デジタル
2019/11/18 18:39

エリアも用途もまだ不鮮明?専門家が「5Gの実績」を見て感じた期待と不安

具体的な形で「5G」が私たちの前に姿を現しつつあります。NTTドコモはからプレサービスを開始。ラグビーW杯のパブリックビューイングなどの実績も積み始めていますが、果たしてその実用性はいかほどなのでしょうか?

 

【教えてくれた人】

モバイルライター

井上 晃さん

最新モバイル事情に精通するライター。国内外を精力的に取材し、雑誌やウェブなどで記事を執筆。

 

本サービス提供に向けた助走がついに始まった

商用サービスとしての「5G」がスタートするのは、2020年の6月——。それに先立ち、NTTドコモが、9月より「5Gプレサービス」の提供を始めました。

 

複数のサービスが展開されるでしょうが、最も象徴的なのは「ラグビーワールドカップ2019日本大会」に関連する取り組みでしょう。また、一般ユーザー向けには、一部のドコモショップに5Gを体験できる展示スペースが設けられました。他の取り組みとしては、第32回東京国際映画祭内でVRを活用するライブが開催され、来場者の3Dアバターを生成しバックダンサーとしてバーチャルキャラクターと共演させました。いずれもまだデモンストレーション的な印象もありますが、5G時代は着実に迫ってきています。しかし、現状では不安な面も否めません。

 

<井上 晃さんが語る プレサービスでわかった5Gの期待と不安>

【期待】5G関連サービスは様々なアイデアを生む

「5G」というテクノロジーを通じ、新しい体験が作られることに期待。今回のパブリックビューイングも大画面というだけでなく「情報」を生かした作りになっていたのが印象的でした。将来的にこうした楽しみ方を各々のスマホで実現できると想像すると、やはりワクワクします。

 

【不安】まだ「5G」の輪郭はぼんやりとしている

ライブビューイングでもWi-Fiが併用されていたように、「あえて5Gでやるメリットは?」という疑問が残る部分も。より説得力のあるユースケースを期待したいところ。商用サービス開始までに、より身近な用途で5Gの利点を実感させられるのか、いまはまだイメージしにくいです。

 

 

これらの思いはドコモの「5Gプレサービス」の詳細から感じられたものです。すでに実績となるものから今後展開予定のものまで説明していきたいと思います。

 

【5Gへの実績1】ラグビーW杯5Gライブビューイング

9月20日、光回線と5Gを用いるという形で、ラグビーW杯の試合の様子を、超大型モニターを使ってライブ配信するパブリックビューイングにて実施。会場では、4K映像が流れる400インチのモニターを中心に、275インチのサブモニターが両脇に据えられていました。試合の様子をマルチアングルで楽しめる体験に新しさを感じたほか、スクラム中のチームの合計体重などをリアルタイムに表示するなど、付加的な情報を表示することによって、臨場感がさらに増していました。今後、こういったスポーツ観戦での5G活用に大きな展望を見せました。

 

【5Gへの実績2】ドコモショップでのMR体験

東京・五反田、東京・丸の内、名古屋、大阪にある一部のドコモショップにて、5G端末とMR用デバイスの「Magic Leap One」を展示するコーナーが設けられています。誰でも気軽に楽しめるので、5Gとはどんなものかを実際にプレサービスで体験したい人は、近場にある対象ドコモショップを訪れてみましょう。

 

↑NTTドコモが19年4月に業務・資本提携し、2.8億円を出資した米Magic LeapのMRデバイス。実世界の空間にゲームの映像を融合させる使い方や、アバターを用いた遠隔コミュニケーションなどの実現に期待したいです

 

その他、同社は5G商用サービスが本格的にスタートする2020年6月末までに、全国47都道府県に5Gエリア化したスポットを増やすことも発表。現在、具体的には、右表の場所が挙げられており、ドコモショップのほか、スタジアムや駅、空港といった施設に導入されていく予定です。5Gを体感できるスポットを以下にまとめます。

 

【5Gを体感できるエリア&スポット】

●スタジアム、球場

札幌ドーム、東京スタジアム、横浜国際総合競技場、小笠山総合運動公園エコパスタジアム、豊田スタジアム、東大阪市花園ラグビー場、阪神甲子園球場、神戸市御崎公園球技場、大分スポーツ公園総合競技場、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島、福岡 ヤフオク!ドーム

札幌駅、仙台駅、金沢駅、大阪駅、京都駅、高松駅

●空港

東京国際空港、成田国際空港、関西国際空港

 

 

【5Gへの実績3】プレサービスでは3機種のスマホを用意

ドコモはプレサービス用に3種類のデモ用スマホを用意。いずれも5G対応のチップセット「Snapdragon 855」とモデム「Snapdragon X50 5G modem」を搭載します。

 

01「ソニーモバイル製」

「Xperia 1」に代表される縦横比21:9という縦長ディスプレイが特徴的なソニーモバイルのプレサービス用端末。「ミリ波」および「Sub6」の周波数に対応します。

 

02「サムスン電子製」

サムスン電子製の5Gプレサービス用スマホは、「Galaxy S10 5G」がベースになっている。ベゼル部分を極限まで狭めた大画面が特徴です。「ミリ波」、「Sub6」の両周波数帯に対応します。

 

03「LG製」

LG製の5Gプレサービス用端末は日本未発売の「V50 ThinQ」がベース。専用のディスプレイ付きカバーを装着することで、2画面表示が可能です。「Sub6」のみに対応し、「ミリ波」は非対応。

 

【5Gへの実績4】プレサービス開始時の最大通信速度

ミリ波のエリアは下り3.2Gbpsを実現

一部エリアに限るという制約は付くものの、5Gプレサービスにおける最大通信速度は、ミリ波で3.2Gbps、Sub6で2.4Gbpsと高速。なお、これらはベストエフォート式の最大値で、実際の通信速度は条件によって変化します。

 

環境や端末、また通信面での整備が整っていることには、ライブビューイングやMR体験などの今までにないアイデアが生まれることはよくわかりました。ただもう一歩、「つまりユーザー個人にはどんなメリットがある?」という点に踏み込めていないことも気になったのも確か。2020年に向けてさらに加速度的に展開していくはずなので、これからも注視したいと思います。

 

【フォトギャラリー】※GetNavi web本サイトでのみ閲覧できます