デジタル
2019/10/26 7:00

【西田宗千佳連載】予想以上のヒットになった「iPhone 11」

Vol.84-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「iPhone 11の成功」。 Android勢の猛攻を見事に跳ね返したAppleの会心作はなぜヒットしたのか?

 

 

そもそも新iPhoneは販売不調が予測されていた

今年も9月末に新iPhoneが発売された。この数年、iPhoneは価格も高くなってきていて「買い替えづらい」といった批判があった。しかも、日本国内では、10月1日より、携帯電話の販売について、通信費と絡めた端末の割引を大幅に抑制する「分離プラン」が導入された。そのため、「2019年は、iPhoneの販売がさらに減速するのでは」というのが、事前の予想だった。

 

だが、である。ふたをあけてみると、「iPhone 11シリーズ」の販売は好調だった。ロイターの報道によれば、アップルは全世界でiPhone 11を計画よりも1割増産することを予定しているという。日本でも「POSデータの集計では、一時昨年に比べて販売数量が3割多かった」といった話がある。同時期、iPhone 8を「分離プラン導入前の通信料金による割引付きで買う」という駆け込み需要もあったようだが、iPhone 11自体の好調さは、それとは別の形で存在していた。現象としてはシンプルで、つまり消費者は「iPhone 11を支持した」のである。

 

Apple iPhone 11

 

iPhone 11成功の背景にある3つの理由

では、iPhone 11はなぜこのようにヒットしたのか? その理由は複数ありそうだ。筆者は特に大きな要因が3つある、と考えている。

 

ひとつめは「ブランド戦略の見直し」。昨年はiPhone XSをメインに、XRをその下に置くようなイメージだったが、今年はXRの後継であるiPhone 11をメインに、XSの後継であるiPhone 11Proを上位に据えた。価格についても全体的に下げたうえで、特に日本では、iPhone 11が安く、お買い得になるような価格設定を行った。メインに露出する機種が税別7万円台からであるか、11万円台からであるかでは、やはり受ける印象が異なってくる。

 

2つめは「超広角カメラを全モデルに搭載したこと」だ。超広角のカメラは、Androidのハイエンドスマホでは以前から搭載が進んでいた。近年では、超広角カメラそのものが特別なわけでも、珍しいわけでもない。だが、世の中の人がそこまでハイエンドスマホの事情に詳しいわけでもない。「iPhoneしか気にしていない人」も多いし、ハイエンド機種の動向に興味がないという人も多い。アップルは新要素を上から下まで一気に導入するポリシーをもっているが、今回もiPhone 11という、より多くの人が買う機種に超広角カメラを組み込んだことでその機能の認知度が上がった。その結果、余計にiPhone 11のおトク度が増したように感じるというわけだ。

 

そして最後が「買い取り」という施策だ。日本ではここ数年、携帯電話事業者が買い取りや下取りによる割引を励行してきたが、実はアップル自身も似たことを行っている。特に海外では今回この点を強調したため、世界的に買い替えが促進されたと見られる。

 

では、これらの戦略変更や新しい施策はアップルにとってどんな意味を持っていたのだろうか? そして、iPhoneシリーズの販売は今後も伸びるのか? こうした部分についてはウェブ版で解説していく。

 

 

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