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2016/8/8 20:55

【西田宗千佳連載】10年で立ち上がった「ゲーミングPC」の市場がゲーム機を変えた

「週刊GetNavi」Vol.45-3

20160614-a08(3)

10年前、世界ではまだゲーム機としてはPlayStation 2が現役だった頃、ゲームの世界は、「家庭用ゲーム機向け」と「PC向け」に別れていた。開発環境が異なり、性能が異なり、プレイヤーも異なっていたからだ。

 

しかし10年が経過し、PlayStation 4の時代になってみると、風景は一変している。家庭用ゲーム機とPC向けでは同じものが多くプレイされるようになり、開発環境が同じになり、プレイヤー層も近いものになった。

 

この辺は、日本からでは見えづらい風景かもしれない。日本ではいまだ、家庭用ゲーム機でヒットするゲームとPC向けゲームには差がある。というより、PCではネットゲームくらいしかヒットしない。しかし欧米では、ヒットゲームのほとんどは、家庭用ゲーム機とPCの両方で発売されるものになった。

 

背景にあるのは、欧米のゲームプレイヤーが「大人の趣味人である」ということだ。年齢層が高く、リアルなゲームに没入することを好むため、ゲームにはよりお金をかけるようになった。高性能でクオリティの高いグラフィックスを求める場合、数万円までに制限される家庭用ゲーム機より、コストは数十万円になるが、圧倒的にクオリティは上がるPCの方がいい。ゲームに特化した「ゲーミングPC」とその周辺機器の市場は、特にアメリカではきわめて大きなものに成長している。純粋な数ではゲーム機の方が有利だが、彼らはなにより「お金を使う層」なのだ。だからゲーム会社は、ゲーム機とPCの両方に同じゲームを提供するようになった。どうせゲーム機のゲームも、開発はPCで行なっているのだ。コストがかかるのはCGや音楽の作成と、ネット対戦用のサーバー運営である。それらはPC向けでもゲーム機向けでも同じものを使うので、両方に向けて開発すればコスト効率が良い。

 

結果的に、家庭用ゲーム機からは特に濃いプレイヤーがPCへ移行する動きがある。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のようにゲーム機プラットフォームを運営する企業としては、濃いゲーマー=乗客を逃さないための仕組みが必要になる。

 

そこで出てきたのが「ハイエンド版PS4」だ。通常版PS4との性能差はさほど大きくなく、30万円の最高級ゲーミングPCほど性能が良いわけではない。しかし、低コストなゲーミングPCに匹敵する可能性はある。多くの人には「そこまでして高いモデルは欲しくない」レベルだが、こだわる人には「この価格差ならこちらを選ぶ」レベルのものになる。SIEはコメントしていないが、ハイエンド版発売に近い時期に通常版の価格を下げれば、「通常版で数を狙い、ハイエンド版で利益を狙う」やり方ができる。

 

では、SIEのライバル企業、マイクロソフトや任天堂はどうするのだろうか? その辺は次回Vol.45-4で解説しよう。

 

●Vol.45-4は8月15日(月)更新予定です。

 

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