デジタル
2021/2/27 7:00

【西田宗千佳連載】本当に「プロ」仕様だったXperia PRO

Vol.100-1

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Xperia PRO」。高価格にばかり目が行きがちな本機だが、そのコンセプトにこそ斬新さがあった。

 

名ばかりの「プロ」と一線を画す本気仕様

ソニーは2月10日、新スマートフォン「Xperia PRO」を発売した。価格は税込で約25万円。高いと感じるかもしれないが、本機は単純に高価で高性能だから「PRO」と名付けられたワケではない。

 

Xperia PROのハードウエアには、2つの特徴がある。一つ目は「HDMI入力端子がある」こと、二つ目は「ミリ波の5Gに対応している」ことだ。

 

Xperia PROは底面に、一般に使われる充電用のUSB Type-C端子のほかにmicro HDMI端子を備えている。これは一般的なHDMI出力端子、すなわちスマホの映像を外部に出力するためのものではない。HDMI出力対応の機器をつないで、Xperia PROの画面を「モニター代わり」にするための入力端子であることがポイントだ。接続するのは主にカメラ、それもミラーレス一眼のような、本格的なカメラが想定されている。

 

動画の場合、スマホ側にHDMI入力があれば、高画質なカメラを使って撮影した映像を即座に端末のディスプレイに表示するのと同時に、YouTubeなどに代表される動画配信サイトや、バックエンドにある編集スタジオに送ることができる。つまり、カメラ+スマホのセットで、直接映像配信ができてしまうということだ。また静止画の場合でも、同時にUSBケーブルでも接続することで、カメラから撮影データを直接受け取り、それをネット経由でアップロードすることができる。

 

こうした使い方に特化していることこそが、Xperia PROの「PRO」たる所以なのだ。現場からの中継機能など、多くの人にとっては不要な機能だろう。だが、プロカメラマンや放送の現場などでは、こうした機能の存在によって、機材や手間の削減が容易になる。そうしたターゲットにとって。本機は25万円という価格に見合う価値が十分にある、といえる。

 

一般的に、今日のスマホ市場では、「プロ」と名の付く端末は数多く存在している。だが、それらは別に「プロフェッショナルだけに向けた製品」というわけではない。あくまでハイエンド製品であることを示すためのネーミングで、「プロにも使える」という話でしかなかった。

 

だが、Xperia PROは過去にないくらい「プロ向け」のアイテムとして設計されている。本体がマット仕上げで滑らないようになっているのも、そのほうが撮影の現場ではプラスに働くから。ディスプレイの大きさなどよりも、そうした気配りのほうが重要になるのが「プロ向け」、ということなのだ。

ソニー Xperia PRO/実売価格24万9800円

 

5Gミリ波への対応はスタジアム中継のため

また、もう一つの要素「ミリ波対応」もプロ市場を考慮して採用されている。具体的には、スタジアムなどからの中継を考えてのものだ。現在、街なかにミリ波の設備はまだ少ないが、スタジアムなどでは先行して敷設が進んでいる。そうした場所から中継することを想定した作りになっているのだ。

 

では、なぜミリ波対応施設の敷設がスタジアムからスタートしているのか? 本機がほかのスマホに与える影響はどんなものか? そして、プロ向けスマホに市場性はあるのか? そのあたりをウェブ版で解説しよう。

 

 

週刊GetNavi、バックナンバーはこちら