モバイル通信の大展示会「MWC(Mobile World Congress)」が2年ぶりに開催されました。スマホや5Gの将来の姿が垣間見えるこの展示会の内容を、ダイジェストでお届けします。
MWCは例年2月にスペイン・バルセロナで開催されていた、モバイル通信分野で世界最大の展示会です。世界各国の携帯電話キャリアやスマートフォンメーカー、通信機器ベンダーなどが一同に集まり、新製品の発表や新しい事業を展開するための商談の場になっています。この時期になるとバルセロナには、毎年世界から10万人が集まります。
また、開催に合わせてソニーのXperiaやサムスン電子のGalaxyなど、注目スマホの新モデルが発表されるのが通例でした。
しかし昨年度のMWC2020は新型コロナウイルス感染症の流行によりやむなく中止。そして今年は開催スケジュールを7月に延期したうえで、オンライン・オフラインの両方で参加できるハイブリッド方式での開催となりました。
もちろん現地会場での出展はあったものの、一方で現地展示を見合わせる出展者も相次ぎました。例年大きなブースを構えているソニーやNTTドコモ、クアルコム、ノキアといった企業は軒並み、専用Webページから見られるバーチャル出展という形式や、オンライン講演のみで参加する形を選択。通例のようなスマホの発表もありません。
このような状況の中で、リアル会場での参加者は2万人ほどと低調にとどまったものの、バーチャル参加したユーザーは4日間で延べ12万人にのぼり、例年以上の参加者を記録。いろいろと例年にはない、異例のイベントになりました。そんなMWC2021の中で、注目を集めた発表をまとめて紹介します。
【注目その1】サブディスプレイにもなるAndroidタブレットをレノボが発表
新製品の発表数が大きく減少したMWC 2021において、気炎を上げたのがレノボです。高性能なAndroidタブレットやスマートクロックなどの新製品を発表しました。
特に注目の製品はAndroidタブレット「Yoga Tab 13」です。HDRやステレオ再生に対応する高性能なタブレットであるうえに、microHDMI入力対応という珍しい機能を備えています。これにより、単体でAndroidタブレットとして映画やゲームを楽しめるのはもちろん、PCと接続してサブディスプレイとして活用できます。
最近では持ち運びできるサブディスプレイの新製品が多く登場するようになってきましたが、Yoga Tab 13はそこにAndroidタブレットの機能性を追加した製品と言えます。ディスプレイ単体でもAndroidタブレットとして動画視聴やWebサイトの閲覧ができ、PCと接続すれば画面を拡張できるという、ミニマリスト向けの製品と言えるかもしれません。
もっとも、ライバル製品にあたるiPadとMacBookの組み合わせではワイヤレスでディスプレイの拡張ができ、接続のしやすさではAppleに軍配が上がります。Yoga Tab 13の場合は、Nintendo Switchのようなゲーム機にも接続できる、接続デバイスの多さが優位性になりそうです。
スマートクロックの第2世代モデル「Lenovo Smart Clock 2」も発表されました。Google アシスタント対応の画面付き目覚まし時計で、外付けのアダプターを装着すれば、スマホをワイヤレス充電したり、常夜灯にしたりもできるという製品です。
このジャンルの製品は、GoogleやAmazonからも出ているほか、レノボも第一世代のモデルを出しているので、注目すべき製品といえるでしょう。
なお、Yoga Tab 13シリーズやLenovo Smart Clock 2の日本での展開予定は公表されていませんが、前世代のモデルが市販されている実績もあり、日本での発売も期待できそうです。
【注目その2】スマホやPS5に接続して140インチの大画面が楽しめるサングラス型デバイス
中国TCLは、サングラス型ディスプレイデバイス「NXTWEAR G」を発表して注目を集めました。
NXTWEAR Gは、PCなどに接続するディスプレイデバイス。サングラスの内側にソニー製の有機ELディスプレイが仕込まれており、かけるだけで目の前に「140インチのディスプレイが広がるような表示」が可能としています。
重量が約130gと軽いため長時間着用しやすいほか、鼻の部分には空間があるので視界をすべて奪われないのもポイントです。
