デジタル
2020/10/24 7:00

【西田宗千佳連載】驚きのアップデートで「AirPods Pro」がバケた!?

Vol.96-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「AirPods Proのアップデート」。毎年恒例のOSアップデートに隠れて起きていた要注目の動きとは?

 

これまでになく立体的な音響を楽しめるように進化

9月17日、アップルはiOSとiPadOSをアップデートした。それは例年のことで、そこまで驚くような話ではない。だが、同時に行われた「AirPods Pro」のアップデートが凄かった。これまでのヘッドホンの常識を覆すような、画期的なものだったからだ。

 

アップルが行ったのは、AirPods Proに「空間オーディオ機能」を搭載することだ。空間オーディオとは音を立体的に聴かせる方法のこと。現実世界では色々な場所から音が鳴る。それと同じように、仮想的に空間内に「音源」を配置し、そこから鳴る音が自分にどう届くかを再現することで、より自然で立体的な環境を作る。

 

これは別にアップルの発明でも独自規格でもない。世の中には複数の空間オーディオ技術があるが、なかでも最も有名で普及しているのがドルビーの「アトモス」だろう。映画館やUHDブルーレイディスクでは、もはや当たり前のように採用されており、映画や音楽のリアリティを増すために使われている。

 

アップルがやったのは、アトモスなどの「空間オーディオ」フォーマットを使用している配信サービスの効果を、AirPods Proで劇的に高める、というものだ。

 

実際、本当に「劇的」だ。決して大袈裟な話ではない。

 

Apple AirPods Pro/実売価格3万580円

 

最新ハイエンドスマホの多くはアトモスに対応しており、ヘッドホンなどではその価値を実感できる。だが、iPhone・iPadとAirPods Proのセットで得られる効果は、それらをはるかに凌ぐ。自分の周囲に厚い音の世界が広がるのだ。左右の広がりだけでなく、特に前後へと自然に音が広がっていく。アクションシーンだけでなく、音楽を軸に映画全体がより楽しくなるのが特徴だ。

 

なぜこのように劇的な効果が生まれるのか?

 

理由は、AirPods Proに密かに仕込まれていた機能が「オン」になったからだ。あれほどな小さなボディだが、AirPods Proには「自分がどちらを向いているのか」を認識するセンサーが組み込まれている。また、iPhoneやiPadにも、方向を検知するモーションセンサーがある。双方を組み合わせることで、「iPhoneなどの画面から見て、自分がどちらを向いていて、どう首を動かしたのか」という情報が得られる。それを使ってシミュレーションすることで、単なるヘッドホンとは違うレベルの体験を生み出しているのだ。

 

また同時に、複数のアップル製品で同一のAirPodsを使う際、Bluetooth接続する機器の切り替えを自動化する措置も行われている。空間オーディオで音の体験を、接続機器の自動切り替えで操作性の体験を大きく変えているわけだ。

 

こうしたことは、従来「新製品になるとき」 に可能になるもので、無料のソフトウエアアップデートで実現されるレベルのものではなかった。だがアップルは、自社のスマホ・タブレットのOSとヘッドホンのソフトウエアを「合わせ技」で使うことで、その常識を覆した格好だ。

 

では、なぜアップルはこのような策を採ったのか? 他社はどう対抗するのか? そして、今後のヘッドホンとソフトの関係はどうなるのか? そこはウェブ版で解説していこう。

 

 

 

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