前回は中国における「信用スコア」の事例を見ましたが、本記事では日本国内における信用スコアサービスの動向を解説していきます。これから提供が始まるサービスも多いですが、今後日本でも急速に広まっていくのでしょうか?
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国内の信用スコアサービスは社会的信用度を測るものではない
ドコモやヤフーが参入を表明し、国内の「信用スコア」市場が動き始めました。10社ほどがサービスを発表しているものの、準備中のサービスもあり、ユーザー数はまだ少ないのが現状です。スコアの活用先は大きく分けて「サービス特典」「個人向け融資」「業務依頼・報酬支払」の3つ。LINEやJ.Scoreのように複数のサービス提供を想定している企業もあります。信用スコアを導入するメリットはフリーランスで働く人が融資を受けやすくなったり、保証金なしでシェアサービスが利用できたりすることでしょう。
中国での事例を見ると、サービスの導入に不安を感じるかもしれませんが、日本での信用スコアは中国の「芝麻信用」などとやや異なる。まず、スコアリングに使用するデータの違いです。国内のサービスは自社グループや提携企業が持つデータを基にスコアを算出しており、中国のように犯罪歴や裁判記録が用いられることはありません。つまり、日本の信用スコアサービスが可視化するのは「社会的な信用度」ではなく、あくまでも「そのサービスを利用するうえでの信用度」。現在の信用スコアサービスは、AIが生活を監視する、スコアが人生を左右するといったものではないのです。
スマホ決済と連携すれば爆発的な普及の可能性も
しかし、それは現在のサービスに限った話。最近では国が主導して「キャッシュレス化」を推進しており、スマホ決済サービスが乱立している状況です。今後、あるサービスが覇権を握ったり、統一的なサービスが登場したりすることは考えられるでしょう。さらに、そのサービスに信用スコアを紐づければ、中国のような爆発的な普及も十分にあり得ます。
しかも、それだけではありません。国が主導するスマホ決済サービスが信用スコアへ参入するとなれば、軽犯罪や裁判記録がスコアリングの対象となったり、スコアに影響する条例が制定されたりするかもしれません。生活の隅々まで信用スコアが及ぶとすれば、それは中国政府が目指す「信用社会」に近い状況に日本も踏み出すことを意味します。
息苦しく感じますが、真っ当に暮していれば得られるメリットも大きいといえます。そんな「信用スコア」時代を生き抜くために、正しい知識を身につけておきたいところです。