デジタル
2020/11/24 19:00

Google検索の「鼻歌検索」を試してみた! 楽曲検索以外の将来性は?

グーグルのウェブ検索エンジンは誰もが認める便利なツールです。現在はスマホのカメラを被写体にかざすと、野に咲く花の名前を調べたり、旅先で外国語のメニューを素速く日本語に翻訳してくれる「Googleレンズ」のような、グーグル独自の機械学習アルゴリズムを活用した検索サービスが展開されています。

 

今年の10月からAndroid OSを搭載するデバイスで「鼻歌」による楽曲検索も使えるようになったことはご存じでしょうか。今回は、新機能の鼻歌検索の楽しみ方を紹介したいと思います。

↑Android OSを搭載するスマホで使える新機能「鼻歌検索」の楽しみ方を紹介します

 

うろ覚えのメロディをグーグル検索で調べよう

グーグルの鼻歌検索は、スマホのマイクに向かって約10〜15秒間続けて鼻歌を口ずさんだり(ハミング)、口笛でメロディを吹くと近い楽曲をYouTube MusicやSpotifyなど音楽配信サービスやYouTube動画から見つけてくれるという機能。検索結果からそのまま音楽サービスのアプリに飛んで、見つかった楽曲をすぐに聴くこともできます。検索処理はクラウドで行われるため、スマホなどデバイスをネットワークに接続する必要があります。

 

ハミングされた音をマイクが聞き取ると、グーグルが開発した機械学習のアルゴリズムによって楽曲のメロディ部分だけが抽出されます。メロディは固有の数列に変換された後に、何十万件にも及ぶ大量の楽曲情報を蓄積したデータベースと付き合わせを行い、数列が一致する可能性の高い楽曲をスマホの画面にリスト化して表示します。

 

機械学習アルゴリズムは、ライセンスされた楽曲やスタジオ録音のソース、歌声にハミング、口笛など様々な音源を使いながら鍛え上げられています。その開発過程では世界中のグーグルのスタッフが鼻歌を口ずさんだりしながらアルゴリズムの強化に総がかりで取り組んでいるそうです。

↑数列化された鼻歌のメロディをデータベースと照合。近い数列データを持つ楽曲を探し出します

 

メロディ一致の判定はそこまで厳密ではないようです。例えば鼻歌や口笛の音程がある程度ずれていたり、リズムやテンポがあいまいでも何かしらの曲を見つけてきます。もちろん、あまりに原曲とズレている場合は期待外れの検索結果が表示されてしまうので、うろ覚えの歌の記憶がより鮮明で、鼻歌で楽曲のメロディをより正確に再現できた方が正答率は上がります。

 

「赤いスイートピー」を歌ってみたら、デーモン閣下のカバーがヒット!

筆者が本レポートを執筆している2020年11月中旬現在、グーグルの鼻歌検索が日本ではまだAndroid OSにしか対応していないため、今回は「Google Pixel 5」でテストしてみました。

↑Google Pixel 5で鼻歌検索をテストしました

 

鼻歌検索にはGoogle検索を起動してマイクアイコンをタップ、音声入力モードに切り換えてから「曲を検索」を選ぶか、またはGoogleアプリを開いてからマイクアイコンをタップする手順でもたどり着けます。

↑Google検索から「曲を検索」に入る方法が最もシンプルです

 

Googleアシスタントに直接話しかけて「OK Google、この曲は何?」と聞いてから鼻歌を始めてもOKです。

↑Googleアシスタントに音声で「この曲は何?」と訊ねると画面のように少しコンパクトな表示で検索画面が表れます

 

松田聖子の名曲「赤いスイートピー」のサビを鼻歌で歌ってみました。屋外や少しざわざわしているカフェの店内でも、スマホのマイクに口元を近づけて小声でささやく程度で十分に歌声を認識してくれました。

 

ただ、筆者の場合なぜか宮本浩次がカバーした「赤いスイートピー」の方が本家よりもマッチング率が上位に表示されます。Aメロから歌ってみたら、今度は本家の「赤いスイートピー」がトップマッチのタイトルとして出てきました。そしてSpotifyのリンクをたどって再生してみると、なぜかカラオケバージョンの「赤いスイートピー」の方が再生されました。

