アップルのハイエンドヘッドホン「AirPods Max」を冬休みの間に使い込んでみたところ、6万円のヘッドホンが持つ価値が色々と発見できました。AirPods Maxの実力をフルに活かしながら楽しむ方法をレポートしてみたいと思います。
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強力なアクティブノイズキャンセリング機能
AirPods Maxはアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載するヘッドホンです。ANCヘッドホンといえばボーズやソニーの製品も人気です。飛行機に乗って旅をしていると両社のヘッドホンを機内で身に着けてエンターテインメントを楽しむ乗客の姿をよく見かけます。コロナ禍が治まってきて、また空の旅を楽しめるようになる頃にはAirPods Maxを携える旅行者の姿も見られるようになるのでしょうか。
AirPods MaxもANC機能を試すと、その効果がとても高いヘッドホンだと感じました。密閉型ハウジングと、クッション性の高いイヤーパッドで耳のまわりをしっかりと覆うアラウンドイヤースタイルのヘッドホンなので、AirPods Proよりもさらにノイズが遮断されて音漏れも抑えられます。
消音効果は車のロードノイズ、人の話し声、甲高い地下鉄のブレーキ音など幅広い帯域にバランス良く及びます。機能をオンにした時に耳にかかる圧が少なく、音楽のバランスも崩れません。屋内外を問わず音楽や動画のサウンドを静かな環境で楽しめるワイヤレスヘッドホンです。
最近の4KスマートテレビはBluetoothオーディオの送信機能を搭載する製品が多くあります。AirPods Maxを直接ペアリングすれば夜間のテレビ鑑賞も迫力たっぷりのサウンドが楽しめます。もしテレビにBluetoothオーディオ送信機能がなければ、外付けタイプのトランスミッターを付け足す方法もあります。録画したスポーツ番組の音声もAirPods Maxで聴くとリアルな没入感が味わえます。
空間オーディオが楽しめるヘッドホンは世界中でAirPods Maxだけ
iOS 14.3/iPadOS 14.3以降をインストールしたiPhone/iPadにAirPods Maxをペアリングして、Apple TVアプリで配信されているDolby Atmos、または7.1ch/5.1chの音声を収録するコンテンツを再生するとアップル独自の「空間オーディオ」再生が楽しめます。
空間オーディオ再生は映画やドラマ、アニメコンテンツの立体サラウンド再生が楽しめるようになる機能です。ワイヤレスイヤホンのAirPods Proが先に対応した際に本誌でレビューしています。機器の設定などはAirPods Maxの場合も同じなので、レビューを読んでみてください。
空間オーディオにはサラウンド再生のほかにもうひとつ「ダイナミック・ヘッドトラッキング」という機能があります。例えばセリフが正面から聞こえている時に顔を左に向けると、右の耳から強く声が飛び込んでくるような体験が味わえます。サラウンド音声の空間内に飛び込んでしまったようなリアルな没入感を、iPhone/iPadとのシンプルな組み合わせで楽しめるヘッドホンは今の世にはAirPods Maxしかありません。
冬休みの間、筆者はこの空間オーディオの楽しさにどっぷりと浸ってしまい、iTunes Storeで対応するコンテンツを買い漁って見ていました。「ゼロ・グラビティ」「インターステラー」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」などざっくりまとめると“宇宙もの”の作品や、「ボヘミアン・ラプソディ」「アリー スター誕生」のような“音楽ライブもの”は特に空間オーディオとの相性が抜群に良かったです。AirPods Proを持っている方も、空間オーディオの没入感が一段と高いAirPods Maxのサウンドを試してみる価値があると思います。
今回はiPhone 12 Pro Max、iPad Pro 12.9インチとの組み合わせで視聴しましたが、やはりもっと大きな画面でもダイナミック・ヘッドトラッキングを満喫したくなってきます。早くApple TV 4KとAirPods Maxの組み合わせでも空間オーディオが楽しめるようになってほしいです。
足回りの良いラグジュアリーカーでドライブを楽しむようなサウンド
AirPods Maxによる音楽再生はニュートラルなバランスと解像度の高さを特徴としています。長時間聴いていても疲れない上品できめ細かなサウンドなので、お気に入りの音楽を聴き込むほど耳に馴染んでいくような体験が得られます。さすが6万円のハイエンドヘッドホンであることを納得させる完成度でした。
ボーカルの自然な声質、アコースティックなピアノやギターなど楽器の音色を素直に再現するヘッドホンです。低音はタイトでディープ。膨らみすぎず、音像は立体感に富んでいて輪郭は滑らか。自動車の乗り心地に例えるなら、足回りの良いラグジュアリーカーのようです。十分な馬力を持ち合わせた力強さを感じさせますが、ロックやダンスミュージックのアップテンポな楽曲を聴いてみても荒っぽさが顔をのぞかせることがありません。
楽曲によっては、アプリのイコライザー機能などを使ってより好みのサウンドに仕上げるのもアリでしょう。例えばiOS純正の「ミュージック」アプリであれば、設定から「イコライザ」を開くと23種類のプリセットから好みのサウンドが選べます。
