デジタル
2021/2/12 7:00

【西田宗千佳連載】春に起きる「携帯料金見直し」の機運、重要なのは価格より「サービスの差別化点」

Vol.99-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、
「携帯料金値下げ」。携帯電話料金事情に楽天モバイル登場以来となる大きな変化が起きようとしている。

 

前回、解説したように、この3月にNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが相次いでスタートする「20GBプラン」は、各家庭での携帯電話料金見直しの機運を高めるだろう。

 

ではどうなるのか?

 

実のところ、20GBプランに万人が移行するとは思えない。オンライン専売であることと、家族割引などに制限があることが理由だ。後者はともかく、前者は「わからないことは店頭で聞きたい」層には大きな障害となるだろう。ただし、すべての人がそうではない。携帯電話販売店でのサポートを必要としていない、むしろ自分でできたほうがいい、という人だって多いはずだ。おそらく、本誌の読者にはそういう人が多いのではないだろうか。

 

そうすると、オンライン専売の20GBプランに移る人は年齢を問わず一定数は存在しそうだ。

 

とはいうものの、本格的な5G時代には、20GBは少ない。2021年中はまだ4G中心だろうが、2022年が近づくころには、目に見えて状況が変わってきている可能性が高い。特に都市部・ターミナル駅周辺などはそうだろう。そのころになると「オンライン専売プランの拡大」を求める声が多くなっていそうだ。

 

一方で、意外な台風の目となるかも知れないのが、20GBより少ない「本当に安いプラン」だ。記事を執筆している1月末現在、NTTドコモの低料金プランの動向は不明だが、先に料金を打ち出しているKDDI・ソフトバンクの価格帯を見ると、もはやMVNOとの差は小さい。本当に「通話だけでいい」人は、大手の低価格プランへ切り替える可能性もある。

 

しかも、同じ携帯電話事業者内での契約種別切り替えはコストも手続きも簡素化される可能性が高い。同時にMNPによって、事業者をまたいで契約を移動するのも楽になる。

 

こうしたことから、「契約の見直し」がこの春以降加速するのは間違いない。

 

ただ、それが「事業者の乗り換え」になるかは、なんとも言えない。手続きもコストも下がるのだが、結果的に「同じ事業者に安価なプランもできる」ことになるため、事業者を変えなくてもいい……と考える人は出そうだし、各事業者もそういうプロモーションを打つだろう。MVNOを使っていた人が大手に戻ってくる現象も考えられる。

 

料金プランの変化によって「契約の見直し」が起きるので、一見、市場が活性化したように見えるが、実のところそこまで「競争」は起きない……というのが筆者の見立てだ。

 

とはいえ、各社のサービスプランはしっかりと差別化されている。特に「20GBプラン」は、各社の強みを打ち出した、料金でない部分の違いがある。NTTドコモは海外でも使いやすく、ソフトバンクはLINEとの連携が強い。そしてKDDIは、必要なときだけ「データ定額」や「通話定額」を追加できるフレキシブルさがある。

 

そうした「料金以外の違い」をいかに認識し、自分にあったプランを見つけるかが、これから重要なポイントとなる。サービス内容の精査が必要になるので少し大変だが、賢く契約したいなら、それくらいの価値はある。

 

今回、政府側から「値下げ」にフォーカスした圧力がかかったわけだが、結果的に生まれたものの価値は「価格以外」にあった。ここに少し皮肉な本質があるように感じるのは、筆者だけだろうか。

 

 

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