↑赤いスイートピーはなぜか宮本浩次のカバーが検索結果のトップに

 

続いてテンポを速くして鼻歌を口ずさんでみると、デーモン閣下がカバーした「赤いスイートピー」が最上位に登場。鼻歌検索のアルゴリズムは基本的に“メロディ重視”とはいえ、カバー曲がある場合はリズムやビートとの兼ね合いも出てくるのかもしれません。

↑少しテンポを上げて鼻歌を入力するとデーモン閣下のカバーがトップに表示されました

 

うろ覚えの曲を鼻歌で歌うと、特にピッチ(音の高さ)を原曲に合わせられていない場合があろうかと思います。ピッチは検索結果にほぼ影響を与えないようです。途中で意図的に転調しても探したい曲がヒットしました。

 

歌ものなら洋楽もヒット。クラシックの名曲やラップには苦戦

洋楽は正しく検索できるでしょうか。フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」は無事にヒット。映画「アラジン」の主題歌「A Whole New World」は新しい2019年版が上に出てきて、ピーボが2番手という結果に若干不満が残りますが、劇団四季も出てきたので許そうと思います。

↑アラジンの主題歌は複数の候補が出てきます。新しいものや人気の楽曲からトップに並ぶようです

 

メロディがはっきりとしている楽曲でもクラシックやジャズの名曲のような“歌詞のない曲”は、鼻歌検索されることを想定していないためか、見つかる率が極端に下がります。「今夜はブギー・バック」のラップも鼻歌での再現性が難しく、楽曲をヒットさせることができませんでした。ほかにもよく耳にするCM曲や「水戸黄門のテーマ」のようにそのテレビドラマのためだけに作られた純正の主題歌も、データベースに一致するものがないせいか見つかりませんでした。

 

グーグルの鼻歌検索は日本を含む20以上の言語エリアで提供されていますが、それぞれの地域ごとに鼻歌検索用のデータベースや楽曲コレクションが作られているため、各国で人気のアーティストのヒット曲を見つけるためにはAndroid OSの言語設定を変える必要があります。そして各国の鼻歌検索データベースも今後地域ごとに人気の楽曲、定番のメロディを取り込んで成長を続けていきます。

 

鼻歌検索は将来どんな役に立つのだろうか

ゲーム感覚で楽しめる鼻歌検索を、街中や公園など屋外でまわりにいる人に目立たないように、こっそりと楽しめたら使う機会が増えそうです。Google Pixel Budsをはじめ、いくつかのBluetoothワイヤレスイヤホンを交代で耳に装着しながら試してみたところ、Googleアシスタントに話しかけてWeb検索等はできるのに、鼻歌検索は「一致するものが見つからない」と表示されて楽曲情報がヒットしませんでした。今後ぜひ対応してほしいと思います。

↑Google Pixel Budsなどワイヤレスイヤホンのマイク入力で試してみましたが、こちらはスマホのマイクに直接話しかけた場合と比べて認識率が下がりました

 

グーグルではこの鼻歌検索機能を有益なインターフェースとして、またはより大きなビジネスに昇華させることも考えているのでしょうか。現在のところ同社は「ハミングだけで曲を探したいというユーザーの検索ニーズに応えること」以外に特別な指針を示していません。

 

代わりに筆者が勝手に鼻歌検索の使い道を期待するとしたら、家電リモコンの音声操作を意味のある言葉ではなく、鼻歌でより感覚的に、あるいは楽しく操作ができたら音声インターフェースに対する価値観に小さな変化が生まれるんじゃないかと思いました。

 

いまはコロナ禍中なので、なかなか友だちと集まりにくい環境ですが、忘年会を兼ねたホームパーティーで鼻歌検索をゲーム感覚で遊んでみても盛り上がりそうです。まずは鼻歌検索の精度が今後どこまでレベルアップして、見つけられる楽曲の幅が広がるのか注目しましょう。

 

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