リモートワークにも便利。クリアに外の音が聞ける「外部音取り込み」
ヘッドホンに内蔵されているマイクでリスニング環境周辺の音を拾い、音楽や通話音声にミックスして聞ける「外部音取り込み」も便利に使いこなしたい機能です。AirPods Maxの場合は右イヤーカップの上部に搭載するノイズコントロールボタン、またはペアリングしたiPhoneのコントロールセンターなどからANCと外部音取り込みをスイッチします。
AirPods Maxの外部音取り込み機能はヘッドホンを装着したままでも周囲の人と会話ができるぐらい、外の音がクリアに聞けます。音楽再生を始めるとまるで耳の側にスピーカーを近づけて聴いているみたいに開放的なリスニング感が得られます。
屋外では機能をオンにして使うと音楽リスニングが安全に楽しめます。駅のアナウンスや、ちょっとした買い物の際に会話の声が確認できます。比較的静かな環境でヘッドホンを使う場合も外部音取り込み機能を常時オンにしたままでもよいかもしれません。例えば自宅でビデオ会議に参加中に家族に話しかけられたり、一人でいる時に音楽を聴いていても玄関チャイムに反応できるので安心です。
ゲーム音声の遅延問題が解決! iPhoneに有線接続もできる
Bluetooth接続のヘッドホン・イヤホンはスマホで動画やゲームを再生すると、Bluetoothの技術的な制約を受けて音声が少し遅れて聴こえる場合が多くあります。
AirPods Maxはアップル純正の別売アクセセリーである「Lightning-3.5mmオーディオケーブル」を使えば、3.5mmイヤホンジャックを搭載するスマホやポータブルゲーム機と直接有線接続ができるので音声の遅延が発生しません。3.5mmイヤホンジャックを持つ機内エンターテインメントシステムにも接続できるようになります。飛行機の旅には欠かせないアイテムです。
さらにアップル純正の「Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」を追加で装着すると、3.5mmイヤホンジャックを持たないiPhoneにも有線接続ができます。スマホやプレーヤー機器と有線接続ができないAirPodsシリーズに比べて、AirPods Maxが有利に感じられるポイントです。
豊富な「AirPods Max専用アクセサリー」の拡大にも期待
AirPods Maxはハウジングのアルミニウム、ヘッドバンドのステンレススチールなどメタル素材を贅沢に使ったヘッドホンです。質感が高いぶん本体の質量は384.8gと、ANC機能を搭載するワイヤレスヘッドホンの中ではやや重い方ですが、耳のまわりに優しくフィットするクッション性の高いイヤーパッドと、頭頂部を支えるニットメッシュ形状のヘッドバンドにより軽快な装着感が楽しめます。空間オーディオ対応の映画を2時間前後、iPadで視聴しても疲れることがありません。
ヘッドホンをファッションアイテムとして選ぶ音楽ファンも多いのではないでしょうか。AirPods Maxのクラシックでレトロなルックスは誰が見ても「アップルのヘッドホン」であることをまわりに主張できるインパクトがあって魅力的だといえます。
AirPods Maxを発売以来使い込んでみて、筆者がひとつ気になっているのが専用アイテムとして付属する「Smart Case」です。Smart Caseはヘッドホンのハウジングとイヤーパッドの部分を保護するケースですが、ヘッドバンドがむき出しの状態のままバッグに入れて持ち運ぶことになります。強度と耐久性の高い金属とシリコン素材で作られているヘッドバンドなので、バッグの中に入れていれば壊れる心配はないと思いますが、筆者は普段バックパックにPCや充電器などを入れて多少荒っぽく持ち歩いてしまうため、ヘッドホンやイヤホンは全体を保護できるケースに入れて持ちきたい性分なのです。
サードパーティーのアクセサリーメーカーからは「AirPods Max対応」をうたうハードケースが発表されています。充電用ケーブルが入るポケット付きのケースもあるようなので便利に使えそうです。
アップル製品に対応するアクセサリーはサードパーティーのメーカーからも数多く販売されています。他社のスマホやワイヤレスイヤホンに比べると、やはりiPhoneやAirPodsシリーズに対応するアクセサリーは種類・品数ともに圧倒的に多く見つけることができます。「アップルのヘッドホン」であることの強みは、きっとこれから充実するAirPods Max専用アクセサリーを使って装着感やデザインをカスタマイズできる所にも発揮されるでしょう。
AirPods Proの発売後に追加された「空間オーディオ」のように、ソフトウェアアップデートによる新機能の追加も期待できそうです。最新のApple製チップ内蔵による、様々な機能性が今後進化するであろうことも、AirPods Maxの6万円という価格に「長く楽しみ尽くせそうなヘッドホン」だという印象を与える大きなポイントと言えます。本記事を読んで少しでも引っかかるところがあった方は、思い切ってAirPods Maxを手に入れて頂けたら幸いです。
【AirPods Maxのディテールを写真で見る】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。