デジタル
2020/1/31 7:00

【西田宗千佳連載】「わかりやすい付加価値」で伸びるゲーミングPC

Vol.87-2

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「ハイエンドPC」。ゲーミングPCが人気を集めることで、PC市場全体に生じつつある変化とは?

 

現在のPC市場のなかで成長しているカテゴリー、それがゲーミングPCだ。もちろん、数的にいえば、もっとも多いのは一般的な企業向けPCであり、それは今後も変わることはない。だが、企業向けPCのニーズや販売平均単価には大きな変化がない一方、ゲーミングPCは平均的な売価が最低でも15万円以上と、個人向けPCのなかでもグッと高い。個人向けPC市場の一部が単価の高いゲーミングPCに移っていく現象は、PCメーカーにとって大きな意味を持つ。いまは海外メーカーが中心だが、NECパーソナルコンピュータも昨年、独自のゲーミングPCを開発し、市場に投入することを宣言している。

 

ではなぜゲーミングPCの売れ行きが良いのか? 細かな理由はいくつも挙げられるが、もっとも大きいのは「PC向けのゲーム市場が肥沃になったこと」である。

 

10年前であれば、日本でゲームといえば家庭用ゲーム機のことを指していた。いまもその傾向は強い。しかし、PlayStation 3世代(2000年代後半以降)から、海外で開発されるゲームの多くは、PCでも供給されるのが当たり前になった。現在は大型タイトルのほとんどが、家庭用ゲーム機とPCの両方で供給される。また、規模の小さな独立系メーカーが作る、通称「インディゲーム」は、まずPCからスタートするのが常である。5年前まで、その現象は海外が中心であり、日本では一部の動きに留まっていたものの、今日では日本でもその傾向が強い。結果として、家庭用ゲーム機に比べてコストはかかるが、お金をかければかけるほど画質の良いゲームが楽しめる環境として定着した。ゲームを趣味とする人の数は多く、その人達がコスパ以上のものを求める場合、自宅のPCとしてゲーミングPCを求めるようになってきたわけだ。

 

 

NEC LAVIE VEGA LV750/RA

ゲーミングPCを買っているのは誰か? 実際のところ、やはり収入に余裕がある30代以上が選んでいる、というのが実情である、とPCメーカーは言う。一方、ゲームが好きな10代にとって、ゲーミングPCがある種の憧れである、ということも見えてきている。あるPCメーカーの担当者は、筆者にこう説明した。

 

「彼らにとって、スマホは日常。物心ついた時からいまの姿をしていて、当たり前のものでしかない。しかし、ゲーミングPCは違う。プレイ配信の向こうで使われている、ハイパワーでピカピカ光るPCは、自宅では見たこともなく、友人も持っていない。父親が使ってるPCと違う、ゲームがうまい人々が使っている特別なもの、という印象がある。だから欲しくなる」

 

eスポーツや実況配信を軸にゲーミングPCの人気が高まっているのは事実だ。それはある意味、プロスポーツ選手の履いているシューズに憧れる気持ちに近い部分があるのだろう。

 

では、他ジャンルのハイエンドPCはどうか? その辺は次回のウェブ版で解説する。

 

 

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