デジタル
2020/5/1 7:00

【西田宗千佳連載】スマホに搭載が進む「ToFセンサー」とはなにか

Vol.90-2

3月に発売された新しい「iPad Pro」には、「LiDAR」というセンサーが搭載された。名前だけを見ると特別なものが搭載されたように見えるが、実は、現在のスマホで広がるトレンドをカバーしたものでもある。

 

簡単にいえばLiDARは、周囲の物体との距離を測るためのセンサーだ。周囲の物体との距離を測る方法はいくつかあるが、もっともシンプルな方法は、光を飛ばして、それが反射して帰って来るまでの時間を計測するというもの。そんなわずかな差で本当にわかるのか……と思うかもしれない。だが、反射した光が戻る時間の差は厳然と存在しており、かなり正確に周囲の状況を把握することができる。光の反射を使って距離を把握する手法を「Time of Flight(ToF)」と呼び、それを検知するセンサーのことを通称「ToFセンサー」などと呼ぶ。LiDARは特別なものと思われがちだが、実際にはToFセンサーの一つであり、レーザーを使うものを広くそう呼ぶに過ぎない。すなわち、新型iPad Proは「ToFセンサーを搭載した」と言い換えることもできるわけだ。

 

Apple iPad Pro 9万3280円(11インチモデル)~

 

実はToFセンサーの搭載は、スマホにとってトレンドの一つである。

 

例えば、シャープの「AQUOS R5G」やサムスンの「Galaxy S20+」、ソニーモバイルの「Xperia 1 II」には、どれもToFセンサーが搭載されている。主たる目的は、カメラ機能の向上だ。ToFセンサーを使うと距離を正確に測りやすくなる。そうすると、写真の被写界深度表現(いわゆるボケ味)やピント合わせが楽になる。従来は画像認識やレンズの組み合わせだけで行っていたが、ToFセンサーによる奥行き情報を加えることで、カメラの撮影クオリティをあげよう、という狙いがあるわけだ。

 

そもそもToFセンサーは、カメラに使われているイメージセンサーの応用技術と言っていい。光を捉えて記録する、という意味では同じだからだ。ただし、どう捉えてどう使うかが異なるため、イメージセンサーをToFセンサーに流用するわけにはいかない。だからToFセンサー搭載のスマホは、カメラの「眼」が実質的一つ、さらに増えているのだ。

 

iPad Proに搭載されているLiDARと他社スマホに搭載されているToFセンサーは、若干機構が異なるものの、イメージセンサー技術をベースにしているという意味では、非常に似た特質を持っている。実のところ、同じ「LiDAR」という名前は使われていても、自動運転車などに搭載されているLiDARと、新型iPad Proが採用したLiDARとでは仕組みがかなり異なっている。新型iPad ProのLiDARは、自動車のLiDARより、むしろスマホに搭載されているToFセンサーに近い。そのため、センサー関連の専門家から、「iPad Proに搭載されたものをLiDARと呼ぶのは問題があるのではないか」という指摘があるのだ。

 

とはいうものの、他のスマホのToFセンサーと、iPad Proの「LiDAR」には大きな違いもある。それは、用途と仕組みの両方に存在するものだ。それはなにか? そのへんは次回のウェブ版で解説したい。

 

 

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