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2019/8/23 20:30

ゼロからわかる「信用スコア」入門(日本国内編)ーー中国との決定的な違いとは?

前回は中国における「信用スコア」の事例を見ましたが、本記事では日本国内における信用スコアサービスの動向を解説していきます。これから提供が始まるサービスも多いですが、今後日本でも急速に広まっていくのでしょうか?

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国内の信用スコアサービスは社会的信用度を測るものではない

ドコモやヤフーが参入を表明し、国内の「信用スコア」市場が動き始めました。10社ほどがサービスを発表しているものの、準備中のサービスもあり、ユーザー数はまだ少ないのが現状です。スコアの活用先は大きく分けて「サービス特典」「個人向け融資」「業務依頼・報酬支払」の3つ。LINEやJ.Scoreのように複数のサービス提供を想定している企業もあります。信用スコアを導入するメリットはフリーランスで働く人が融資を受けやすくなったり、保証金なしでシェアサービスが利用できたりすることでしょう。

 

中国での事例を見ると、サービスの導入に不安を感じるかもしれませんが、日本での信用スコアは中国の「芝麻信用」などとやや異なる。まず、スコアリングに使用するデータの違いです。国内のサービスは自社グループや提携企業が持つデータを基にスコアを算出しており、中国のように犯罪歴や裁判記録が用いられることはありません。つまり、日本の信用スコアサービスが可視化するのは「社会的な信用度」ではなく、あくまでも「そのサービスを利用するうえでの信用度」。現在の信用スコアサービスは、AIが生活を監視する、スコアが人生を左右するといったものではないのです。

 

スマホ決済と連携すれば爆発的な普及の可能性も

しかし、それは現在のサービスに限った話。最近では国が主導して「キャッシュレス化」を推進しており、スマホ決済サービスが乱立している状況です。今後、あるサービスが覇権を握ったり、統一的なサービスが登場したりすることは考えられるでしょう。さらに、そのサービスに信用スコアを紐づければ、中国のような爆発的な普及も十分にあり得ます。

 

しかも、それだけではありません。国が主導するスマホ決済サービスが信用スコアへ参入するとなれば、軽犯罪や裁判記録がスコアリングの対象となったり、スコアに影響する条例が制定されたりするかもしれません。生活の隅々まで信用スコアが及ぶとすれば、それは中国政府が目指す「信用社会」に近い状況に日本も踏み出すことを意味します。

 

息苦しく感じますが、真っ当に暮していれば得られるメリットも大きいといえます。そんな「信用スコア」時代を生き抜くために、正しい知識を身につけておきたいところです。

 

国内の代表的「信用スコア」サービスの特徴&メリット

現在国内で続々と発表されているサービスのなかから8つをピックアップし、「サービス特典」「個人向け融資」「業務依頼・報酬支払」のスコア利用目的別に分類。各サービスのスコア算出の仕組みやスコアの活用先、独自の取り組みなどを紹介します。(※各サービスの図は編集部作成)

 

【その1】

レンタルサービスにおける保証金免除や飲食店・スポーツ観戦の先行予約特典も

ヤフー

Yahoo!スコア

【サービス特典】

ヤフーは7月1日より「Yahoo!スコア」の事業者サービスの提供を開始。利用にはYahoo! JAPAN IDとの連携が必要で、本人確認の度合い、信用行動、消費行動、Yahoo! JAPANの利用状況の4カテゴリーに属するスコアを算出する仕組み。シェアサイクルサービス、飲食店の予約サービスなどでスコアが活用されます。なお、ユーザーの同意なしに外部企業へスコアが提供されることはなく、またスコア作成を希望しないユーザーはスコアの削除、利用停止が可能です。

【サービス概要図】

 

【その2】

借り入れから返済まで行えるアプリを提供、ドコモ口座との連携も可能

NTTドコモ

ドコモスコアリング

【個人向け融資】

「ドコモスコアリング」は、料金の支払い履歴や、ドコモ回線、各種サービスの利用状況などからスコアを算出。スコアの提供を受けた金融機関が審査に活用する仕組み。また、融資サービスを利用するユーザー向けには、借入から返済までのすべての手続きができる「レンディングマネージャー」アプリが提供され、アプリ内で返済状況が可視化され、返済計画のアドバイスも受けられます。dアカウント、ドコモ口座との連携も可能。現時点で各サービスの開始時期は未定。

【サービス概要図】

 

【その3】

申し込みから返済までアプリ1つで

LINE Credit

LINE スコア

【個人向け融資】【サービス特典】

「LINEスコア」は、みずほ銀行などが所有するユーザーデータと、LINEの各サービスの利用状況からスコアを算出(ユーザーの同意を得て実施)。飲み会や出張など突発的な出費に対応する「LINEポケットマネー」が特徴。金融領域外のサービスにもスコアを活用予定。

【サービス概要図】

 

【その4】

メルカリとメルペイ加盟店で「あと払い」ができる

メルペイ

メルペイあと払い

【個人向け融資】

メルペイでは、メルカリでの商品購入やメルペイ加盟店での利用時に、購入代金をあと払いできる「メルペイあと払い」が利用できます。スコアの基となるのは、メルカリでの出品・購買データ、メルペイの決済データなど。これらのデータから、あと払い機能の利用の可否を判断しています。

【サービス概要図】

 

【その5】

優先案内や先行予約が可能、特別メニューの提供も

TableCheck

TableCheckカスタマースコア

【サービス特典】

飲食店向けの予約サービスを提供するTableCheckは、ユーザーの利用実績や店舗からの評価(マナーやキャンセルの有無など)を合わせてスコアリング。高スコアであれば優先予約などより良いサービスが受けられ、店舗側は無断キャンセルなどを回避できます。提供時期は未定。

【サービス概要図】

 

【その6】 

AIがユーザーの「将来性」を予測、幅広い層への融資が可能に

J.Score

AIスコア

【個人向け融資】【サービス特典】

J.Scoreは2018年に開始したレンディングサービス。約150項目の質問への回答と、連携企業から得たデータからスコア算出。AIがユーザーの「将来性」を測り、若い人や年収の低い人でも融資が受けやすいのが特徴。パートナー企業で特典が得られる「AIスコア・リワード」も展開。

【サービス概要図】

 

【その7】 

企業からの評価でスコアを算出、働く前に給料を得られる

株式会社タイミー

Taimee

【業務依頼・報酬支払】

「Taimee」は、働きたいユーザーと仕事をつなげるワークシェアサービス。仕事をした企業からの評価がマッチングに影響します。今夏には、4つのランクでユーザーの信用度を測るスコアリングシステムを導入予定。最高ランクのユーザーには、働く前に給料が支払われます。

【サービス概要図】

 

【その8】

仕事完了前に報酬をゲット! スコアが上がれば仕事を受けやすくなる

クラウドワークス

クラウドスコア

【業務依頼・報酬支払】

人材マッチングサービスを提供するクラウドワークスは、2017年にいち早く信用スコアサービスへ参入。仕事先からの評価や実績を基にスコアリングし、高スコアのユーザーは働く前に仕事に必要な資金の融資を受けたり、信用力が上がることで仕事が受注しやすくなったりします。

【サービス概要図】

 

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文/友納一樹(ゴーズ)