筆者はノートPCを3台使っています。メインで使っているMacBook Proと、ゲーミングスペックのWindowsデスクトップ、タブレットとしても使えるSurfaceという構成です。3台もあればさすがに不便をすることはないのですが「1台にまとめたいな」と思わされることも少なくありません。
そんな筆者がこのたびレビューしたのが、13.3インチ4K有機ELディスプレイ搭載の2in1デバイス、「ASUS ZenBook Flip S UX371EA」。コンパクトなボディに高い基礎性能を備えた、ハイエンドな一台です。
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4K有機ELを搭載した、“持ち運べるホームシアター”
本機の第一印象は、その美しさ。厚さ13.9mm、薄いベゼル、アルミニウムを磨き上げたデザインのボディには「スマート」という言葉が最高に似合います。厚みが均一なので、バッグに入れたときなどにかさばらない点も嬉しいですね。
画面を開けば、今度は4K有機ELディスプレイの美しさを体感できます。有機ELディスプレイは、表示できる色域が液晶に比べて広く、より鮮やかな映像を表示するので、同サイズのノートパソコンとしては、最上級の映像をユーザーに届けます。その鮮やかさがどれくらいのものかというと、デフォルトのデスクトップ画面でも、液晶画面との差が十分に分かるほどです。本機の色域は、映画館の映像品質と同等とされるDCI-P3の色域にまで対応。つまり、映像の品質がホームシアターレベルなんです。
さらに、高音質で知られるオーディオメーカーのハーマンカードンと協力して製造したスピーカーを内蔵し、音のクオリティも他のノートPC内蔵のスピーカーを寄せ付けません。筆者の体感では、音の響きが強く感じられ、低音はしっかり、高音もクリアに聞こえました。
そして、本機の大きな特徴として、画面が360度回転することが挙げられます。下の写真のように画面を自立させれば、パソコンとしてではなく小型シアターとして使えるわけです。これは、まさに「持ち運べるホームシアター」ですね。
ビジネスユースも十分なパフォーマンス
ここまでホームシアターとしての要素ばかりを強調してきましたが、本機はビジネス用途でもノンストレスで使えます。使用感としては、先日レビューを掲載した、ASUS ZenBook 13 UX325EAにかなり近いものがあります。
というのも、画面・本体のサイズについてこの両機種はほぼ一緒であり、CPUにインテルのCoreシリーズ11世代となるi7-1165G7、メモリを最大16GB搭載するという基礎スペックも同一です。UX325EAの記事にも書いたように、ビジネス向けのノートPCとしてはハイエンドにあたるスペックで、エクセルで複雑な関数を入力してもフリーズを起こすことがないなど、オフィスユースではノンストレスと言ってよいでしょう。起動・顔認証が25秒程度で終わる快適さも好印象です。
搭載している入出力端子も、Thunderbolt 4に対応したUSB Type-Cを2つとHDMI、USB 3.2(Type-A/Gen1)を搭載していて、UX325EAとほぼ同一。違いは、UX325EAには搭載されているmicroSDのカードリーダーが本機には付いていないという点ですが、これが障壁となるユーザーはそれほど多くはないでしょう。また、本機のバッテリーの持ちは13.4時間で、UX325EAより1時間短いですが、許容範囲と言える差に収まっています。
一方、本機は、UX325EAにはない特徴も持ち合わせています。まずはディスプレイがタッチパネルになっていて、ペンの使用にも対応している点。手書きのメモとしても使えますし、ペイントソフトを使えば、絵を描くことも可能です。
加えて、UX325EAでは最大512GBとなっていたSSDの容量が、本機では最大1TBまで拡大しています。これなら、大容量の動画データを保存しても、そう簡単に満タンになってしまうことはありません。
グラフィック性能はUX325EAと同じくオンボードでGPUを搭載しないため、ゲーム用途には残念ながら適しません。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」をテストしてみましたが、グラフィックを軽量品質にしても動作は重かったです。
ディスプレイが綺麗なだけに、美麗なグラフィックを楽しめるゲームをしてみたくなりますが、その点は仕方ありません。
キーボードの配列とグレア液晶による目の疲れやすさには注意
最後に、本機を購入する際の注意事項をお伝えします。まずは、キーボードの配列です。
UX325EAと同じなのですが、本機のキーボード配列はやや特殊で、バックスペースやエンターキーが右から2番目の列に配置されています。この配列に慣れていないと、小指でバックスペースを押そうとしてホームキーを、エンターキーを押そうとしてページアップキーを誤射してしまうことがあります。筆者は慣れればなんとかなりましたが、最初のうちはやや使いにくいように思います。気になる場合は、店頭などで試し打ちしてみるべきでしょう。
なお、打鍵感は押しごたえがしっかりしていながらもぬるっと沈む感覚があり、叩きやすい部類だと思います。
2点目の注意として、本機のディスプレイが光沢のあるグレア仕様だということが挙げられます。これは、本機の大きなウリである映像がより美しく見えるという点ではメリットをもたらしますが、写り込みが多く、目の疲労を招きがちです。また、指紋が目立ちやすい欠点もあります。
本機には、ブルーライト軽減モードが搭載されているので、目の疲れへの配慮はされていますが、グレアディスプレイに慣れていない場合は、自分の目で見て確認しておきましょう。
家での時間もビジネスも、これ1台でワンランクアップ
本機は、家での時間・ビジネスの両面を、1台でワンランクアップさせてくれます。
ホームシアターになるノートPCという点に斬新さがありますし、ポータブル性も高く、ビジネス用途でも不満はゼロ。ゲームや動画編集など、グラフィック性能を求められる作業さえしなければ、どんなニーズにも応えてくれます。個人的には、ストレージ容量が最大1TBあるというのがポイント。これだけの容量があれば、PCを1台にまとめても困ることがなさそうで、安心感があります。
価格は税別21万8000円と決して安くはありませんが、十分にその価値を感じさせてくれる一台です。
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