デジタル
2021/1/6 7:00

【西田宗千佳連載】Apple M1は「ノート型特化」だからこそ快適なMacを生み出せた

Vol.98-2

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Appleシリコン」。ついに登場した話題のアップル製CPU搭載モデルが一躍好評を博している理由とは。

 

Apple M1を搭載したMacは高性能だ。特に、インテルCPU版のMacBook AirやMacBook Proと比較した場合のパフォーマンス向上ははっきりしている。動画圧縮の速度が上がったり、ゲームプレイ時のフレームレートがアップしたりと、性能向上を体感できる部分は多い。

 

だが、「どんなPCよりも速い」と考えるのは間違いだ。現状のM1が高く評価されているのは、あくまで「一般的なノートPC用プロセッサーとして」である。例えば、同じMacでもiMac ProやMac Proほどの性能はないし、Windowsでいえば、ゲーミングPCほどのグラフィック性能もない。外部インターフェイスの数と速度も弱い。なので、「これさえあればハイパフォーマンスなPCやMacは必要ない」と考えるのは間違っている。

 

M1の重要な特性は、「ノートPCとしての快適さに特化している」という点だ。バッテリーは長持ちし、ハイパフォーマンスが必要なシーンでもなかなか発熱せず、ファンも回らない。一般的なPCでは、CPU&GPUがフルに性能を発揮するにはAC電源に接続し、十分な電力が供給されていることが条件となるが、M1 Macの場合、バッテリーでもAC電源でも性能がほとんど変わらない。

 

これはいうならば、いままでのノートPCより、iPadの特性に近い。本当に一日中どこでもフルパワーで動き、発熱も騒音もない。「どういう使い方に向くのか」という点を大きく変えたのがM1 Macの特徴なのだ。

 

逆に言えば、現状のM1は「ノートPC以外」をあまり想定していない。Mac miniにも使われているが、これは例外的な存在だ。常に十分な電力が供給されており、より高い性能が必要とされる用途に向けては別のプロセッサーが必要になる……ということでもある。

 

従来、PC用のプロセッサーは「汎用」だった。CPUがあってGPUがあり、メモリを別途搭載することで構成されていた。汎用性があるゆえ、自作PCのようなものも存在するのだ。だが、交換できるということは、用途に特化した設計は難しくなる、ということでもある。ゲーム機のように特化した設計の機器は、パーツの交換はできないがそのぶんコストパフォーマンスの良い設計にできる。アップルがM1でやったのは、「ノートPC専用設計のプロセッサーを作って、いま求められるノートPCとして快適な製品を作ること」にほかならない。パフォーマンスが高いのはその結果だ。逆に言えば、ゲーミングPCやデスクトップ型には、そのままでは適応しづらい。

 

アップルがそうした「ハイパフォーマンス向け」でどういう回答を出すのかはまだわからない。しかし少なくとも、M1と同じように「専用設計」になるのは間違いない。メモリやGPUの違いで機器のバリエーションを増やすということはなく、「同じようなプロセッサーを何種類か性能で使い分ける」といった展開をしてくると予想される。

 

では、なぜアップルだけがM1で「高性能なノートPC特化のプロセッサー」を作れたのだろうか? インテルやクアルコムだって、同じようなものは作っているはずだ。そのあたりの理由は、次回のウェブ版で解説することとしよう。

 

 

 

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