VRやARを表示する機能はありませんが、標準的なディスプレイ接続規格に対応しているため、つなぐデバイスを選びません。スマホやPCのほか、PlayStation 5やXboxのようなゲーム機にも接続できます。TCLは、ポピュラーなスマホやPC、ゲーム機など100種類以上で動作を確認済みとしています。
サングラス型のディスプレイでは「NrealLight」という競合製品が存在しますが、接続できるスマホの機種がかなり限られているという弱点があります。対するNXTWEAR Gは使える機器の幅広さが最大のアピールポイントとなりそうです。
販売については、まずオーストラリアで展開予定。その後の展開は明確にされておらず、順次展開する地域を広げていく予定となっています。
なお、英国のテクノロジーメディアTechRadarは、同製品についてオーストラリアの次は日本や韓国での発売を計画していると伝えています。日本や韓国は新しいテクノロジーに関心の高い人が多くいる国で、ライバルのNrealLightの展開エリアとなっているため、早めに投入される国として選ばれていても不自然ではありません。
【注目その3】GalaxyのスマートウォッチはGoogleのサービスとの親和性が高くなる
Galaxyシリーズを展開する韓国サムスン電子は、MWC2021でバーチャル講演を開催。その中で、スマートウォッチ「Galaxy Watch」シリーズの新たな展開を予告しました。
5月、Googleは開発者向けのイベントでスマートウォッチ向けOSの「Wear OS by Google」と「Tizen」を統合すると発表しました。このTizenはGalaxy Watchシリーズが搭載しているスマートウォッチ向けのOSです。新しいスマートウォッチ向けOSは今夏から提供される予定で、現行のGalaxy Watchシリーズも新たなOSへと更新されます。
サムスン電子は、Galaxy WatchがGoogleとの「統合プラットフォーム」に置き換わることで、Googleのサービスとの親和性が高くなると紹介。例えばGoogle PlayストアからGalaxy Watchにアプリをダウンロードできたり、Google マップやGmailなどのGoogle製アプリが搭載されたりといったメリットがあるとしています。
さらに、サムスン電子とGoogleの共同開発により、新OS自体の動作速度も高速化し、バッテリーの性能向上も期待できるとしています。加えて、新たなスマートウォッチ向けOSの開発にはGoogleが買収したFitbitも参加しており、Fitbitのヘルスケア機能も盛り込まれる予定です。
また、Galaxy Watch独自の要素として、Galaxyスマホと連携する機能が盛り込まれると発表されました。Galaxyスマホに新しいアプリをインストールしたとき、Galaxy Watchにも自動でインストールされたり、スマホで登録した世界時計や着信拒否リストなどがGalaxy Watch側にも自動で反映されたりするとしています。
プレゼンテーションの最後には、Galaxy Watchの新製品発表イベント「Unpacked」を開催すると予告。イベントは今夏の後半に開催予定です。
【注目その4】Snapdragon 888 Plusが発表、ゲーム機のようなグラフィックや4K HDR映像を楽しめるスマホ登場か
スマホ向けのチップセットを設計するクアルコムは最上位クラスのチップセット「Snapdragon 888 Plus」を発表しました。
現在、夏モデルの最上位機種で多く採用されているSnapdragon 888の性能向上版で、AI処理の性能が20%向上するとしています。これにより、例えば最新ゲーム機のような豪華なグラフィックの3Dゲームを動かしたり、4K HDRの映像を再生したり、カメラアプリで広角から望遠まで素早く切り替えたりといった、負荷の高い処理をサクサクこなすスマホの登場が期待できます。
Snapdragon 888 PlusはASUS、モトローラ、シャオミ、Honor、Vivoのスマートフォンで採用が決まっています。搭載製品は2021年秋ごろから順次発売される見込みです。
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