デジタル
2020/4/28 7:00

【西田宗千佳連載】新iPad Proに搭載された「LiDAR」とはなにか

Vol.90-1

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、新iPad Proに初めて搭載された「LiDAR」。このセンサーの役割と、アップルの狙いとは一体何か?

 

「LiDAR」によりAR機能が大きく進化

3月末に発売された「新iPad Pro」には、これまでのApple製品には搭載されていない新たなセンサーが追加された。それが「LiDAR」だ。LiDARは、簡単に言えば「光を使って物体までの距離を測る」機器である。例えば自動運転車では周囲の状況を素早く立体的に、遠くまで把握するために、レーザーを使ったセンサーであるこのLiDARが多数使われている。

 

ではなぜ、畑違いにも思えるiPad ProにLiDARが搭載されたのか?  それは、「AR」を進化させるためだ。皆さんも、現行のiPhoneやiPadがARに対応しているのはご存知だと思う。AR機能はAndroidのハイエンドモデルでも利用できるし、かつて「ポケモンGO」などのアプリでも一時話題になった。だが、そうした「スマホやタブレットで使えるAR」には限界もあった。机や床の上のようなフラットでシンプルな場所にCGを重ねる程度なら問題ないのだが、階段や家具の置かれた家など、比較的複雑な形状を正確に読み取り、リアルタイムで画像処理を行うというのは難しかったのだ。また、「CGの前に人が立つ」「柱などでCGが一部だけ隠れる」といった表現も難しい。

 

これらはすべて、空間を立体として正確に捉えるのが困難なことに起因している。これまでのスマホ向けARは、スマホに特別なセンサーを搭載しなくても使える「手軽さ」が重要だった。だが、より実用的なアプリを作るには、シンプルに「CGが現実に重なって見える」だけでは不十分。現実世界をより正確に、「立体として把握する」センサーが必要になるのだ。

Apple iPad Pro 9万3280円(11インチモデル)~

 

いまAR機能を強化するAppleの狙いとは?

そのためのセンサーであるLiDARが搭載された新iPad Proでは、階段や家具の配置、物の凹凸のほか、人のシルエットなど、目の前の空間を「立体構造」として瞬時に把握できるようになった。これにより、ARの動作はより早く、より正確なものになっている。比べてみれば違いは劇的だ。

 

とはいうものの、「ARが進化した」といってもピンとこない人も多いのではないだろうか。ARはまだ、一部のゲームや広告コンテンツなどに使われている程度で、生活に必須というわけではない。それだけのために高価なiPadを買い替える人はおそらく少ないだろう。

 

ではAppleはなぜこの機能をiPad Proに入れたのだろうか? それはおそらく「将来への布石」だ。今後、ARはより重要な存在になる。Appleが「AR専用機器」を開発しているのも公然の秘密である。そうした近い将来に重要になる技術を、いまのうちにアプリ開発者やユーザーが試せるようにしておきたいのだ。

 

だが一方で、専門家からは「iPad Proに搭載されたセンサーはLiDARと呼ぶべきではない」という声がある。また、事実、新iPad ProのLiDARに似たセンサーは、すでにほかのAndroidスマホでも搭載が広がっている。

 

ほかの機器が搭載するセンサーとは何か? そうした他社製品に対するAppleの優位性はどこにあるのか? これらの部分はウェブ版で解説する。

 

 

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