。2010年代も折り返した2016年ですら、冒頭で述べたようなエリートサラリーマン的な憧れの世界を味わえる優越感がある。そもそも、純粋に男心をくすぐる、いや、揺さぶるぐらいのガジェットらしさが満載。UI(インターフェース)的には……かもしれないが、UX(ユーザーエクスペリエンス)的には最高であると断言できる。

 

そして、それを後押ししているのが同機の持つプレミアム感だ。Privのキーボードのスライドは重厚ながら実に軽やか。高級外車のコンソールパネルを開け閉めするような上質感を実現している。かつ、ラウンドした形状も高品質さを盛り立てるのに一役買っている。「使用体験」はどこまでもリッチなのだ。

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↑本機の箱もまた高級感のある仕上がり

「貴族的」という表現を使いたい初めてのスマホ端末

前段で本機の質感を表するのにクルマの例を出したが、もうひとつクルマで例えてみたい。しばしば、クルママニアの間では「スーパーカーである条件」として「ムダであること」が挙げられる。

 

600馬力や700馬力を超えるムダなパワー/宝石を散りばめたようなムダに豪華な室内/ムダに上に跳ね上がるスイングアップドアなどなど。

 

何が言いたいかというと、携帯電話やスマホはこれまで、効率化の製品だった。とにかく、効率化することでメーラーになり、ポータブルオーディオにもなり、カメラにもなり、そしていまではクラウドを利用したデータのシームレス化が進み――ムダを積極的に取りいれる貴族的な発想は存在しなかった、と個人的には考えている(メーラーやDMP、カメラ自体がムダという意見もあると思うが、ここでは”便利になるもの”と解釈してほしい)。

 

でもPrivはスライド式QWERTYキーボードを勇敢にも搭載することで、スーパーカーの境地に到達している。貴族的なスマホだ。ムダいうとBlackberryも販売元のFOXもお怒りになることと思うので言い方を変えると、スマホの世界に効率化以外を提案した革命的なスマホだといえる

 

じゃあ価格も貴族的かというと、10万7784円~12万4848円と高価格帯のSIMフリー端末と同等。製品競争力は十分にある。

 

本稿の問いである「果実のような甘美さはまだ宿っているか?」に答えるとすれば、「宿っている」という回答になる。そして、「そして成熟している」と言えるだろう。

 

【URL】

Blackberry Priv https://foxinc.jp/blackberry/

 

写真/茂呂幸正