Vol.80-1
これまでのタブレットはスマホ用OSの派生だった
6月3日(現地時間)、米・サンノゼにて、アップルの年次開発者会議である「WWDC2019」が開催された。毎年、WWDCではアップル製品に関する様々なトピックが語られるが、今年1番話題となっているのは、iPadのOSがiOSから「iPadOS」に独立したということだろう。
独立の理由はシンプルである。iPadに、よりPC的なニーズが増え、機能やユーザーインターフェイスが拡充されていった結果、iPhoneと同じOSであるよりも「別のOS」として独り立ちした方が有利になってきたからだ。
従来、タブレットのOSは、Windowsを採用したものを除くと「スマホ用OSの派生」として扱われていた。タブレットとスマホはハードウェアの構成要素も似ているし、アプリも共用化できる。一時、AndroidではUIがタブレットとスマホで分かれていた時期があったが、それでも「ちょっとした違い」に過ぎなかった。1つのアプリを複数画面で立ち上げる――PCでいう「マルチウインドウ」状態で自在に扱えるような、「PC的にタブレットを使う」要素をちゃんと備えているものがあったかというと、実は「なかった」というのが実際のところだ。
スマホともPCとも違うOSを目指すiPadOS
iPadはここ数年、ペン対応を進めるなど、クリエイティブな要素の強化を進めてきた。2017年公開の「iOS 11」で「ファイル」が登場したときは、「ついにPCのようにファイルが簡単に扱えるようになるのか!」と期待されたものだ。だが実際にはとても制限が多く、iPadをPCのように使うには、かなりの工夫が必要だった。「iPadOS 13」(生まれたばかりだが、iOSのバージョン番号と合わせるため13からスタートする)では、そうしたこれまであった「PCとの違い」が大幅に少なくなっている。1つのアプリが複数の画面を持てるようになるので「ワードで2つの文書を比較しながら作業する」こともできるし、マルチタスクの制約は小さくなる。ウェブブラウザのSafariもデスクトップ版に近いものになり、USBメモリやSDカードも使えるようになる。
USBメモリへの対応はiOS 13にも追加される機能だが、その他についてはiPadOSだけに盛り込まれたものだ。タブレット特有の「指で操作する」「画面が大きい」という要素を生かし、スマホともPCとも違うOSを目指すことになる。
この独自OSの搭載によって、iPadの利用シーンはより広くなるだろう。かつてPCの代わりに使うことを諦めたことがある人も、iPadに再び注目するのではないだろうか。それだけ、アップルはiPadの成長に期待しているのである。「ならばMacはどうなってしまうのか」と思う人もいるかも知れない。結論から言えば、別になくなるわけではない。むしろ、iPadとの組み合わせでより価値を打ち出す方向性を採るだろう。
具体的にiPadとMacの関係が今後どうなるのか? そして、なぜここまでアップルはiPadにコストをかけるのか? このあたりは次回Vol.80-2で解説していく。
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